何かが汚いしぶきを上げて暗い胸の底でうねり、這いまわっている。
じりじりと背骨の裏側で何かがくすぶり、嫌な臭いのする煙を上げている。
勝手に想像し、勝手に怒りを募らせる私は、はたから見れば滑稽で愚かだが、そうと承知していても想像はやめられない。
何も知らないくせに。
私たちの歳月の重さなど、私たちの繋がりなど、私たちの葛藤と閉塞感など、何もしらないくせに。
愛がなければ嫉妬もない。
そう言ってしまえばそれまでだか、今もなんという鋭さで不意を突いてくるのだろうか、この感情は。
時を選ばぬあまりの切っ先の鋭さに、その痛みのむごたらしさに、全身が押し潰されそうになってしまう。
恩田陸 「木漏れ日に泳ぐ魚」より

