久しぶりに映画の話。「あんのこと」を観てきました。
話題になっているのは知っていたので、もちろん期待して行きましたが…。いやぁ、すごい物を観てしまった。
主演の河合優実さんが素晴らしいです。
今年大ブレイクで、今最も注目の女優さんであるわけですが、本当に「杏ちゃん」がそこに存在しているようにしか見えない。ドキュメンタリーのような生々しさ。河合さんのほんのわずかなしぐさや口調で、杏ちゃんという少女の背景が透けて見えるというか。
あー、学校に行っていなかったんだなっていう感じとか。初めてこういう経験をしたんだな、って感じとか。圧倒的な説得力のある演技で、でもそれを感じさせない「さり気なさ」。本当にうまい。
脇を固める役者さんたちもすごく良い。
お母さん、おばあちゃんも、多くを説明することなく、わずかな演技で一瞬で状況をわからせる。素晴らしい。
そして脚本も素晴らしい。セリフの言い回しが、すごいリアリティを伴いながら存在している。
例えばオムツを買うシーンがあるんですが、ほんの短いセリフの中に、すごい細やかなニュアンスが表現できていて、すごくうまいです。あと、「ママ」っていう言葉の、たった2文字の放つ「逃げられない感」もすごい。
画面としても、みんなの記憶に新しい、コロナ禍の光景がすごく効果的で印象的。この映画のポスターに書かれている言葉、「彼女は、きっと、あなたのそばにいた」という言葉が、本当に胸に迫ります。
あーあの日、私が高揚する気持ちでブルーインパルスを見ていたあの日、杏ちゃんが何を考えていたのか。リアリティを持って観客に訴えることに、成功しています。
上映館があんまり多くないのが不思議。
公開から結構経っていますけど、お近くで上映されていたら是非ぜひ観て欲しい。おススメしたい映画です。