ベトナム語で「ありがとう」はcảm ơn カムオンという。

カムは感、オンは恩、恩を感じるという言葉。


「ありがとう」という言葉はすごく大切だし、

人間関係には潤滑油としてなくてはならないと感じていたため、

どんな小さなことでも「ありがとう」と伝えることにしていた。

「結婚するなら「ありがとう」と「ごめんなさい」が言える人を選ぼう」

みたいな記事を読んだこともある(笑)。

「ありがとう」という言葉を大切にしている人は多いのではないかと思う。

 

ところが。

ベトナムではいろいろ誰かに助けてもらったり教えてもらったりすることが多い。

よって、「カムオン」を言う機会も増えるのだが、、、

これが、ことごとくいやな顔をされ、ときには相手の怒りを買うことになった。

理由は「友達だろう?他人行儀はやめてくれ」ということ。

助けたり何かをしてあげるのは当然だ、だって友達だから、

だって親しみを感じているから、だって私とあなたの仲だから。

(それほど親密じゃなくても言われる)

そんな当たり前のことに「ありがとう」だなんて、

あなたは私と距離を置きたいの?といった具合だ。

なるほど、、、

同じ理由で「ごめんなさい、すみません」も言わない。

本当に申し訳なく詫びなければならないような場面では

「どうかわかってくれ、情をかけてくれ」と言う。
「情」というものを大切にしている人たちなんだなと。


郷に入れば郷に従え、ということで、

私も「ありがとう」をぐっと呑みこみ、

それくらいあたりまえだよねーって顔をして6年弱を過ごした。

 

そして、帰国してからが大変だった。

昔は反射的に口から出てきた「ありがとう」が出てこないのだ。

これはまた日本では大変なこと。

さらに些細なことで「ありがとう」と連発してくる

家族や友人にいらだちを覚える自分がいることに失笑する。

感覚を強制的に戻すのがなかなか大変だった。