自動販売機がどんどん減っている?理由は値上げや維持費高騰だけじゃない?

 

 

自動販売機の台数が年々減少している現象は、現代日本の転換期を象徴するものとなっている。ピーク時の2013年には全国で約247万台もの飲料自販機が稼働していたが、2024年には204万台まで減少し、毎年5万台規模でジワジワと姿を消し続けている。この減少傾向は飲料だけにとどまらず、たばこ自販機や一部食品自販機も含めて見受けられる。​

 

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自動販売機が減る主な理由に「値上げ」と「維持費の高騰」が挙げられることが多いが、その背後にはより本質的かつ多面的な構造変化が働いている。まず最大の要因は「人手不足」が深刻化していることだ。自販機は一見無人運用のようでありながら、商品補充、売上金回収、故障修理、衛生管理など多岐にわたる人的作業が不可欠となる。

 

全国各地を巡回して保守・補充する作業員の高齢化や人手の確保難が顕著になり、その管理コストは運送業界の人件費高騰や燃料価格の上昇とも相まって急激に増大し、採算の取れない機種が次々と撤去されている。​

 

次に価格競争の激化がある。スーパーやドラッグストアで売られるペットボトル飲料は100円前後が主流なのに対し、自販機では150〜200円が当たり前。さらにはコンビニでも淹れたてコーヒーが手軽な価格で手に入る時代となり、「わざわざ高額な自販機で買う必要性」が消費者にとって大きく薄れている。価格にシビアな消費者心理と、低価格小売業態の拡大による相対的な利用減が、自販機という販路の“割高感”を一層際立たせている。​

 

加えて「立地価値の陳腐化」も大きな要因だ。かつては「近くに店がないから自販機で買う」という場面が多かったものの、90年代以降コンビニが急速に全国展開し、24時間営業の利便性を武器に人々の日常の“買い物拠点”を担うようになった。

 

その結果、駅前・幹線道路沿い・住宅地など、かつて自販機が活躍していた場所も「わざわざ自販機が必要な理由」が年々希薄になった。市場の過飽和と立地競争の激化が導入・維持コストの割に合わない赤字案件を増やし、結果として採算割れ機種が撤去されている。​

 

環境面からも逆風が吹いている。電力料金の高騰は、夜間照明、冷却システム、常時稼働の負担など運用コストを押し上げ、特にエネルギー効率の悪い旧式機種については電力消費量が重くのしかかる。近年はCO₂排出削減の社会的要請も強まっており、自治体レベルで電力節約や温室効果ガスの抑制を求められる場面も増えている。

 

一方、最新型のエコ自販機やIoT連携・AI運用型など省エネ対応や業務効率化が進む機種は残存・一部増加傾向にあるが、全体として昔の台数には遠く及ばない現実がある。​

 

人口動態の変化も影響している。過疎化が進行する地域では単純に利用者が減少し、売上金は維持管理コストを下回るようになる。また都市部でもオフィスや学校、公共施設の利用形態が大きく変化し、リモートワークやコロナ禍の人流変化を受けて自販機の販売ボリュームが激減した。​

 

規制強化や消費スタイルの変化も撤去を加速させている。例えばタバコ自販機の減少は健康規制・販売資格厳格化の影響が大きく、過去の震災や出荷制限なども一時的な台数減少に拍車をかけている。さらに自販機による販売自体よりも“サブスク”型・キャッシュレス型の新しい買い物体験が浸透しつつあり、スマホ決済やQR決済対応、無人店舗型など、デジタル化に遅れた古い自販機は淘汰が進んでいる。​

 

端的に言えば、自動販売機が減少する理由は「維持費や値上げ」以上に、人的管理コストの高騰、価格競争の敗北、立地価値の変質、利用者人口の減少、環境負荷や規制、消費スタイルそのものの変容など、多層的な構造問題が複雑に絡み合い、もはや持続可能な"古いビジネス"ではなくなりつつあることに起因する。

 

今後はAIやIoT活用型、省エネ・高機能機種への集約、一部食品・アイス・冷凍食品自販機の拡充といった“選択と集中”が加速し、「誰でもいつでもどこでも自販機がある」時代は、静かに終わりを迎えつつあるのである。

 

 

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