高校生の時、リバイバル上映された「喜劇王」・チャップリンの「街の灯」を見て、すっかりチャップリンに魅せられてしまった僕は、続いて上映された「独裁者」も劇場で見た。そして、今度は友人をさそって、もう一度「独裁者」を見に行った。すると、友人が大変感動してくれて、彼は映画の帰りがけに、レコード店に寄って、チャップリンの何本かの名作映画から抜粋された「サウンド・トラック盤」のアルバムを買って帰った。「独裁者」は、チャップリンにとっては、初の「トーキー映画」だ。シェイクスピアを生んだイギリスで、五歳の時から病気の母親の代わりに舞台に立ち、その後も演劇を勉強した人だけあって、映画でのせりふ回しも、明朗闊達であった。またヒトラーを風刺したパントマイムは、「名人芸」というしかない。この映画で一番大笑いしたのは、ユダヤ人理髪師だったチャップリン(ヒンケルと一人二役)がラジオから流れてきた、ブラームスのハンガリー舞曲第五番をバックに、お客のひげをそるシーンだ。とにかく「独裁者」はチャップリンの芸の奥深さが、随所に見られる作品である。