カスタニーは子爵に呼ばれて
二人で卿の蔵書を見学に
「カスタニー殿、今日はちと面白いものを
ご覧にいれましょう。」
「子爵様、そりゃどんなものです。」
「われわれの聖書です。きっと驚きますな、
なにしろその豪華華麗さは他にはござらん。」
「そりゃ楽しみですな。」
子爵が読書机の上に運んできたのは、言葉どおり
黄金色に輝く聖書、そして日課祈祷書でした。
しばらくの間、二人は無言でこのきらびやかな書物に
しばし見とれていました。「さてカスタニー殿、本題に
はいるといたしましょう。」と子爵が沈黙を破ります。
ついにアヴィニョンでなすべきことが命ぜられるのです。
「子爵様如何様なりと。」そう答えてカスタニーは
レイモンの言葉に耳を傾けます。
「わたくしの頼みとは、教皇クレメンスをこのカルカソンヌ
に連れてきていただきたいのです。」
「それは生死のべつかまわずに?でございますか。」
「わたしの望みはかれの死ではございませんぞ。」
この言葉にカスタニー安堵したのです、なにしろ彼は
勝手に教皇を暗殺するものだとばかり、思いこんで
いたのですから。
つづく