前回に続き、昏睡状態に関する貴重な経験が書かれた本を紹介します。
二冊目は、「昏睡Days」
22歳の時にくも膜下出血で昏睡状態になった著者の有田直子さんは、搬送時の臨床的重症度が最重度の状態から、徐々に意識が回復し、昏睡状態のときの記憶を持ったまま戻ってこられました。
有田さんは、この経験を伝えなければという思いで、記憶を書き留め、後に当時のカルテや看護記録と、お母様が残していた記録とを照らし合わせながら、意識がなかった時のことを調べました。
この本のすごいところは、昏睡状態にいる有田さんご本人の体験と、その時のご家族や医療者の体験が、時系列に異なる視点から並べて書かれているところです。
有田さんは緊急搬送され、大きな手術や難しい治療を奇跡的に乗り越えていきます。ご両親は、命を取りとめた娘の将来を思い、身を切られるような日々を過ごされている様子が綴られています。
一方で、有田さんは昏睡状態にいる間、夢のようなものをみていて、そこで学校やバイトに行ったりという生活を普通に送っていたそうです。それまでと何も変わらない。どちらかというと、それまでより身体の調子も良いくらい。その世界を色で例えるなら、ピンク。季節で表すなら春のようなとてもゆったりとした、穏やかで、暖かい世界だったそうです。
徐々に意識が回復していく過程では、私たちがいる現実と、有田さんがみていた夢の中での現実が、少しずつ重なり合っていく様子がとてもよくわかります。
意識がないと言われるような人が、実は、夢をみるように、私たちの現実とは違っていても、ある世界で確かに生きている、というご本人の体験談は、とても貴重なものです。
有田さんは、この本の中で、昏睡状態にいる方のご家族やお友達に向けて、こんなメッセージを書いています。
いつ、あなたの身近な人が、意識不明に落ち入るかわかりません。そんな時、意識のない世界は、決して暗く、辛い世界ではないことを、思い出してください。電話が鳴ることが、心臓が止まるような出来事となります。そんなご家族に、この本を、差し出していただき、一人でも多くの方に、希望を持っていただくことに繋がれば、こんなに嬉しいことはありません。それまで通り、話しかけてあげてください。それは必ず、その人へ届いています。脳卒中と言う病気は、突然起こり、突然大切な人が、帰らぬ人になってしまうことのある病気です。私は、意識をなくす時、「寝た」と思いました。あのまま目覚めることがなかったら、私は眠ったと思ったままだったと思います。意識を失う瞬間は、眠りにつくのと変わらない穏やかさでした。
有田さんは昏睡状態から戻ってきて、ご自身の生き方について振り返っています。
有田さんは幼少の頃から、何もない「空っぽの日」を守り続けていたと言います。
「転ぶようなことが会った時、色んなものを持っていたら、思い切り両手を付くことが出来ない。いつくるかもしれないその時のために私は、両手をいつも思い切り広げられる状態にしていました。掴みたいものを掴まないということを引き換えに。そしてくも膜下出血で倒れて、「これだったのか」そう思いました」
くも膜下出血を経験された後、「それから私は、やっと掴むということが出来るようになり、そのことばかりやってきたように思います」と仰っています。
私はこの本を読んだとき、興奮と感動でいっぱいになりました。
コーマワーカーとしても勇気づけらる思いがしました。
有田さんにお会いして、いろんなお話を聞いてみたかった。
この本を残してくださったことに本当に感謝しています。
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