先ほどから魔族の王ピサロは人間たちの後ろでいらいらとつま先で地面を叩いている。その前にいる半分だけ人間の勇者様は地面に置いた地図をのぞきこんでいた。
「本当に全部まわったのかなあ?」
「わかんない。ねえブライ、ボケてなかったら記憶力はいいはずでしょ。どう?」
「姫様、何度も言っておりますが……」
「あーはいはい!お説教は後でまとめて聞くから!」
耳をふさいだアリーナにブライはため息、その後ろでピサロはもっと大きなため息だ。それを聞いたマーニャがにやにやとその背中に歩み寄る。
「言いたいことがあんなら言えばいいのに、ねえ魔王様」
「……何が言いたい」
「べっつに?」
「そもそも、お前たちはこんな場所でなにをやっているのだ!こんなところに用があるはずもないだろう!」
ピサロがそう言うのも無理はない。ここはエンドール、こんな場所に用があるのはここに家族のいるトルネコか、愛するカジノのあるマーニャくらいなものである。
それに勇者は顔をあげた。
「ついてこいとは一言も言ってないけど」
「……サントハイムの姫、お前は何か文句の一つでもないのか」
「ないよ?勇ちゃんと一緒にいたら面白いし!でもさあ、全部まわったのならこの辞書、全部埋まるはずでしょ。何で埋まってないんだろ」
「うーん、手当たり次第に戦いまくるしかないかなあ」
「それいいね!賛成!」
目を輝かせアリーナが賛成する後ろでクリフトはおろおろしている。
「姫、またそんな危険な……」
「わたしに敵う魔物がいたら出てきなさいってもんよ。ねえ勇ちゃん」
「あははは、確かに」
笑う姫と勇者に額を押さえ、ピサロは一行の良心である占い師ミネアを見た。
「おい、女、お前はどうだ」
「うふふ、勇者様とは言え、まだまだ遊びたい年頃ですものね」
「そうそう!勇ちゃん、さっそくカジノに……」
「姉さんはもうそんな年じゃないでしょ!」
「ミネアのケチー。わたしだって遊びまくりたい年頃だもん」
頬を膨らませたマーニャの腕をミネアがつねる。それを横目に勇者はニコニコと笑顔だ。
「カジノも久しぶりに行きたいかな。アリーナ、どうしよう」
「いこいこ!パーッと遊んだら魔物の辞書埋める名案も浮かぶかもだし!」
「じゃ、カジノに出発!」
「さんせー!」
ぞろぞろと一行はエンドールのカジノへ向かってしまう。それを見送るピサロの背中にロザリーがそっと手を当てた。
「…………」
「このように騒がしいのも楽しくて良いではありませんか。ね、ピサロ様」
「……人間は不可解だ……」
額を押さえため息をついたピサロにロザリーがくすくすと面白そうに笑った。
どう考えてもピサロは導かれしものたちより真面目だと思います
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