2023年 あけましておめでとうございます。

 

 

 

一応月間と銘打つこのブログ、

 

ついに年間一本、

結果的に年始のあいさつだけになってしまった昨年でした。

 

なかなかブログを書く習慣が減ってきて、

一本書くのにエネルギーとモチベーションがいる。

 

30代くらいかな、

このHPでカムストックというシリーズでブログを書いてた時は、

超長文を頻繁に書いていたものです。

今でもたまに必要があって見返したりすることがあるのですが、

なかなか一本が全部一気には読めない量ですね。

熊野の山で遭難する話とか。

岡林の日本シリーズとか。

面白いです。

 

ああいうの最近は書いてない。

 

かといってSNSで細かいことを色々書くモチベも、

ひと頃と比べるとなくなってきました。

 

何でしょうね、この変化。

 

ただ、そんな中でずっと続いてるのは奈良新聞の隔週連載です。

軽く十年以上続いている。

800字。

 

そのくらいの頻度でそのくらいの文字数が今は適度です。

 

 

昨年カムカムミニキーナは

本公演「ときじく」と

四日市でのしめんげきを上演いたしました。

 

ご来場の皆さま、ありがとうございました。

 

「ときじく」に関しましては、

コロナ案件でいくつかのステージが中止になってしましまいました。

特に1ステージもできなかった大阪公演に関しましては、

楽しみに待っていてくださった皆様に非常に申し訳ないこととなりました。

 

あれは夏のことですね。

遠い昔のようです。

 

その後、とうとう僕自身もコロナに捕捉されてしまいました。

 

 

 

手強いですね。疫病。

 

様々な方向性から蝕んでくる。

 

閉ざされて、なかなか生きのいい言葉を吐けない時間帯が続きます。

 

 

 

大晦日、紅白を見ていて、

とても今回いい回で

何度もジーンとしたんだけれど、

まるで、

沈みゆくタイタニックの最期の宴のように思えました。

いよいよ何かが終わる。

 

もちろん、僕の年齢や、体調などもあっての妄想ですが。

 

 

 

 

 

こんな時にこそ演劇が力を発揮するのだと思います。

 

いろんな意味で。

 

いろんな局面で。

 

こんな時にこそ演劇が必要であることが、

 

なぜ大昔からその行為が残り続けているのかが、

 

はっきりするのだと思います。

 

そのことをはっきりと伝えたい。

 

堂々と披露したい。

 

 

 

 

 

だというのに、

今年、カムカムミニキーナの本公演はありません。

今年度という括り、あ、つまり現時点では来年度ですね。

そういう括りで来年二月の公演までお待ちいただくことになります。

様々な事情の結果です。

申し訳ありません。

 

 

今まさに、作家として書きたいことは山ほどあり、

演出家としてもどんどん具体的に舞台を作っていきたいし、

俳優としてもできうる限り舞台に立っていたい。

 

 

殊に劇団公演は、その三つの焦点が一点に収斂する特別なものですので、

この機会が一年ないというのは、

なかなか厳しいものがあるのは確かです。

 

その代わり、しめんげきやワークショップ、リーディングなど、

フットワークの軽いもので、

細かく作品作っていければと考えています。

 

 

四人芝居のしめんげきは、

二月十八日に高知公演が決まっております。

(高知はスガ・オロペサ・チヅルの出身地であります)

昨年四日市で好評いただいた乱歩原作「パノラマ島」に加えて、

新作「土佐竹取」を上演します。

 

高知ゆかりの「土佐日記」。

のんびりとして、それでいて底に哀切を秘めた、

何か際立った事件が起こるわけでもない旅日記です。

その作者、大歌人紀貫之は

作者不明の「かぐや姫」つまり「竹取物語」の作者ではないか?と疑われる一人。

「竹取物語」はファンタジー童話でありつつ、

主眼は時の藤原独裁政権批判の禁断の書です。

だから作者がはっきりしない。

 

そこに登場し、くさされる実在の五人の貴族は、

「ときじく」で最後のシーンに出てきた「五王」のモデルです。

(何人かの役者不在の特別バージョンではビッグ4といって一人足りなくなってましたが)

 

この「竹取物語」における藤原独裁政権批判は

実は「古事記」「日本書紀」の内容、成り立ちに深くかかわっている節があります。

 

そしてこの、武力を持たずに何百年も国を実質支配し続けた藤原家の時代には、

現代の抱える問題とシンクロする事件が多い。

 

 

 

そんな背景を持つ「土佐竹取」が2023年の一作目になります。

見たい方はぜひ高知へ旅しましょう!

こうして地方への人の動きを促すのも、しめんげきの特長。

 

 

しめんげきは、地方でやるのがメインです。

基本四人だけですべてのことをこなしますし、

装置もいらない。究極道端でもできるスタイルです。

低予算、少ない観客でも十分成立します。

持ちネタも増えましたので稽古期間最小限ですぐやれます。

時間があればなるべくその地方にまつわる新作も作ります。

 

 

今年はこのしめんげきをいっぱいやれればいいな。

今のところ高知だけです。

全国の皆さま、企画応募お待ちしています!

ワークショップやリーディングのセット企画にもできますよ。

しめんげきは、演劇を観る側の人が、

演劇をやる側にもなっていってほしいという、

そんな考え方の延長線上にあるものでもあります。

ある意味、少人数で簡単にできる手作りの演劇作品というのを、

実際に体験してもらう。

なのでワークショップと組み合わせるのは、おすすめなのです。

 

 

演劇は観るものからやるものになっていく。

そんなところに何らかの突破口を見ています。

 

 

 

個人的には劇団外で、昨年もいろんな舞台に関わらせていただきました。

 

「腹黒弁天町」

半分コロナで中止になりました。悔しい。すごくいいキャストで演出させてもらった。

「三十郎大活劇」

この話、鈴木さんの作品の中でも大好きです。

「Secret War~ひみつせん~」

年末の帝銀事件のNスぺで僕の演じた人のモデルが出てきました。

「ふることぶみ2~愛と哀しみのヤマト篇~」

米良美一さんや大和郡山市長が出てくれるというミラクル。

「君に贈るゲーム」(ラッパ屋)

絶対に遭遇しないダブルキャスト制。千秋楽終わりの楽屋で初めて別のチームの人と言葉交わせて涙した。

 

 

つまり昨年は鈴木聡イヤーでした。

大変お世話になりました。

 

 

今年も役者として舞台に立たせてもらう作品がいくつかあります。

 

 

一発目はもうまもなく本番、月影番外地「暮らしなずむばかりで」

福原君の本、木野さんの演出、共演の皆さんもとても面白いです。

とてもやり甲斐を感じる作品。

名作に仕上げるよう一同ラストスパートです。

スズナリでお待ちしています。

 

他もそのうち発表されるでしょう。

 

こんなこと言うと、すごいスケジュール埋まっているみたいですが、

全然そんなことありません。

 

毎年そうですが、一年行き当たりばったりです。

今のところ半分も見えていません。

 

 

あ、古事語り部座はやります。

 

「ふることぶみ3」です。

完結編です。

 

また約一年かけて稽古です。

 

 

そんなこんなで、

まあまあ長く書きました。

2023年、(あれ?令和何年?もうあまりこれ言わなくなるのでしょうか)

 

病み上がりのスタート。

徐々に回復していってくれ。

そしてその先の景色を。

 

今年もよろしくお願いします。

 

2023年1月2日 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆さま、2022年あけましておめでとうございます。

 

昨年のカムカムは、

 

3月に奈良にて、

しめんげき「しんとく丸」「マヤゴロー」「がごぜ」

 

7月に四日市にて、

リーディングしめんげき「スワン・ダイブ」

 

8月9月に東京、札幌、大和郡山にて

本公演「サナギ」

 

を上演させていただきました。

 

コロナ禍真っただ中にご来場してくださいました多くの皆さまに、

あらためて心より感謝申し上げます。

 

本当は秋にもう一本何らかの上演ができないか模索していたのですが、

もろもろの事情によって、

というか、コロナのことですが、

実現するに至らず、

いつもの密度からすると、

下半期はやや活動休止期間が続いた印象です。

 

演劇を取り巻く状況は依然として厳しいものがあります。

上演の計画がとん挫した話もよく聞きますし、

話題の演目を見に行っても空席が目につきます。

新しい企画も減ってるでしょう。

繰り返された中止、延期による経済的疲弊、

そしてそれがもたらした客離れから立ち直るには、

どれだけの時間が必要なことか。

 

一括りに娯楽と言ってしまえば、

いろんなモノがありますが、

その中でも、

演劇が特化してなしうるものは何なのか。

 

好きな時間に家で見たり聞いたりするものと何が違うか。

 

わざわざ劇場に決まった時間に足を運ばねばならない。

しかも明らかにチケットの値段が実感として高い。

 

にもかかわらず、

演劇体験が貴重であるということを、

娯楽全般としては括りきれないその価値を、

言葉にし、行動で体現していかないといけない。

 

特に我々は劇団ですから。

演劇を標榜する専門集団ですから。

 

そういうことをあらためて考え、

実践していく年にしたいと思います。

 

それは二つの柱をもつ課題です。

 

一つの柱は作品の内容。

 

「サナギ」はある種、そこは鋭角な攻めの姿勢で、

かなり、わけがわからないという声もいただきましたが、

我々が目指すものは、

わかりやすくとっつきやすいものではなくて、

演劇でしか成立しない作品、

そして

観客の皆さんが経験したことのない体験です。

 

見た方のわからなさが不愉快であるのは我々の未熟の証です。

そのわからなさが愉快になる方法をさらに摸索せねばなりません。

そういう課題を突き付けられた作品でもありました。

 

二つ目の柱は、企画の内容です。

 

特にこれは本公演よりも色んな意味で身動きがとりやすい

「しめんげき」や「リーディング」

などの小企画において、

様々な試みを打ち出していけると思っています。

 

中でも重要視しているのは、

都市部以外へ地方展開です。

 

我々の持つ考え方、作風を核にして、

演劇による一つのコミュニティを地方に作っていくこと。

コミュニティという言葉が大袈裟なら、

たまり場、居場所、趣味仲間のサークル、

そういうもので十分です。

 

演劇のプロになろうとする人、

プロの演劇を見に行く人、

これら以外の人達にも演劇との出会いが劇的に作用することは大いにあります。

私達はそういう方々と、うちの演劇観の相性がいいと思っています。

 

ワークショップ、講演会、交流会。

自分たちの上演。うちの劇団の上演。

混成メンツでの上演、などなどなど。

全体として、持続するひとつの祭りです。

 

そこから何かを目指すのではなく、

その過程自体が、

日々の暮らしの血となり、肉となっていく。

 

そういう形での演劇という体験、演劇というモノの認識。

それを届ける演劇の専門集団でありたい。

 

我々はいくつかの町でそういうことを十年規模の時間をかけて開拓してます。

当然時間がかかるんです。

そういう意味で、公共以外では劇団でしかできません。

 

また商業的発想ではないので、

これは完全に人の縁を頼りに、それを広げていくことでしか進みません。

この、縁頼み、ということ自体が貴重だと思っています。

 

が、最初の縁が一番難しい。

転がり出せば縁はどんどん繋がっていくのですが、

最初の一歩。

 

これを何とか見つけ出して、いくつもの知らない町に繋がることが目標です。

 

まだまだ誰かの故郷であるとか、

もともと縁のあった地でしかなかなか展開できてないのですが、

 

今年はぜひ一つでも新たに展開できればなと思っています。

 

 

そんなこんな、

コロナで演劇やめるかってところまで追い詰められてる多くの人にとっては、

何言ってるんだ?って内容かもしれません。

 

実際うちもまた公演一回やるのに四苦八苦の年になるかもしれません。

この状態が延々続くとどこで息切れするかもわかりません。

 

ただ、嘆き続けていても変わらない。

 

劇団ですから、劇団でしかやれないこと、

作品と売り上げと評価だけではない取り組み、

こういうことに敏感でいたいってことを、

年頭に書いておこうと思いました。

 

 

カムカムミニキーナ公演は夏に新作を予定しています。

 

今のところその一公演だけです。

 

他にも企画が増えるよう頑張ります。

 

もっとやれることはあるはずだと、

日々考えています。

 

2022.1.2   松村

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日々、このような時節に連日劇場へ足を運んでくださる皆さまに、まことに感謝の念が絶えません。

 

と共に、そんな皆さんが、それぞれに全く異なる一人一人の人間として、

唯一無二の回線を通じて舞台にコミットすることでできあがる集積、

この演劇という現象が、

何十年かけてついに極まり、行き詰まりつつある現況社会の日常において、

やはり、何か新たな視点を見出すきっかけを生みだしえる場なのだという思いを強くしてます。

 

この状況の中で、相当に入念な安全の準備をしながら、

わざわざ劇場まで来て、目の前で何かを目撃し、巻き込まれ、何かを取り込んでいく。

消費とは全く異なる、この積極的な生の世界への摸索行動にこそ、

僕は何よりも可能性を感じるし、

そういうことにしか、事態打開の希望はないのではないかと。

 

いろんなところで言っておりますが、

「サナギ」は「古事記」のいくつかのエピソードを背骨にもった物語です。

ただ、その情報がないとわからないというものではありません。

(その情報があっても“わからなさ”はほぼ同じだと思います)

あくまで核心は現在、今、ここの実感にあり、

「古事記」はそれを形にするための道しるべのようなものです。

 

なので、これは別にネタバレってほどのことでもありませんが、

気になる方は、この後は読まないでください。

 

「古事記」よりとっている設定は大きく分けて三つあります。

 

一つは、ヒルコ神話

 

これは、カムカム作品では

『ひーるべる』『えびすしげなり』で主題にしております。

(同じDVDに収録されてます。ぜひ。各配信でも見れます)

ヒルコ神話に関わる神様は

イザナギとイザナミですが、これに相当する登場人物は今回はいません。

その子?とされる、イザナギの左目から生まれたアマテラス(この物語においてはヒルメ)と、鼻から生まれたスサノオ(スサ爺)

つまりヒルコの兄弟にもあたるのですが、

この二人の原罪の意識の物語が一つの核です。

原罪なんてイメージは、古代日本には出てこない概念です。

これは西洋的、近代的な概念です。

だからこのあたりはオリジナルです

 

このアマテラス(ヒルメ)が引きこもって、アメノウズメ(ウズ婆)が裸踊りで誘い出すというのが有名な天の磐戸神話です。

(この辺は『猿女のリレー』をぜひごらんください)

本来は弟のスサノオが暴れたことがひきこもりの原因ですが、

今回の「サナギ」では、ヒルコのことが原因になっています

 

二つ目は国譲りの神話です。

 

オオクニヌシ(出てきません)がおさめる地上の国がほしくなった天界の高天原のアマテラス(ヒルメ)は、

まず子のアメノオシホミミ(ミミオシ)を降臨軍の大将として派遣しようとしますが、

臆病なオシホミミは怖がって断ります。

次にアメノホヒ(ホヒ)を派遣しますが、地上の国に魅せられてしまって帰ってこない。

次にアメノワカヒコ(ワカ)を派遣しますが、地上の国のオオクニヌシの娘に惚れてこれまた帰ってこない。

次にタケミカヅチ(タケミ)を派遣して、その圧倒的武力によってようやく地上を制圧します。

(この時、降参したオオクニヌシが交換条件として建てさせたのが出雲大社)

 

結局満を持して地上の王として降臨するのはオシホミミの子のニニギ(ナギ)です。

このニニギ(ナギ)の天孫降臨行列にアメノウズメ(ウズ婆)も同行します。

 

三つめはサルタヒコの物語です。

 

ニニギ(ナギ)の天孫降臨の一行を地上国の境界で待ち受けていたのがサルタヒコ。

(この「サナギ」ではいろんな人がサルタヒコとみなされます)

初めは内へ一歩も通さない態度でしたが、

ウズメ(ウズ婆)とのにらみ合い(にらめっこ対決)で負けを認め、ニニギ(ナギ)の道案内となります。

それが縁でウズメとサルタヒコは後日一緒に伊勢の国(三重県)で暮らすことに。(夫婦になった説も)

しかしサルタヒコは海でヒラフ貝(ヒラフ)に手を噛まれて溺れ死にます。

一方その後、ウズメ(ウズ婆)は伊勢湾の海の生き物を集めてニニギへの忠誠を声にして誓わせ、何も言わなかったナマコ(ナマコ)の口を切り裂きます。

 

さらに、これは「古事記」ではない逸話ですが、

「出雲風土記」に、このサルタヒコ(佐多大神)の母がキサガイヒメ(キサガイさん)であって、加賀の潜戸(くけど)にて、金の弓矢を拾って出産したという逸話があります。

このキサガイヒメは「古事記」にも出てきて、若き日のオオクニヌシ(出てきません)が、兄の奸計により一度殺された時にどこからともなく現れ、貝の粉の薬を塗って生き返らせた姫です。この時にもう一人同じようなペアの姫がいて、その名をウムギヒメと言います。(劇中海女の装束をしている衆を台本ではウムギ衆と呼んでいます。劇中名前は出ませんが。)

この逸話は『クママーク』にちょっとだけ出てきます。

 

ざっとこんな感じで古典からの引用があります。

パンフにも書かれてないので、

そして役者もあんまり知らないと思うので、

気になる方に向けて、

ここに書いてみました。

 

残りのステージ、座・高円寺でお待ちしております。

そして久しぶりの札幌、マイホームタウン大和郡山、お楽しみに。

21日昼夜は生配信もあります。

9月6日からはあらためて見逃し配信もあります。