ベトナムは仏教国。
キリスト教もイスラム教もいるが、大半が仏教を信仰している。
僧侶をはじめ、敬虔な仏教徒は皆菜食者で、動物性のものは食べない。
お寺で振る舞われる食事には、
それはそれは驚くほどクォリティの高いもどき料理が皿を並べる。
どう見ても豚バラにしか見えない角煮、
そして、それほど信仰心は厚くないけれど、
すこしでもご利益を、というプチ信者さんたちは、
毎月旧暦の1日と15日は菜食の日というならわしがあって、
毎日肉を貪っていても月に2日だけは野菜や豆腐などを食べる。
ベトナム料理に欠かせない魚醤ヌクマムももちろんNG。
街にひしめき合う麺の店、食堂、などが、
1日と15日だけは「精進料理の店」と看板がかわっていたりする、
その臨機応変さがまた面白い。
一度だけフォー屋さんが精進フォー屋さんになっていたので食べてみたら、
なんと口の中は日本ワールド。
干しシイタケの出汁に、大根、人参、厚揚げ、味付けは大豆でできた醤油だ。
懐かしいうどんの味がした。
日本語学校が入っていたビルに、小さな食堂ができたのだが、
職員しか食べないのでメニューは日替わりで選べず、
その日は旧暦の1日だったにもかかわらず魚がメインだった日があった。
ハーさんという事務の女の子が「徳を積まなきゃ」と言って
ただただ白ごはんに唐辛子を潰して混ぜた醤油をかけながら食べていたのが印象的だった。
先述のもどき料理、お坊さんたちも肉とか食べたいのかなー
と違和感を感じていたのだけど、
それはお寺からこのような普段は肉食のプチ信者さんへの配慮なのだそうだ。
あ、肉が食べたいお坊さんもいた。
タイからの留学生のお坊さんがいた。
私より10歳ほど年上だったが、
「家族の徳を積むためにと、5人兄弟の中で自分が出家するよう選ばれた。
最悪なんだ、今日も肉が食えないし、明日も肉が食えん」
といつもグチを言っていた彼はまだお坊さんをやっているのだろうか。