うううう・・・ゴトゴトゴトゴトゴトゴト・・・
(朝日差す檻の中で、自慢のファンゴ頭骨の面にツバをぺちょりとかけられた、手枷足枷&太めな鎖で全身をぐるぐる巻きに拘束された「うつ伏せ棒状体」の奇面王を乗せた馬車は順調に目的地へと進んでいる様子だ)
ムーア「ほら。早くしないと農園に着いちゃうわよ」パッカパッカパッカ・・
ニャ~ニャ~・・・パッカパッカ・・パッカパッカ・・
(連行されていくネコ達の向こう側、密林エリアの木々を避けながら先頭を行くボワコフとミオンの馬を見つめる)
マスターチーフ「毛皮を着ている獣人・・・・珍しい種族のようだが、あやつも農園で奴隷にされているっチャか?」
ムーア「まだ問題は山積み。安心して。それも王女様に相談して、なんとかしてみるわ」
マスターチーフ「ほぉ・・・大した自信だっチャね。そんな寛大なお前に少しでも良心というものがあるのなら、気持ち程度の清涼水を・・」
ムーア「話したらね」パッカパッカパッカ・・
マスターチーフ「そいだら取引だっチャ」ズルズル・・(懇願の眼差しでこちらを見上げ、鎖で巻かれた重たい体を引きずりながら鉄格子側に這ってくる)
ムーア「ここから脱獄させるのは不可能。檻を開けたところで、あんた、すぐに殺されるわよ?」
マスターチーフ「うう・・・・・。じゃあ護衛が変更するタイミングで・・」
ムーア「残念だけど、その頃、あたちはもういない」
マスターチーフ「うう・・・・・。じゃあじゃあ、収容所の服役期間を少しでも短くして欲しいっチャ」
ムーア「切実ね。そんなにヤバい収容所なわけ?」パッカパッカパッカ・・
マスターチーフ「噂が正しいのなら、このワガハイでも瞬殺レベルの看守がゴロゴロいるっチャ。そいつらは、お前を助けた火竜のぼうずと同じで、言葉を発するモンスターだって話だっチャ」
ムーア「・・・・・・・興味深い話ね。ってことは、彼らは世界中に存在するっていうこと?」
マスターチーフ「知りたければ条件をのむっチャ」ぷいっ
ムーア「・・約束は出来ないけど、調査に協力してくれたら、その願いは少しだけ叶うかも。あの子達の運命も、あんた次第ってわけ」(前方で「へこへこと猫背」で連行されていく猫族を見つめながら)
マスターチーフ「なら今すぐ鎖を解くっチャ」
ムーア「いいから答えろ!!」ガシャーーーーン(鉄格子をぶん殴るも微動だにしない奇面王)
マスターチーフ「チッ・・・人間共にこうもしてやられるとは・・・・。あんな男の言葉を信用したあまりにな」ゴトゴトゴトゴト・・
ムーア「どんなふうにけしかけられたわけ?」
マスターチーフ「湿地帯の静かな夜だったっチャ。コブン達が寝静まり、いつものように、こっそりとキャンプでお手製の「奇面スープ」を作り終え、満月の明かりを受けながら、さぁごちそうをいただこうと腰を下ろした次の瞬間、キャンプファイヤー越しに人型の影が揺らいでいたんだっチャ」
ムーア「人間嫌いのあんたにしてみれば、さぞホラーナイトだったでしょうね。それで?」パッカパッカパッカ・・
マスターチーフ「すかさず自慢の包丁を拾おうと周りを見たが、あるはずのものがねぇんだっチャ。するとその男は、「得物ならここだ」と、ワガハイのツインソードを両手に掲げていたんだっチャ。それを見たワガハイはすぐに分かったっチャ・・」
ムーア「コイツ、できるっチャね・・・と・・。続けて」パッカパッカパッカ・・
マスターチーフ「ワガハイはコブン共を起こそうと声をあげようとしたっチャ。すると男は、「今、仲間を呼べば、お前が手にしている秘伝のスープの存在を知られてしまうぞ」と脅してきたんだっチャ・・!!」ワナワナワナワナ・・・
ムーア「・・・・脅迫内容はどうあれ、相手は既にあんたの弱みを握っていたということになるわね」
マスターチーフ「奴はこうも言ったっチャ。美味しいものを独り占めにするような王に誰が従うものかと・・・・まったくおそろしい奴っチャ。ワガハイの性分も含め、既にリサーチ済みだったんだっチャよ」
ムーア「一応、あの子達に悪いとは思っているのねそれからどうしたの?」
マスターチーフ「ワガハイはスープをこぼさないよう慎重に腰を下ろし、キャンプファイヤーの炎の奥で揺らめく男の影を「訝しげに」見つめたっチャ。その時、はじめて、その男がフードを被っていて、さらには顔を仮面で隠していたことも確認できたんだっチャ。それを見たワガハイは・・」
ムーア「余程、素性を知られたくない奴だっチャねぇ・・・・それで?」
マスターチーフ「大切なスープが冷めてはまずいと、少しだけ具材が口に入るようすすりながら、男の名前を聞いたっチャ。すると男は静かに口を開き、「肉まん君」・・とだけ答えたんだっチャ。その名を聞かされたワガハイは、奇しくもその時、口の中に入っていた「謎肉」を舌で転がし、それがほんとに肉なのかどうか確認したっチャ・・」
ムーア「しょうもなにしても、何回聞いてもクソみたいな名前・・・」ぼそっ
マスターチーフ「ワガハイは少しだけ気を遣って、肉まん君に「スープを少しだけ飲むかっチャ?」と聞いたっチャ。すると奴は食い気味に「くさいからいらない」、と返答してきたっチャ」
ムーア「奇面スープっていう名前から想像するだけで、なんか毒々しい色と臭いがしそうだもんね」
マスターチーフ「続けて肉まん君は、今日ここへ来たのは、ワガハイに助言をするためだと言ってきたんだっチャ」
ムーア「・・・・内容は?」
マスターチーフ「西シュレイドの沿岸沿い。プラウズ家が営む獣人族を奴隷にしている農園を襲い、そこを拠点に王都を攻撃しろ。とな」
ムーア「・・・・・・その計画は、あんた達のイデオロギーという油に火をつけた?」
マスターチーフ「まぁな。それが真実なら、捨て置けない情報だと思ったっチャ」フン
ムーア「それで、彼らを解放する為、すんなり従ったわけ?」
マスターチーフ「男はワガハイに西へ進軍するようなら、その移動中に必要な物資を提供してくれると言ったっチャ。するとどこからともなく、暗闇の中を一頭のアプトノスが現れ、そちらに目を向けると、そのアプトノスが大量の物資を積んだ荷車を引いていることにも気がついたんだっチャ」
ムーア「(小声で)相変わらずお金は持っているようね・・・それを受け取ったの?」
マスターチーフ「さすがに話がうますぎるっチャ。もちろん、ワガハイ達にそこまで援助する理由を聞いたっチャ」
ムーア「なんて答えたの?」
マスターチーフ「男は王都に恨みがあると言っていたっチャ」
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
マスターチーフ「そして「自分達」は、獣人の奴隷制を廃止させたいから行動を起こしていると言っていたっチャ」
ムーア「・・・・その言葉を信用した?」
マスターチーフ「獣人差別を訴える人型の団体は大陸に数多く存在するっチャ。そんな人型共も皆殺しにしようとしているワガハイ達の力を借りてでも、目的を達成したいという、あいつの意志力は信頼に値する気迫を放っていたっチャ」
ムーア「・・・そうね・・・確かに・・あの別れの日・・・・・あたちにその決断はできなかった・・・」(小声で嘆く)
マスターチーフ「だからワガハイは奴の計画に乗ったっチャ。そして今、はじめて、あいつの本当の計画が理解できたっチャ」
ムーア「・・どういうこと?」
マスターチーフ「お前より、あの男の方が頭が良いってことだっチャ」(不敵に微笑みながらそっと檻の木床に耳をあてる)
ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?」
パチパチパチパチパチパチパチ!!(その音に気づき、慌てて視線を下に向けると、檻を積んでいる荷車の底から、一人の黒いお面を被った奇面族がすでに導火線に火がついた小型爆弾を片手に檻をよじ登ってくる姿が目に映る)
マスターチーフ「我らの結束力は酷薄脆弱な人型のそれとはわけが違うっチャ。例えワガハイがあの男の時間稼ぎに使われようともな」パチパチパチパチパチパチパチ!!(鉄格子越しに檻の中へ爆弾を入れ込む奇面族)
Recollection No.5_147
ボガアアアアアアアアアアン!!
(爆発と同時に馬上から後方に吹っ飛ぶ視点主)
ムーア「クッ・・!!」ズシャアアアアアアン(背中から大地に激突する)
脱獄だぁああああああ!!
捕まえろぉおおおおお!!
(意識揺らぐ真っ暗な視界の外からガーディアン達の慌てふためく声が)
ムーア「クソニッキー・・・・あたちにどうしろっていうわけ!?」ザシュッ(片膝をつきながら起き上がる視界の向こう側に燃え上がる馬車が映っている)
馴染みのあるガーディアン「キングを探せ!!」ヒヒィ~~~ン(前列から馬と共に駆けつけてきた彼が炎上する馬車の前に到着する)
ムーア「気をつけて!!あいつはまだ近くに・・・・」
ボオオオオオオオオオオオ!!
(馴染みのあるガーディアンが視点主の声に気づき、こちらを振り返った瞬間、大炎上の中より、焼け爛れた奇面王の姿がうっすら浮かび上がってくる)
ムーア「後ろぉおおおおおおおおお!!!!!」(忠告も虚しく、奇面王はガーディアンの背後より背中におんぶするように飛び乗る)
ボリッ!!
(背後よりガーディアンの首を簡単に捻る奇面王)
ムーア「クソぉおおおおおおおおお!!!!!」ダッ!!(走り出す視界の先では、馬を奪った奇面王がガーディアンの遺体を蹴落とし、手綱を握っている)
マスターチーフ「さらばだ!!クソ小娘!!」ヒヒィ~~~ン!!(馬を猛らせながら、左右より捕縛しに迫るガーディアン達を両拳で殴り落とす)
ムーア「仲間を犠牲に自分だけ逃げる気!?それがあんた達の絆だっていうの!?」ダッダッダッダッダッダッ!!
マスターチーフ「王に命を捧げ、王の意志と共にその使命を紡いでいく!!それがブラック・カーニヴァルの・・・・」ちぇええええりゃあああああああああ・・・・・・
ムーア「!?」バッ(頭上を見上げる)
ヒョオオオオオオオオオオオオン!!
(空中より鮮血塗れのチャチャブーフェイクを被った上半身裸の男が、両手で握りしめた自家製の大剣、奇王剣【ゲンス・ゴンスの戯れ】を頭上高く振りかざしながら、馬上の奇面王目掛けて急降下していく)
ムーア「ゲンス・ゴンス!!」ちぇりゃあああああああああ!!!!!
To Be Continued
★次回ストーリーモードは3/22(月)0時更新予定です★