1989年、ベルリンの壁が崩壊する以前の、所謂「東欧圏」のオーケストラとしては、レニングラード・フィル(現サンクトペテルブルグ・フィル)とシュターツカペレ・ドレスデンの来日公演を会場で聞いた。残念ながら、チェコ・フィルは、録音でしか、聞いたことがなかった(嬉しいことに、今年3月のチェコ・フィルのコンサートのチケットが手に入った)。この三つのオーケストラを聞いて僕は、ある一つの事に注目した。この三つのオーケストラには、ソロを吹くとき、ビブラートをかけるホルン奏者がいるという事だ。所謂「西側」のオーケストラでは、たった一つの例外(昔、N響のホルン奏者の千葉馨は、ビブラートをかけていた)を除いてホルン奏者がビブラートをかけているのを、僕の記憶では、聞いた事がない。ホルンのビブラートが東西の文化の違いを象徴的に表わしているなどと言ったら、これは、あまりにうがった見方に成ってしまうが、少なくとも、「西側」では、ホルンは、ビブラートをかけて吹くべきではない、という暗黙の了解があったのではないかと思う。余談になるが、昔、バーツラフ・ノイマン指揮のチェコ・フィルのドボルザークの九番「新世界」の録音を聞いた時には、クラリネットもビブラートをかけて演奏していた。