3 会計業務に関する被告本部の義務

  (1) 本部の受託する会計業務の性質-準委任契約の受託者たる地位

    本部は受託者として,各加盟店に対して,簿記・会計業務,すなわち加盟店の日々の帳簿作成や帳票類の保管(契約書第○条・第○条),引出金や配分金の支払(契約書第○条)といった,加盟店の簿記・会計業務全般を行なう義務がある。

    すなわち,簿記・会計業務に関していえば,加盟店が委託(委任)者であり,本部が受託(受任)者の関係に立つものであり(委任契約ないし準委任契約),これは個人店主と税理士との関係と同様のものとして捉えることができる。そして委託の対価としての報酬は極めて高額な本部チャージ、フィーなどの表現(原告は5年間の経営で既に約○○○○万円を支払った。)に含まれるものとして加盟店から支払われているのであるから,かかる簿記・会計業務サービスは双務有償契約に他ならない。

  (2) 受任者の報告義務

    本部は加盟店に対して,上記に示したように簿記・会計業務に関して,善管注意義務をもって(民法644条),基本契約書記載の義務を履行しなければならないが,受任者としての報告義務(民法645条)に基づき,加盟店が求めればいつでもその委任事務の状況について詳細を報告すべき義務がある。

  (3) 受任者の受取物引渡義務

    本部は受任者として,簿記・会計業務にかかる委任事務を処理するに当たり,受け取った物を委任者に引渡す義務を有している(民法646条)。仕入先業者が発行している請求書は,前述したとおり,売買契約が本部とではなく各加盟店との間で締結されているものである以上,宛先は各加盟店となっている。したがって,請求書が本部に一括して送付されているとしても,それは本部が優越的地位を利用して違法にシステムを構築した結果にすぎず,本来必要な各加盟店への交付を省略する理由とはならない。請求書は本部が委任事務の遂行に当たって受領した物であり,加盟店のために任意に保管しているものといえる。

    したがって,被告は原告に対して,原告が要求した,各仕入先からの各請求書を引渡すべき法律上の義務を負っている。

 4 会計にかかる報告や帳票提出の必要性

  (1) 会計主体と簿記・会計代行業務

    原告の店舗は,原告が個人事業主として経営するものであるから,経営・会計・納税等の主体はいうまでもなく原告である。(厳密には,酒類を販売するため免許を有する法人が共同フランチャイジーとなり,かつ加盟店がその代表者を兼ねている場合が多いが,その場合においても全く同様の議論となる。)被告は簿記・会計業務について原告から委任を受けて,有償でこれを代行しているにすぎない。委任者たる原告は必要に応じて,被告に代行させている簿記・会計業務の内容の正確性を精査し,疑義があればそれに関する報告を求め,裏付けとなる請求書・領収書等の帳票類の提出を求めるのは委任契約の性質上当然のことといえる。例えば個人事業主が,日々の記帳や請求書・領収書の整理,会計や申告書作成等を税理士に任せきりにしているとしても,何か気になることがあれば問い合わせるであろうし,疑問があれば帳票類や帳簿類の一切を提出させるであろうし,万が一不正が発覚すれば直ちにクビにして,損害賠償を請求するであろう。

本件において状況は全く同様であり,原告は被告に繰り返し,各仕入業者の請求書を開示すること及び被告がいつどのように支払代行を履行したのか報告することを求めてきたが,被告はこれに全く応じなかった。

(2) 請求書等が税務上も必要であること

被告の簿記・会計サービス提供義務

契約書第○条では,「甲は乙の経営を把握するため,甲の費用負担で,乙の経営に関する損益計算明細書・貸借対照明細書等(この契約において帳票記録といいます。)を作成し,保持します。但し,帳票記録の基礎となる売上高は,レジスター登録によって作成します。」とされ,同条○項では,「甲は帳票記録に反映されている範囲で,○○○店の経営に係わる納税申告のため情報・資料を提供し,協力します。」とされている。

このように,被告は,加盟店の「納税申告」のための情報・資料を提供し,協力する義務を有するが,ここで被告が作成すべき帳票記録とは,青色申告(所得税法143条)の要件を満たす帳票記録を予定しているはずである。なぜなら加盟店の「納税申告」を前提とするならば,青色申告の場合,一定の帳簿を備え付けることを条件に,例えば純損失の繰越控除(同法第70条)をはじめとした様々な特典を享受できるからである。

被告の加盟店に対する帳票作成義務は,当然ながらこの青色申告を行うに必要な程度のものとして考える必要がある。コンビニフランチャイズ契約は非典型契約であって複合的な性質を有しているが,少なくとも本部が加盟店に対して負っている当該簿記・会計サービスは,加盟店を委任者とする準委任契約として把握する他はあるまい。そして,被告の加盟店に対する当該義務は,加盟店から受領する高額なロイヤルティの対価として行う以上,有償双務契約である。

   ② 青色申告における帳票類の必要性

     所得税法には申告に必要な帳票類として「請求書等」を保存するという明文の規定はない。しかし,これは保存しなくてもよいということではなく,一般に請求書・領収書の類は伝票とともに保存するのが簿記会計処理上の常識であり,当然のこととされていて規定するまでもないと考えられているものである。

     請求書や領収書がなければ,税務署による税務調査において,仕入れや支出を否認されるおそれがあることは,事業を営む者であれば誰でも当然知っていることである。

     そして,仕入先からの請求書は全て被告が所持しており,また,仕入先にいつ・いくら払ったのかという情報は被告しか知らないのであるから,被告が加盟店に対して,青色申告に必要なものとして請求書を引渡し,決済代行の詳細を報告する義務があることは当然である。

   ③ 消費税法の規定

     消費税法は,仕入税額控除(消費税法30条1項)の要件として,課税仕入の事実を記載した帳簿及び相手方から受領した「請求書等」のいずれも保存することを求めている(同法30条7項)。

     仕入先からの請求書を受領して保存しないと,加盟店は仕入税額控除の要件を満たしていないことになる。

     したがって,仕入先からの請求書は必要不可欠であり,これを所持している被告は,原告らにこれを引渡す義務がある。

   ④ 小括

     税法及び税務申告の必要上,各仕入先業者等が発行する請求書の保存及び支払日・支払金額の特定は必須であり,原告らは,被告からその交付ないし報告を受ける必要がある。

なお,被告が原告に提出している仕入リスト等はあくまで本部作成のものであり,原告は,本来の各仕入業者等発行の請求書・領収証を持ち合わせていない。そのため,原告は,仕入リスト等に記載された数字が,実際の仕入原価・リベート(割戻金)と合致しているのかどうかを検証できない状況下にある。

かかる状況下において,原告は,「被告がその優越的地位を利用して,原告に対して不当に金額を上乗せして金銭を請求したり,原告に対してリベートを支払わなかったりするのではないか」等の疑いを持っており,原告は,請求の趣旨に記載の書類の精査が必要と考えている。

4 同種の請求事件に関する最高裁の判決について

   平成20年7月4日のセブンイレブン本部会社を被告とする同様・同種の問題について判決が出されましたので、判決文を転記したものと同日の報道機関記事を証拠資料として提出します。

 6 まとめ

   よって原告は,請求の趣旨記載の判決を求めるものである。

以上


証 拠 方 法

1 甲第1号証  (コンビニ名)契約書

付 属 書 類

1 甲第1号証(写し)   1通

2 商業登記簿謄本     1通

3 最高裁判決文転記    1通