ほどよい敬語~その敬語、盛りすぎです! -13ページ目

ほどよい敬語~その敬語、盛りすぎです!

プロのライターでも経営者でも間違えることがある敬語。相手を思いやるコミュニケーションツールとして「ほどよい敬語」を使いこなして「デキル人」になっちゃおう。

「 させていただきます」のちょうどいい使い方とは?

過剰敬語として取り上げられやすい「させていただきます」は、ビジネスシーンでもしばしば盛りすぎ敬語になっている場面を見かけます。いっぽうで、過剰ではなく適切に使われているケースもあります。

無条件に多用すると盛りすぎになりがちな「させていただきます」。
意味や使い方をマスターして、ほどよい使い方をできるといですね。

今回は、「させていただきます」をどんな場面で使えるか、判断の基準となるポイントについてです。

 

「させていただきます」の意味は?

「させていただく」は「させてもらう」の謙譲語に「ます」を加えた言葉です。

「させていただく」を引くと、辞書にはこうあります。

 

させていただく【させて頂く】

[連語]「(A)に……させてもらう」の謙譲語。

自分の行為について(A)に……させてもらうのだという捉え方をし、さらに「いただく」と謙譲語を用いてAを高める言い方。
Aの許可を得て行う場面や、Aの意向によって行うと見なせる関係の場合に使う。
(『明鏡国語辞典 第三版』大修館書店)


ある行為を行うときに、誰かの許可を得て行う場合に「させていただく」を使います。また、誰かの許可や意向によって行うと見立てて使う場合もあります。
 

「させていただく」「させていただきます」の使い方は?

辞書には「させていただく」「させていただきます」の使い方も書かれています。
 

使い方
(1)五段動詞を受けて使うときは、「意見を書かせていただく」のように「……せていただく」(五段動詞の未然形+助動詞「せる」の形になる。「せる」の意味をより明確に強く示そうとして、五段動詞の未然形に「させる」をつけた「読まさせていただきます」「あとでFAXを送らさせていただきます」などは、誤り。

(2) 人に配慮しながら自分の一方的な行為や意向を伝えるのにも使う。
「僭越ながら私がお供をさせていただきます」「しばらく考えさせていただきたい」。
 

(3)大勢の聴衆や目上の人の前で自分の意見を述べたり、会を取り仕切ったりするような場面でも使う。

「では、発表をさせていただきます」「閉会とさせていただきます」

(『明鏡国語辞典 第三版』大修館書店)


●「さ入れ言葉」に気をつける

(1)は、よく言われる「さ入れ言葉」ですね。

五段動詞とは、活用の語尾が「ア・イ・ウ・エ・オ」の五段にわたって活用する動詞です。
(例)行く→行か(ない)・行き(ます)・行く(とき)・行け(ば)・行こ(う)

(1)によれば、「行かさせていただきます」ではなく「行かせていただきます」ですね。
 

●人に配慮しながら自分の一方的な行為や意向を伝えるとき
 

(2)の「人に配慮しながら自分の一方的な行為や意向を伝えるのにも使う」ときの用例。
例えば
 
また例えば飲食店が休業するときに「元旦から1月3日まで休ませていただきます」についても、本来特に許可は要らないわけですが、常連客などに配慮を示したいといいう考えから使うのは、適切な使い方の範囲だといえます。
もちろん、無理に「させていただきます」を使う必要もありません。ケースバーケースで決めるとよいでしょう。
 
◯4月1日から4月3日まで休ませていただきます
◯4月1日から4月3日まで休業いたします
 
結婚式の招待状に回答する場合はどうでしょう。
招待されているということは許可は要らないわけですが、新郎新婦への配慮を示す意味で
出席 させていただきます(「ご」を消して、「させていただきます」を書き加える)
出席 いたします(「いたします」でもOK)
横に「おめでとうございます」とお祝いの言葉も加えます。
 

●大勢の聴衆や目上の人の前で自分の意見を述べたり、会を取り仕切ったりするような場面

◯それでは、資料を読み上げさせていただきます
◯以上で終了とさせていただきます
◯ 司会を務めさせていただきます上田と申します
◯ 乾杯の音頭を取らせていただきます(×取らさせていただきます)」
などがこれにあたります。
 
ただし、すっきり伝えたい場合には
◯それでは、資料を読み上げてまいります
◯以上で終了といたします
◯ 司会を務めます上田と申します
◯私上田が司会を務めます
でも、失礼には当たらないでしょう。
 

「させていただく」の注意点は?

使い方がわかったところで、注意点もチェックしておきましょう。
「させていただく」がたびたび過剰敬語として取り上げられるのは、以下の用例が多いようです。
 

注意
(1)許可を得なければいけない相手がいない、またそのような相手が漠然としていて特定されない場合に使うのは、慇懃無礼な表現となって不適切。
「× 今日は感動させていただきました(○感動いたしました)」

「× (自己紹介で)俳優をさせていただいています(◯俳優をしております)」

(2) 「……ていただく」は<相手のことは考えず、自分の都合でそうする>という含みを持つため、お願いの意を示す場合には「……ください」を使うほうが適切。
[上司に向かって]「×帰らせていただきます/◯帰らせてください」

(『明鏡国語辞典 第三版』大修館書店)

 

●許可を得る相手がいない、特定できない場合

例えば次のような場合は不適切です。
× ご近所なので〇〇店ではよく買い物させていただきます

× 私もその学校を卒業させていただきました

●「……ください」「……いただけますか」を使うべき場合

次のような場面では、「……いただきます」と言い切りで使うのは不適切です。


・「お願いする」という意味で使う場合

× (この先通行止めなので)迂回していただきます

◯(この先通行止めなので)迂回してください

 

・許可を得る必要がある場合
許可を得るべき場面も同様です。

× (上司に)明日は休ませていただきます
◯ (上司に)明日は休ませていただけますか

◯ (上司に)明日は休ませていただいてよろしいですか

 

『敬語の指針」での「させていただきます」について
 

『敬語の指針』(文化庁)にも「させていただきます」について触れている箇所があります。
参考までに引用します。

 

【解説1】
「(お・ご)......(さ)せていただく」といった敬語の形式は、基本的には、自分 側が行うことを,ア)相手側又は第三者の許可を受けて行い、イ)そのことで恩恵を 受けるという事実や気持ちのある場合に使われる。したがって,ア) イ)の条件を どの程度満たすかによって、「発表させていただく」など「...(さ)せていただく」を 用いた表現には、適切な場合と、余り適切だとは言えない場合とがある。

 

 【解説2】次の1~5の例では、適切だと感じられる程度(許容度)が異なる。 

1 相手が所有している本をコピーするため、許可を求めるときの表現 「コピーを取らせていただけますか。」 

2 研究発表会などにおける冒頭の表現 「それでは,発表させていただきます。」

3 店の休業を張り紙などで告知するときの表現 「本日,休業させていただきます。」 

4 結婚式における祝辞の表現 「私は、新郎と3年間同じクラスで勉強させていただいた者です。」 

5 自己紹介の表現 「私は,○○高校を卒業させていただきました。」 

 

上記の例1の場合は,ア) イ)の条件を満たしていると考えられるため,基本的な用法に合致していると判断できる。

2の例も同様だが、ア)の条件がない場合には, やや冗長な言い方になるため,「発表いたします。」の方が簡潔に感じられるようである。

3の例は,条件を満たしていると判断すれば適切だが、2と同様に、ア)の条件 がない場合には「休業いたします。」の方が良いと言えるだろう。

4の例は、ア)と イ)の両方の条件を満たしていないと感じる場合には,不適切だと判断される。

5の 例も、同様である。ただし、4については,結婚式が新郎や新婦を最大限に立てるべ き場面であることを考え合わせれば許容されるという考え方もあり得る。

5について は、「私は、卒業するのが困難だったところ、先生方の格別な御配慮によって何とか卒業させていただきました。ありがとうございました。」などという文脈であれば、 必ずしも不適切だとは言えなくなる。 

 

なお,ア)、イ)の条件を実際には満たしていなくても、満たしているかのように 見立てて使う用法があり、それが「...(さ)せていただく」の使用域を広げている。上 記の2~5についても、このような用法の具体例としてとらえることもできる。その 見立てをどの程度自然なものとして受け入れるかということが、その個人にとっての 「...(さ)せていただく」に対する「許容度」を決めているのだと考えられる。
(『敬語の指針』 40ページより)

 

以上のことから、「させていただく」「させていただきます」は、いつも盛りすぎであるとは限りません。
・許可を得ると見立てることができる場面で使うことは許容の範囲
・許可を得る相手がいない場面や許可を得る相手が特定できない場面で使うのは、盛りすぎであり不適切です。

どの程度、その見立てを自然なものとするかにもよりそうですね。
許容度は個人にとってそれぞれ異なりますが、ひとつの参考になれば幸いです。
場面に合わせて判断し、必要があれば疑問文にするなど適切に使うとよいでしょう。

 

「ほどよい敬語」のポイント

「させていただく(させていただきます)」は

・許可を得ると見立てることができる場面で使うとよい
・許可を得る相手がいない場面や許可を得る相手が特定できない場面で使うのは、盛りすぎになることもある

場面に合わせて判断し、必要があれば疑問文にするなど適切に使いましょう。実際に許可が必要な場面では

「……させていただきます」ではなく「させていただけますか」と疑問形にするほうが良い

 

 

『その敬語、盛りすぎです!』の68ページには
「頑張らせていただきます」の例を挙げて

「頑張る」と「させていただきます」はなじまない

ことについて書いています。
よろしければぜひお読みください。