単独世界一周と人生

単独無寄港で
ヨットによる世界一周を果たした
立尾征男(たておいくお)さん(76)
=静岡市駿河区=が26日、
長年、母港にしてきた
堺市の堺出島漁港に戻って来た。
※朝日新聞より
▼2度目
僕が最も目を見張ったのは
本人にとって2001年以来、
2度目の世界一周であること。
2001年ということは
今から16年前、60歳のときの出来事。
60歳でも充分に偉業の域だが、今回
70歳後半の高齢で、当時より難しい
向かい風の多い西回りコースを選択。
途中でサメが船尾にぶつかり
部品が壊れたものの、
ありあわせの部品で修理し、
東回りに航路を変更することで
航海を続行。
それだけではない。
▼食料
つまりそういうことだ。
東回りに航路を変更したものの
今度は嵐に遭遇。
マストを支えるワイヤが切れ、
世界一周計画はさらに遅延。
当初積んでた食料はおよそ1年分。
「1か月分、足りない。」
ところがそこで航海は終わらず、
疑似餌でマグロを釣って食べて
凌いだ、という。
「大きさは80センチ級。
1匹で5日はもった」と話し
計25匹釣ったというから
もはや驚くよりほかはない。
▼船で暮らすことのワクワク感
僕が子供の頃、当時読んでいた
冒険ものの著書などの影響で
船で暮らしながら航海することを
夢見た時期があった。
船内には寝泊りできる設備と
航海に必要な沢山の食糧。
他には何もない。
船外に出れば海と空が
水平線の彼方へ広がるのみ。
誰にも邪魔されることなく、
好きなだけ海と空を眺め続け、
おなかがすいたら
船内の食糧を口にする。
僕は登下校の数十分間、
その船で暮らすところを
船の内装や素材の一つ一つの
カタチやにおい、触り心地まで
事細かに想像しては
架空の旅路を楽しんだ。
▼単独世界一周と人生
約5万5千キロ、
394日間に及ぶ航海は
冒頭のとおり波乱の連続。
僕が子供の頃想像したような
生易しいものでは決してない。
南インド洋で食料が尽きかけ
「コンビニでパンを買う夢ばかり見た」
と話す立尾さんの第一声は
「一言で言うと疲れました」
だが別の談では
「できればもう一回挑戦したい」
とのこと。
幾多の苦難を乗り越え
達成した人にしか分からない
境地というものがそこには
存在するのだろう。