初めて【オレンジ・マーチ】という言葉を聞いた時は、「なんじゃそりゃ?」「オレンジ購買促進キャンペーンみたいなやつ?」なんておバカなことを考えました。おいおい


が、しかし、実態はシビアなものでした。


通称【オレンジ・マーチ】は、毎年7月12日に北アイルランドの町々で開催されるパレードでして、 Orange Order(オレンジ結社)の所属メンバーによって行われます。

     ※ウィキペデア(英語版)ではOrange Walkとなっています。


オレンジ・マーチ
                   ※パレード風景です。


そもそもここでの【オレンジ】とは、オレンジ公ウィリアム(オランダ語でオランニェ公。スチュアート朝のウィリアム3世)に由来します。

そしてこのパレードは、プロテスタントのオレンジ公が、自身の叔父で妻の父であるカトリックのジェームズ2世を、ボイン川の戦い(1690年)で破り、ジェームズ2世を再び国外へ追い出しことを記念した「戦勝記念」に当たります。


そう、プロテスタント系住民にとっては「戦勝記念」ですが、カトリック系住民にとっては「敗戦記念」ですので愉快にはなれませんし、毎年侮辱されてるような感じがして心穏やかではありません。

そのため、7月12日は北アイルランドの町々は緊張が高まりますし、部外者が興味本位で生パレードを見るには危険です。

ええ、もちろん私もテレビでしか見たことありません!

流血騒ぎになることは稀ですが、たまーに小競り合いになることがありますので、“観光”はお勧めできません。

けれど、この期間させ外せば北アイルランドも穏やかなものです。



2003年6月初旬、語学学校の友達に誘われてベルファストに行ったんです。

シティホール内の見学ツアーに参加予定だったんですが、時間があったので、タクシーの運転手さんに交渉して市内観光をすることに。

大学や時計塔を見て、住宅地の方へ移動しました。

そして・・・↓


オレンジ・マーチ

オレンジ・マーチ

普通のお宅の側面に描かれた政治的な絵、絵、絵・・・

はい、全然平和的なものじゃないです。汗

プロテスタント系住民たちの住宅地には「UKに帰属する」ことを、カトリック系住民は「アイルランド統一」を掲げるメッセージ+絵が描かれています。

正直ドン引きしましたし、ショックでした。ガーン

あまりのショックで、写真撮る気も失せてしまって・・・(ブログ内の画像はネットからの転載です)

旅行に誘ってくれた友人が一緒に写真とってあげるよって言ってくれたんですが、写りたくなくて結局断ってしまいました。


そして更にショックを受けたのはこちら


オレンジ・マーチ
私たちが通った道はこのような壁が道路の両側にありました。

ものすごく高くて、さらに鉄条網がまかれてて・・・がーん

カトリック系の住宅地とプロテスタント系の住宅地ときっちり二分されていました。

「決して交わることはないんだなショボーン」と何ともいえない虚しさを感じました。


タクシーツアーのラストに見たのが、こちら
オレンジ・マーチ

ハンガーストライキで亡くなったIRA暫定派の記念碑。(写真のような立派なものではありませんでしたが・・・)

カトリック(もしくはナショナリスト)とプロテスタント(もしくはロイヤリストやユニオリスト)の埋まりそうにない“溝”を感じた市内観光になってしまいました。…

しかもこのタクシーツアーに時間を費やしてしまい、シティホールの見学ツアーを見逃したので、タイタニックが製造された場所を見て、ラストは電車の時間までパブで過ごしてダブリンへ戻りました。



なお、現在北アイルランドは、IRAなどによるテロの危険はほとんどありません。

実はIRA以外にもユニオニスト(プロテスタント系)の過激派がいますが、一昔、二昔ほどドンパチはありませんので、観光するのにはほぼ問題はありません。

そして、カトリック系住民とプロテスタント系住民が始終いがみ合ってるわけではありません。ほんの一部の偏狭的な人だけが対立しているだけで、宗教の垣根を越えて仲良く暮らしている人たちもいます。

誤解なさらないでくださいね。汗


色んな宗教、信条があって、それが共存するのが当たり前な日本からやってきた私には、かなり刺激的で「こんな社会があるんだぁ顔」と何となく切なさを感じた旅でした。

                                                       (Mrs.G)




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