おひとり様物語 その2 | My favorite is …

My favorite is …

好きな音楽や本、映画に出逢った時、そこに関わるエピソードが必ずあります。

人間は時間的存在である。

それゆえに、過去の断片化した記憶を綴り、書き記していこうと思います。






不意に身のすくむような心細さが
私をとらえて離さない










「誰よりすてきなあなた」

これから出掛けるのに服が決まらない
ゆうべ考え抜いたコーディネートに迷いが出た

優しく可愛らしい女だと思ってほしい
今夜は特別な用事があるんだ

ゆうべ彼が緊張した声で
「会って話したいことがあるんだけど…」
と言った時、一番似合う服を着ていこうと心に決めた

付き合ってもう2年…
いつ頃からかな、こんな日が来ると思ってた

ちょっとおめかし…し過ぎたかな
でも、やっぱり彼に褒めてほしいし…初めて会った時のように。


初めて会った時もほめてくれた
スポーツが得意で、友達がたくさんいて、
そんな人が私を選んでくれたなんて、うれしくて。

背筋をしゃんとのばして、にっこり笑って
優しく可愛らしい女だったと思ってほしい

だって、今日で終わってしまうのなら


「今までありがとう。」

何だよ、それ。
誰かをちゃんと好きになったことってあるの?

にこにこしてて優しくて、いつもきれいで、今日だって…
でもどれも俺が好きっていうより、そういう自分が好きっていうか。

なんで、なじらないの?泣いたり怒ったりしないの?
俺、ずっと淋しかったんだよ。


だって…だって、あなたに嫌われたくなかったから。

でも、結局それって、すてきなあなたに選ばれた私を
必死で守りたかっただけなのかもしれない。










「海の中」

お気に入りの喫茶店は庭に面した奥の席が好き。
古いけど清潔で、珈琲がおいしくて、とてもいいお店。

今は紫陽花がとてもきれい。子供の頃からぼんやり過ごすのが好きだった。
ひとりで淋しいとか、あんまり思った事がない。

ひとりで自由に過ごしているとほっとする
それがあるから、また人の輪の中に入っていける、そんな感じ。

雨の日にひとりでいると、海の中にいるような気分になる。
静かな水面に落ちる雨は、魚からどんな風に見えているのだろう。

紫陽花に雨粒が光ってて、まるで珊瑚みたいだ。

傘を叩く雨の音、かすかに触れた腕のぬくもり
人波に消えていった後ろ姿

あなたに出会って、初めて淋しくて泣きました










「御守りみたいな本」

小春日和の日曜日。何かを決心するように手にした1冊の本。
それは時を超える別れと再生の物語。

すべきことで満ちた大人の毎日は忙しい
かさかさに乾きそうな心の支えを誰もがきっと幾つも持っていて

私の場合はきっと、この本だった。
また会った時にお互い返そうねって言ったまま6年が過ぎた。

今、どうしてるかな。
同じように時々思い出してくれてるかな。

そう思うと胸がじんわりあたたかくなって
また頑張ろうっていつも思えた。

不思議ね、恋人じゃない、手をつないだこともなかったのに。
そんな御守りみたいな男の子。


6年前のあの日。私はわざと厚い本を持っていった。
すぐに卒業して会えなくなるから
それまでに読み終えられないような長い物語の本を

返してくれなくていい
私のかけらを彼に持っていてほしかった

それだけで良かったの。
きれいな思い出を好きな時に取り出して
ときめくことができるから。

でも、今日でそれも終わり。

自分の手でこの御守りみたいな本を返して
一生後悔するかもしれないけれど

あなたがどんな人なのか、もっと深く深く知りたい
思い出にやさしく包まれるより、現実のあなたに傷つけられたいんだ









P.S.  他の誰かを見つめる愛しい貴方へ

ずっと一緒にいような…そう言ったあの日の約束も
ぬくもりもこの手を離れて消えてしまった

どこまでも甘ったれのバカな人、私はあなたが大好きだったんだ
だから頑張って。もう背中は押してあげられないけど

結婚おめでとう、私の大切な人。

ブルー・サムシングより