ククールが鍋の前でなにやら難しい顔をしている。それを離れた場所で見ているマルチェロは果てしなく呆れた顔だった。
「わたしは思うのだが」
「あ?何だよ」
「お前はつくづく、馬鹿だ」
 兄の言葉にククールは肩を落としている。
「そうしみじみ言うことかよ……」
「馬鹿を馬鹿といって何が悪い、馬鹿」
「そう馬鹿馬鹿いうこたねえだろうがよ!」
 そう怒鳴ったククールの手には見紛いようもない薬草があった。雪深く植物の育ちにくいオークニスとはいえ、やはりここにも薬草は流通している。ククールもマルチェロも回復呪文を使えるためあまりお世話になることもないのだが。
 そしてククールの前には鍋。マルチェロはまたため息をついている。
「薬草を料理する者を、馬鹿以外にどう形容すればいいのだ」
「草なんだぜ、草!きっと食えるに違いない!」
「お前は草を食うのか。知らなかった」
 感心した兄にククールは青筋を立てている。
「……野菜だって草の一種だろうが」
「野菜と草とは似ているようでかなり違うとわたしは思うが」
「つっても、他にどう使えっていうんだよ!もらったはいいが、俺は呪文ばっか使うからこんなもんに用はねえし……かといって置いとくとしおれるし……」
 ククールは案外、貧乏性だ。このまましおれさせてしまうのが惜しく、どうにか使い道はないかと模索しているらしい。
「うまいかもしれないぜ?」
「味がいいのなら、とっくに食用になっている」
「アモールの水だってうまいだろ!」
「あれは水だ」
「…………」
 ああいえばこう言う。どうにもこの兄弟には穏やかに会話をするという考えがはなからないらしい。
 ククールは薬草を手にしたまま大きくため息をついた。
「あんた、どうしてそんなに反対するんだ」
「……」
「あ、もしかして!あんた、食ったことあるんだろう!そんで、まずいこと知ってるんだな!どうだ、そうなんだろう!」
「…………」
 妙に嬉しそうなククールをマルチェロがにらむ。
「……やむにやまれず、そうなっただけだ」
「へ~草をねえ」
「……うるさい」
「草なのにねえ」
「うるさいぞ!」
 怒った兄にククールはにやついている。腹を立てたマルチェロはそれきりうんともすんとも言わなくなった。
 いったいどうしてそんなものを食べる羽目になったのか、いつか聞いてやろうと心に誓いながら、ククールは薬草をかじってみる。
「…………」
 苦かった。


05/06/01
ドラクエ世界にはどこかに広大な薬草園があるに違いない。
個人的に、ドラクエ3の「消え去り草」を育ててるところを見てみたい。