店頭でよく聞く「お求めやすい価格」って正しい日本語? | ほどよい敬語~その敬語、盛りすぎです!

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プロのライターでも経営者でも間違えることがある敬語。相手を思いやるコミュニケーションツールとして「ほどよい敬語」を使いこなして「デキル人」になっちゃおう。

お求めやすい価格になっております

「本日はお求めやすい価格になっております」はよく聞く表現です。

あまりにも聴き慣れているので、間違っているとは思わない人も多いでしょう。
しかし、敬語の基本に照らせば、誤用です。

なぜ間違った表現なのか。どの部分をどう言いかえれば正しいのか? 詳しく解説します。
 

よく聞くけど実はNG?「お求めやすい価格」の違和感

その前に「お求めやすい価格になっております」はどんな場面で使われているでしょうか?
ちょっと思い出してみてください。

「ただいまタイムセールで、揚げ物コーナーがお求めやすい価格になっております」
「7月末日までお中元特別セールを開催中です。お求めやすい価格になっております」
「そちらの品は、お求めやすい価格になっております」
などなど……


スーパーの店内放送や、アパレルショップの店員さんと話している場面が頭に浮かぶのではありませんか?「お求めやすい価格になっております」のうち、「なっております」の部分は正しい敬語ですが、「お求めやすい価格」はNG。

「求める」のは「お客様」です。その動作を尊敬語にすること自体は正しいのですが、尊敬語の作り方がまちがっているのです。

「お求めやすい価格」を正しい表現にする言いかえ術は?

「え? 『お求めやすい価格』が間違った敬語なの?」と意外に思う人は多いかもしれません。

それでは「お歩きやすい靴」という言葉はどうでしょう?

多くの人が即座に「おかしい」と違和感を持つのではないでしょうか。

 

では、尊敬語にするには?

 

「歩きやすい」は「歩き+やすい」。「動詞+形容詞」を組み合わせた正しい複合語です。

まず動詞の部分だけを尊敬語にします。次に形容詞「やすい」をそのまま加えます。

 

歩く → お歩きになる→ (連用形にする)お歩きになり

やすい →  やすい

お歩きになりやすい

 

「求めやすい」も同様に敬語にしてみましょう。

求める → お求めになる→ (連用形にする)お求めになり

やすい →  やすい

お求めになりやすい

 


いかがでしたか?

「求めやすい」「歩きやすい」など「動詞+形容詞」の形の言葉を尊敬語にする場合は、このように動詞の部分だけを変化させるだけでよいわけです。

 

「お求めになる」は、「求める」の尊敬語。「お求めになりやすい」は、「(お客様が)購入しやすい」という意味を丁寧に伝える表現です。

少し長く感じるかもしれませんが、これが敬語として自然で、相手への敬意も正しく伝わります。

店頭やチラシ、アナウンスなどでは、「ただいま、お求めになりやすい価格でご提供しております」といった言い回しが、聞き手にも伝わりやすく、丁寧な印象を与えます。

 

「お求めやすい価格」は耳に馴染んでいるため、違和感を持ちにくいかもしれません。でも一度立ち止まって、「お歩きやすい」「お話しやすい」と同じ構造だと気づくと、その違和感に納得がいくはずです。

ことばの印象は、お客様との距離を決める大切な要素です。ほどよい敬語を身につけて、信頼される伝え方を目指しましょう。

 

ポイント

「お求めやすい価格」は誤りで、「お求めになりやすい価格」が正しい敬語。

「動詞+形容詞」の複合語である「求めやすい」は、動詞の部分だけを敬語にし、形容詞を加えるだけでよい

 

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