・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(神殿の食料庫だろうか、石造りの天井に広がる煤汚れた火災跡を見上げている)


ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ふぅ・・(思い悩むように顔を下げるとよくある食料庫の風景(食材を保管している大タルの列、葡萄酒の瓶が刺さった木製ワインラック、「何かしらを漬けてある瓶」が雑多に並ぶ大棚に皮なめし台、そして床の隅々には害虫&小型哺乳類よけの消臭玉が転がっている)が視界に映る)


ちら・・・(左右にびっしりと大タルが積まれた通路の奥、その突き当りには、首から上が欠けた少女の石像が見える)


ムーア「・・・・あなたは・・一体誰なの・・?」


ギィ~~~~~~~~~(背後よりドアが開かれる音が聞こえ、振り返る)


おトキ「お嬢様。やっぱりここでしたか。おやつの時間ですよ」てっこてっこてっこ(と扉の向こう側より「足裏肉球」の音を反響させながらやって来る、メイドネコシリーズ【スノーホワイト】(純白の下地に氷晶のようなデンドライトの模様が薄く描かれた獣人専用のメイド服)がよく似合う薄紫毛のアイルー)

ムーア「ありがとう。そうだろうと思って、おぶどうのジュースを取りに来てたの」てっこてっこ(と、にんまりしながら歩み寄ってくるおトキさんを見下ろしながら)

おトキ「今日のあんまんは少し甘みが強めですから、濃度が薄いものが良いかと」ふむ・・(たくさんのおぶどうのジュースが突き刺さったワインラックを吟味している)

ムーア「そしたら清宗ね。どんな甘みもおぶどうの清涼感で流してくれる」ショッ(と瓶を抜く)

おトキ「さすが「あんまんソムリエ」。英断ですわ」パチパチパチ

ムーア「その呼び名、あんまり好きじゃないのよね。あんまニスト。時代背景にとらわれず、ただひたすらにあんまんの真理を問う。われ、あんまん。故にあんまんあり。あたちはね、おトキさん。あんまんを一種の学問として後世に伝えていきたいの。どんなに時間が掛かろうとも、あんまんを論じ、あんまんを追求し、四季折々のあんまんを食べながら、あらゆるあんまんの美徳を顧み、生涯あんまんと過ごし、見上げる夜空の星々にあんまんを投影させながら、果たしてあんまんとは一体何かを書き記してみせるわ」

おトキ「うう・・・今のお言葉・・アースラお嬢様がお聞きになられたら、どんなにお喜びになられることか・・・」ぐすん(手持ちのハンケチを噛みしめながら)

ムーア「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(再び顔を上げ、天井の焼け跡を見つめる)

おトキ「やはり気になりますよね・・塗装に精通する方に頼んで塗り直してもらいましょうか?」

ムーア「違うの。過去に・・・ここで一体何があったのか・・・・」

おトキ「余程の火災だったのでしょうね・・・私がここでお勤めした時には、すでに焼け跡はありました。バーニー様・・・お父様は何も仰っていませんでしたが・・・そういえば、お父様がこの倉庫にいらしている姿を見た記憶がございません」ふむ・・

ムーア「・・嫌な思い出でもあったのかも。クソジジイが火をつけたとか」

おトキ「・・・・・何か事件が起きたと?」

ムーア「かもしれない。ああ、もう・・!!こんなとき、あいつが生きていれば・・」

おトキ「ベックフォードさん・・・私が彼らのことを早くお嬢様に伝えていれば、危険な目に遭わせずに・・」

ムーア「もうそのことに関しては謝らないでって、何度も言ってるでしょ?自分から首を突っ込んだんだし。それにおトキさんはお父さん達に気を配って、あいつがジェイソン・ウーの代理人を務めるって話しを聞き流していたんだし・・・・あいつがあんな風になるなんて、誰も想像していなかったんだから・・・」

おトキ「ベックフォードさんの話が本当ならば、ロザリー家に纏わる真相を知っているのはフランク様・・・ジェイソン・ウーだけ・・・その後、捜索の進展はありましたか?」

ムーア「まったくもって手がかりなし。あのシセもこれ以上は何もできないって。居所はおろか、目撃談すら掴めなかったらしいけど・・・世界は狭いんだか、広いんだか・・・その都度の状況に左右されがち。人の考える世界なんて、結局自分勝手なのよ」

おトキ「ひとつだけ確かなのは、アースラお嬢様のお言葉・・」

ムーア「うん。お母さんはあたちのことをキャロルムーア・ロザリーって呼んでた。そしてまた、お父さんのことも、アーロン・ロザリーって・・・・お母さんは知っていたのよ。ロザリー家の因果関係を」

おトキ「お祖父様・・・デーモン・ロザリーと・・・・あの黒い龍に一体何が・・・・」

ムーア「わからない。けど、それが原因でお父さんとお母さんは巻き込まれてしまったんだと思う・・。昔ね、ちいちゃい頃、ヴィルヘルム達とここを探索してた時、あの焼け跡から、黒い龍が突然飛び出してきて、あたちを食べようとしたの。今思えば、それもまた、お母さんの警告・・・・いえ。どこかであたち達を見ている黒い龍の脅迫だったのかも」

おトキ「黒い龍の目的は何なのでしょう?どうして何の罪もない、アースラお嬢様やお父様、そしてムーアお嬢様を狙うのですか?」

ムーア「それも謎。けどお母さんは言ってた。黒い龍に殺されてしまったって・・・。自分たちの運命に気づくのが遅かったって・・・・・・」(視界を涙のフィルターが覆い尽くす)

おトキ「嗚呼・・・なんて可愛そうなお嬢様・・・」ぎゅっ

ムーア「だからあたちは絶対に許さない。黒い邪龍、マモーナスを」キッ(天井の黒い焼け跡を睨みつける)






Recollection No.5_129






カツカツカツカツカツ・・(回廊の右手より燦々と降り注ぐ太陽の光を受けながらおトキと共に歩いていくと、中庭に設けられた「テラス席」にて談笑している白装束姿の同志二名の姿が視界に映り込む)

モーガン「お?盟主。差し入れしてくれんのか?」(椅子にふんぞり返りながら回廊の低い塀越しに聞いてくる)

ムーア「残念。これはあんまん用」スッ(と右手に握っている瓶を強調してみせる)

モーガン「あんだよ・・酒じゃねぇのか。あんまんばっかり食ってると、桃毛獣みたいになっちまうぞ」あははははは(と笑うもうひとりの同志)

ムーア「桃毛獣ってなに?」(傍らのおトキさんに聞く)

おトキ「ええと・・その・・・」

モーガン「ヒンメルン暮らしのお姫様はコンガを知らねぇのか。なら皮肉も通じねぇ」あはははははは

ムーア「コンガ・・・思い出した!!前にアカデミーの写本で見たことあるぞ!!」むきぃ~~~ムカムカ(横から必死になだめてくるおトキさん)

モーガン「その王国一の書庫から、黒龍に関する情報は何か得られたか?」ボリボリ(きったない無精髭を掻きむしりながら)

ムーア「あのね。あたちはとっくに出禁になってるの。あんた達こそ、元狩人なら、人脈を使いなさいな」ふん

モーガン「都市に戻れば俺たちゃ、即、投獄よ。いいか?盟主。俺たちがここにいるのは、ルチアやシセのコネがあってこそだ。黒龍討伐隊に参加して、過去をチャラにできるほどの名誉を獲得することが最優先だ。そうでなきゃ、こんな雪山の辺境にいるかっての」がじっ(手持ちの「持つタイプのお肉」を齧る)

ムーア「だったら早くターゲットを討伐することね。タダ飯食わせてやってるのは、誰だと思ってんのよ?」ふん

モーガン「お前を信用してないわけじゃない。だが、今のお前の腕じゃ、桃毛獣にすら勝てねぇだろうよ。頼りはレウスのオトモダチってか?」あはははははは

ムーア「あんだってこにょ・・!!」いけません、お嬢様アセアセ(必死におトキさんが全身をもって制御している)

モーガン「安心しろ。俺たちゃ、この神殿のことも、あの喋りまくるレウスのことも一切、外に漏らしちゃいねぇ。借りがあるからな」くっちゃらくっちゃら

ムーア「匿ってやってるだけ、ありがたいと思いなさい。あたちはあんたらのクソみたいな過去より、腕っぷしに期待してるんだから」

モーガン「ハハハハハ!!だったら早く黒龍を連れてきな!それと、もっとマシな狩猟武具もな」バンバン(身に纏っている白装束の胸元を叩くとすんごいホコリが)

ムーア「もう少し待って。直に調達してくるから」はぁ~~~

モーガン「やることがたくさんあっていいな、盟主は。その時間を大切にしろ。それと親父さんの形見をもっとよく読んで、修行に励め。そうすれば、少なくとも俺たちみてぇな悪人に殺されるバカにはならねぇで済む」

ムーア「それって褒めてるわけ?」

モーガン「さぁな。資質は感じる。嘘じゃないぜ?練習相手のレウスが異常なだけだ。そんな化け物を飼いならしているんだからな」

ムーア「その言い方やめて。アポロンは大切な仲間よ」

モーガン「・・・・・・・・・。気をつけるとしよう・・」がじっ

ムーア「で、そのアポロンは?」(遠くに見える馬小屋エリアにその大きい姿は見えない)

モーガン「知らねぇ。飯でも調達しに行ったんじゃねぇか?」くっちゃらくっちゃら

ムーア「ほんとアポロンは偉いわね。自分の食べるものはちゃんと自分で獲ってくるんだから」お~ほほほほ!!ブッアセアセ(笑いかました後、連中に向かっておもいきりツバを吐き散らす)

モーガン「ああ、飯っていえば、ルチアが蒸籠を持ったまま、お前の部屋の方へ向かっていったぞ」

ムーア「げっアセアセ鍵閉めてない!!」

モーガン「またか。だったら部屋の中を見られる前に・・・」


いそげええええええええええ!!
(と叫びながら回廊を走っていく視点主...)


To Be Continued






★次回ストーリーモードは1/18(木)0時更新予定です★