アマリアはその日以来、イーゴリの
思い出を封印してしまった
絶望は復活の母。
♪子供が子供だったころ
腕をぶらぶらさせて歩いた
せせらぎが川になったらいいなと思った
川が滝に
水たまりが海に♪※
アマリアのこころから零れ落ちた涙は、
一筋の流れとなり、それはやがて
たどり着く場所をみつけました。
忘却の淵は心地よく全てを呑み込んでくれます。
彼女はこうして再び生へと還ったのです。
また、アマリアの悲劇は新しい命を生みました。
涙の河を流れ行くもの、それは
イーゴリの忘れ形見。
アマリアの紅色の絹衣に抱かれ流れ行くのは、
あの人形です。
最期の夜、彼女は博士から人形の秘密を
打ち明けられていたのです。
けれどあの惨事、アマリアはそのことも
記憶から消してしまったのでした。
♪子供が子供だったころ
この質問たちの出番がくる
なぜわたしはわたしで君じゃないの?
なぜわたしはここにいてそこにいないの?
いつ時間がはじまって、いつ宇宙は終わるの?
お日さまの下で生きているのは単なる夢じゃないのかな?
わたしが見たり聞いたり嗅いだりするものは
世界がはじまる前の世界の幻じゃないの?♪※
つづく
※Peter Handke の詩 Lied Vom Kindsein から引用。
