ほどよい敬語~その敬語、盛りすぎです! -16ページ目

ほどよい敬語~その敬語、盛りすぎです!

プロのライターでも経営者でも間違えることがある敬語。相手を思いやるコミュニケーションツールとして「ほどよい敬語」を使いこなして「デキル人」になっちゃおう。

「拝見させていただきます」は二重敬語 !?

インターネット上で

「『拝見させていただく』『拝見させていただきます』は二重敬語である」という記事をよく見かけます。

二重敬語はあまり積極的に使わないほうがよいとされている言葉ですが、果たして「『拝見させていただく』『拝見させていただきます』は二重敬語なのでしょうか?

 

結論から言うと↓

 

「拝見させていただく」「拝見させていただきます」は二重敬語ではありません。

順に解説しますね。

二重敬語の定義を確かめよう

まず、二重敬語とは何か。定義を理解しましょう。

「敬語の指針」(30ページ)にはこうあります。

 

一つの語について、同じ種類の敬語を二重に使ったものを「二重敬語」という。例えば、「お読みになられる」は、「読む」を「お読みになる」と尊敬語にした上で、更に尊敬語の「れる」を加えたもので、二重敬語である。(出典:「敬語の指針」)


“一つの語について”と“同じ種類の敬語”という点がポイントですね。
それにあたるかどうかを確かめるために、まずは品詞に分解します。

 

品詞に分解してみよう

「拝見させていただきます」は次のように分解できます
 

「拝見させていただきます」の品詞分解

  • 拝見さ =拝見する(サ変動詞、意味「見る」の謙譲語I)
  • せ   =せる(使役・助動詞)
  • て   =接続助詞
  • いただき=いただく(カ五段動詞、意味「もらう」の謙譲語I)
  • ます  =丁寧・助動詞 
 

こうしてみると

・「拝見さ」の部分は「見る」を謙譲語Iにしたもの

・「いただく」の部分は「もらう」を謙譲語Iにしたものです。

 

「それぞれの語」を謙譲語Iにしているため、前段で挙げた

“一つの語について、同じ種類の敬語を二重に使ったもの”

という定義には当てはまりません。

 

つまり「拝見させていただきます」は二重敬語ではない」ことが分かります。

語尾が異なりますが、「拝見させていただく」も同様に二重敬語ではありません。

 

2つの語を「て」でつないだ「敬語連結」

勘のいい人は、品詞分解してさらに何か気づいたのではないでしょうか。

 

接続助詞「て」の存在です。

 

ここで、「二重敬語」と間違われやすい「敬語連結」の定義を紹介します。

二つ(以上)の語をそれぞれ敬語にして、接続助詞「て」でつなげたものは、上で言う「二重敬語」ではない。ここでは「敬語連結」と呼ぶことにする。(出典:「敬語の指針」)

 

「拝見させていただきます」も接続助詞「て」で異なる2語をつないでいます。
つまり、

「拝見させていただきます」は、二重敬語にあたらず、「敬語連結」にあたります。

 

「敬語の指針」を見る限り、敬語連結は次のように扱われています。

敬語連結は多少の冗長感が生じる場合もあるが、個々の敬語の使い方が適切であり、かつ敬語同士の結び付きに意味的な不合理がない限りは、基本的に許容されるものである

 
以上のように、「敬語の指針」に照らせば、「拝見させていただきます」「拝見させていただく」は敬語連結であり、二重敬語ではありません。文法的な問題はないと言えます。
 
多少のまだるっこしい印象があることは確かです。
しかし「二重敬語であるため、使ってはいけない」「失礼だから使ってはいけない」と断定するのは行き過ぎでしょう。
 
もし、検討すべき点があるとすれば、「させていただく」の部分がその場面にふさわしいかどうかでしょう。
これについては、場面ごとに検討する必要があります。誰がどんな場面で使うか。場面によっては盛りすぎ敬語になっていることも十分ありえるでしょう。
それについては、「させていただきます」の項をご覧ください。
「させていただく」「させていただきます」のほどよい使い方
 
「ほどよい敬語」のポイント

「拝見させていただきます」「拝見させていただく」は二重敬語ではない

 

「拝見させていただきます」「拝見させていただく」は、二重敬語ではなく、敬語連結。まだるっこしさはありながらも、許容されている用法。失礼にあたるとまでは言えない。