~サムソン帰還から三日目・午前。都市部・旧市街地
影丸「さぁ、中に」
ガチャ
ゲルハルト「にゃむぅ~
(ずいぶん古い家だな。この空家を拠点にしてたのか?ん・・おい、イオ)」
イオ「お邪魔しまぁーす」てくてくてく
ゲルハルト「にゃあ
(はぁ・・お前はいろんな奴から狙われてるんだぜ?少しは警戒心をもってだな・・)」
イオ「だってゲルハルト様のお仲間の方なのでしょう?」
ゲルハルト「にゃいー(だってよ。どうなんだ?)」
影丸「ハッ。申し遅れました。
拙者、ユクモ薔薇十字軍・フランソワ隠密部隊管轄下の影丸と申します」
ゲルハルト「にゃん
(局長(フランソワ)んとこの隠密隊か。どうりで仲間でも顔が分からねぇ訳だ)」
イオ「ユク薔薇ソワ隠密丸?凄く長いお名前なのですね」
「あたちのモンハン日記」
~紫の暁編
ゲルハルト「にゃー
(で?いつから潜伏していたんだ?)」
影丸「ハッ。拙者ともう一名、上官である方と共にニ週間ほど前より」
イオ「この古い空家じゃお食事とか大変でしたでしょう?」
ゲルハルト「にゃんにゃ
(なんだと?するとお前達は既にこの王国騎士団領のクーデター騒動が起きるという情報を掴んでいたっていうのか?)」
影丸「いえ。当初はある一味を追跡し、その活動内容及び、所在を本部(ユクモ)にお伝えするのが任務でした。その「流れ」の行き着いた先が、現在であります」
イオ「まぁご苦労様です」
ゲルハルト「にゃー
(時間が許す限り、詳細かつ簡潔に伝えろ)」
イオ「まぁゲルハルト様?そんなむつかしい事を仰らなくても」
影丸「ハッ。元々我らフランソワ隊とサムソン部隊は、エリーゼ中尉を除いてほぼ面識はおろか、その活動内容も知らされておりませぬが故、今回の任務の一連を説明させて頂く必要がございます」
ゲルハルト「にゃー
(だな。にしても、局長と仲のいいエリーゼがお前ら隠密隊の活動内容を少なからずとも知っていたのは同じ部隊として、ちとショックだがな。これもサムソンの日頃の怠慢な行いのせいか・・ふん)」
イオ「まぁ・・
全然お話は分かりませんが、おじさまったらユクモでも遊びほうけているっていう事は伝わりますわ。ほんとに仕方のない」
ゲルハルト「にゃん
(さっき上官って言ったが、誰と一緒なんだ?)」
影丸「ハッ。風魔ニャ太郎様です」
ゲルハルト「・・・にゃんだ(風魔・・・なるほどな。
先のフニャンコ革命の時、旧ニャスティーユの集落でUBUとグレンの足止めに来たアイツか。確か・・猫牢関でジャック・ルーの部隊に殲滅させられたと聞いていたが。お前もその生き残りか)」
イオ「何やら物騒なお話ですこと」
影丸「はい。
革命終結後は本隊とは別に革命最中、突如姿をくらました猛豚軍の追跡をしておりました」
ゲルハルト「にゃん
(それがさっき言ってた任務ってやつか。
で?自部隊を壊滅させられた復讐だけが目的じゃないんだろ?)」
イオ「まぁゲルハルト様ったら
復讐だなんて恐ろしい」
ゲルハルト「にゃー?
(なぁ、イオ?)」
イオ「はぁい?ゲルハルト様」
ゲルハルト「にゃんにゃ
(うちの軍の話しでつまらないのは分かる)」
イオ「そう見えます?」
ゲルハルト「にゃん
(少し黙って聞いていようか)」
イオ「はーい」
ゲルハルト「にゃいー
(すまない。続けてくれ)」
影丸「ハッ。拙者とニャ太郎様が猛豚軍を追っているのは当然、亡き仲間の無念を晴らす為。そして完全なる革命の灯火を消す為でございます」
ゲルハルト「にゃんにゃ
(猛豚が再び革命を・・・そうか!その革命ってのが今回のクーデター騒動というわけか。
ということは、猛豚軍が黒幕だっていうのか?だが、戦場の記録上での猛豚という猫は、猪突猛進型の一介の将と聞いているが)」
影丸「猛豚軍を影で指揮する軍師。
その者こそ我らが一番警戒し、仕留めなければならない危険人物なのです。
その軍師の名は・・
ルイ・アンドリュー・ド・ニャン=ジュスト
「どうだ。都市に潜伏している国王派の私設軍隊に動きはあったか?」
「ハッ。街の噂ではジークムント太子を見かけたという者もいるようです。おそらくは合流したかと」
ニャン=ジュスト「フフフ・・。そうか。着々とフィナーレに向かってくれてるようだな」
「ハッ。正午の公開演説の噂は既に聞いているはずです。
あとはそれに合わせて奴らが軍を起こしてくれれば・・というところです」
ニャン=ジュスト「起こすさ。ジークムントの狙いはディマリー夫人のみ。
公開演説と聞けば必ず奴らは夫人が大衆の面前に現れると予想し、出撃してくるだろう。
それと、「あれ」の準備は如何ように」
「ハッ。既に昨晩の騒動の隙に生じ、郊外の森に潜ませてあります」
ニャン=ジュスト「さすがだな。ニャン蔵殿」
ニャン蔵「ありがたいお言葉」
ニャン=ジュスト「こ度の革命により、我が猛豚軍の旗揚げが成功した暁には正式に貴殿の猫伊賀の忍び集を我が軍の隠密部隊として高待遇で扱うと誓おう」
ニャン蔵「ハッ。今のお言葉を古里の仲間に聞かせてやりたいものです。
拙者達の望みは我が伊賀一族の再興。その為ならばこの猛豚軍に命を捧げる覚悟です」
ニャン=ジュスト「相互関係の一致だよ。貴殿の活躍が我が軍に成功をもたらし、また貴殿の夢をも叶える。情報を得るということは戦争の抑止力になる・・とは政治家の詭弁だけではあるまい?」
ニャン蔵「仰る通りでございます。
ですが影もまた、戦が無ければ食いつなげない職業であるのも事実。
今以上の猛豚軍の勢力拡大に力添え出来るよう心得ます」
ニャン=ジュスト「殊勝だな。ニャン蔵殿」
ニャン蔵「いえ。拙者等、ニャン=ジュスト侯の足元にも及びませぬ」
ニャン=ジュスト「フフ・・。貴殿のその謙虚には嘘偽りがない。
ただ阿るだけしか才能がない官僚共に少しは見習わせたいものだな」
「軍師様。昨晩、キケロ宰相の娘の家に奇襲をかけたデスクラッシャー隊はやはり壊滅した様子です」
ニャン=ジュスト「デスクラッシャーめが・・。所詮は粗暴好きの一介の将だったか。
分かった。して、キケロの娘の所在は?」
「現在都を調査中であります」
ニャン=ジュスト「有能な故・宰相の一人娘だ。発見した所で邪険に扱うな。よいか」
「ハッ!」
ニャン蔵「軍師様。では拙者も逃亡した者らの捜索に」
ニャン=ジュスト「任せる。特にジークムントと共に逃亡したサムソンという男は見つけ次第、片付けるんだ。憂いは残すな」
ニャン蔵「承知!」シュッ
ニャン=ジュスト「さて・・正午まで・・・もう少しか」
イオ「じゃあそのナン=ズストっていう猫族の軍師が悪玉なんですか!?」
影丸「おそらくは」
ゲルハルト「にゃんにゃ(ニャン=ジュストだよ、イオ)」
イオ「許せない・・!ディマリー夫人をそそのかし、よりによって自分の軍隊を領内の正当な軍にしようなんて・・!!」
影丸「元々、オーギュスト家全体が王宮の支配を目論んでいたようです。
ニャン=ジュストはそこに目をつけたのでしょう」
ゲルハルト「みゃー
(オーギュスト家か・・。ディマリーを国王様の妾として送り込んだという名家の連中か)」
イオ「アイザック・・・可哀想・・・」
ゲルハルト「・・・・(イオ・・)」
「公開演説が始まるぞ!」「中央広場に急げ!」
ザワザワザワザワ・・
影丸「なにやら外が騒がしいですな」
ゲルハルト「にゃー(さっき都で聞いた話しじゃ、王宮側から正式に民衆に向けた今回の騒動の公表があるらしい。中央広場と言っていたな」
イオ「ねぇゲルハルト様!私達も行きましょう!
なんだか胸騒ぎがするの!!」
ゲルハルト「にゃー(だな)」
王国騎士団領・南門外
「ダメですよぉ!警部!
やっぱり安物の双眼鏡じゃ中はおろか、城壁しか見えないです」
「だろうね」
「だろうねって警部。しかし本当に戦になるんですか?」
「自分の組織の密偵を信じられないのかい?
仲間も信じられなくなったら世も末だよ?ベップ捜査官」
ベップ「どうせ私はノンキャリア組の中年捜査官ですよ
いたたた・・ずっと双眼鏡を除いてかがんでたから、腰をやっちまったかな」
「フフフ・・。
ボクにとってはキャリアや種族がなんだろうが、君は頼りになる「人型」の相棒であり、人生においては尊敬する先輩である事に違いはないよ」
ベップ「アイオロス警部・・」じーーん
「さて・・・」
アイオロス「とりあえず正攻法で中に入ってみようか」
To Be Continued
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