知り合いの男性が60歳の定年を迎えた。彼の定年後の計画の中には、何年も前から音楽ライフが組み込まれていた。「定年後はよろしく」と、その頃から指導を頼まれていた。


彼の憧れの「エレクトーンのレッスン」がはじまった。最初だからエクトーンの説明をかねて、何か弾いてあげたいと思った。『茶色のこびん』『パリの空の下セーヌは流れる』の2曲を軽くアレンジして弾いた。『茶色のこびん』は、だんだんにメロディをくずしていった。『パリの空の下セーヌは流れる』のような曲、フランスのミュゼットは60歳代には人気がある。実は私も個人的に大好きであった。自動イントロと自動エンディングを教えて彼に押してもらった。ニコニコして楽しんで押してくれた。3曲目は『百万本のバラ』を弾きながら歌った。「もう、夢をみているようです」と彼の目はキラキラしていた。


「60歳の手習い」ですからと言い、でも楽譜は読めるようになりたいと言う。ヤマハのエレクトーン教則本「えれくとーんぎゃらりぃ」を使うことにした。彼の手は、60年間、生きてきた証のたくましい手だった。子どもに教える時はね、「指番号」をこうして教えているのよ、と言いながら私は自分の両手を合わせていた。親指どうしを合わせて、それから人差し指どうしを合わせて、「1の指、2の指」と歌った。どうして指に番号がついたのか、一緒に考えた。指は5本、鍵盤の数は多い。だから指は忙しいということになった。指番号があったほうが、きっと便利だと思うという。ふ~ん、なるほど、中々よい考えである。


次に、1の指から5の指まで「ドレミファソ」と一緒に弾いてみた。「ド」の位置を教えてからナチュラルポジションで弾いた。順番に弾いていくことが難しいようだ。どういうわけか、「ラ」で終わるのである。どこかの指が広がってしまうのである。

昔の手袋にあったなあ、親指とあとの4本の指が一つになった手袋。彼の指は、親指とその他の指というふうな反応で動いていた。


ゆっくりと「指ほぐし」から始めることにした。まず、「1」の指でドレミファソ、次に「2」の指で、そうして「5」の指までできたら、また「ドレミファソ」を5本の指で弾いてみた。「2」だけの指で弾くと上手く行く。そのまま足鍵盤も「ドレミファソ」と左足で弾いてみた。右利きらしく右足で弾きたいようすだった。右足を使うと交差するので弾きにくいし身体のバランスがとれないことを説明した。足鍵盤で弾くこと、これは嬉しそうだった。


彼がエレクトーンを好きだという理由は、音色が変わるということと足鍵盤を弾くということのようだった。これからが楽しみである。




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