マニアックな1980年代のアニメの話になるのですが、「重戦機エルガイム」という1984年の作品です。
「じゅうせんき・エルガイム」と読むのが正式ですが、英語由来の「ヘビーメタル」という言い方の方がしっくりきます。
そのため、「ヘビーメタル・エルガイム」という読み方がファンの間では浸透していると思います。
いわゆるロボットアニメで、ガンダムを手がけた富野由悠季さんの原作によって物語が進みますが、この作品は他のロボットアニメと少し違って、非常にスタイリッシュだったのです。
私も好きだったので、よく覚えています。
とにかく、各キャラクターのデザインが髪型、メイク、衣装に至るまで凝りに凝っていました。
なんと、女性の下着のデザインまできっちり設定されているという徹底ぶりだったのです。
また、メカニックデザインもスレンダーで美しいという印象がありました。
私自身、ガンダムや他のロボットアニメでメカニックに「美しい」と感じたことはなかったのですが、この作品で初めて「美しいロボット」というものを目にしました。
もっとも、「ロボット」という呼び方も少し野暮ったいですね。
ガンダムが「モビルスーツ」と呼ばれていたように、エルガイムでは「ヘビーメタル」と呼びます。
「ヘビーメタルって何のことなんだ?」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、まさにこの世界のロボットのことを「ヘビーメタル」と言っていたのです。
この世界には、オルドナ・ポセイダルという絶対的な宇宙の支配者がいます。
しかし、この人物でさえ実は本当の支配者ではなく、影武者だったのです。
本当の支配者は、アマンダラ・カマンダラという武器商人でした。
この正体と、この世界の仕組みは最終話で一気に明かされるという構成でした。
影武者としてのポセイダルは、ミアン・クゥ・ハウ・アッシャーというポセイダルの愛人の一人でした。
本物のポセイダルが男性であるのに対し、影武者は女性。
これにより、支配者ポセイダルが男女どちらともつかない、非常にミステリアスな人物として仕立て上げられていたのだと思います。
「ポセイダルの愛人の一人」と書きましたが、もう一人重要な愛人がいます。
それが、フル・フラットという女性です。
この女性は、ポセイダルから自治領を与えられていたような権力者側の人物です。
小説版では、彼女自身もポセイダルの影武者を務めていたという記述があり、ますますポセイダルという存在が謎めいて理解不能なものとして描かれつつも、あがめられているという構造になっています。
この世界の物語は、オルドナ・ポセイダルの正規軍に対して反乱を企てる人々の戦いを描いています。
主人公は反乱軍側の人物で、ダバ・マイロードという名前で登場しますが、本当の名前はカモン・マイロード。
カモン王朝の末裔という設定です。
真のポセイダルは、ヤーマン一族に両親を嬲り殺しにされた過去があり、その一族であるカモン家に復讐したいと考えていたのです。
この設定は、当時「身勝手すぎる」とか「私怨で戦争を起こすのか」と散々言われたようですが、私は「自分の親が嬲り殺しにされたらその一族に恨みを抱くなという方が無理だ」と思っています。
だからといって、復讐して良いというわけではありませんが、アニメではポセイダルの復讐は意外な形で遂げられます。
ポセイダルを倒したダバ・マイロードは、義理の妹であるクワサン・オリビーを連れて故郷へと帰ります。
しかし、このときオリビーは完全に正気を失っており、精神的な病を患っていることが匂わされています。
ガウ・ハ・レッシイのセリフに「ポセイダルはこれで復讐を完成させた」というものがあり、この言葉からもわかるように、ポセイダルは自分の親を嬲り殺しにした一族の末裔を根絶させることに成功した――ということが示唆されています。
また、ダバは今まで一緒に戦ってきた仲間たちとも別れることになり、アニメの最終回は幕を閉じます。
原作小説では、ダバはファンネリア・アムと結婚し、カモン王朝を復興させますが、最終的には民衆によって倒されてしまうという結末を迎えます。
(うろ覚えですが、たしかこのような内容だったと思います)
いずれにせよ、ハッピーエンドとは言えないと私は捉えています。
復讐に復讐で返しても、やはり誰も報われない――。
おそらくマイナーな作品かもしれませんが、私はこのアニメが好きでしたね。
「重戦機エルガイム」は
以下の3本で全容を見る事が出来ます。


