競輪選手の奥さんはジムの経理などを担当していたらしい。現場にはあまり顔を出さない人だった。


その奥さんが現場に顔を出すほどの


夫の異変を感じたのは女の勘なのか

はたまた誰かのタレコミなのか。







最初に私が異変を感じたのは

ジムのみんなとバーベキューをした時だ。


その時代やたらとバーベキュー。


人が集まればバーベキュー。



テントを張り本格的なバーベキューをした。

酒酔い運転も普通にされていた時代。


ハーレーダビットソンに2ケツしてビール買い足しに行くような出鱈目な時代。



大酒飲みの

競輪選手はしこたま酒を飲みテントの中で眠ってしまった。


私はその寝顔を見て



「大仏様みたい」


と呟いた。似ているのだ。額の真ん中にほくろがある。目を閉じていると仏様にそっくり。



すると横にいた不倫相手が


「ね、そうよね!大仏様みたいよね。いつもそう思ってた」


嬉しそうに言ってきた。


ん?


ん?


いつも寝顔を見てるの?



チューもしたことがない

ウブな私は変に勘ぐりもせず


男女の何たらも知らず相槌をうって

ニコニコしていたなあ。



今思えば不倫大暴露だよ。失言てやつ。

一瞬不倫相手は慌てたようだが私の無知さに安心したようだった。



他に聞いていた人がいたに違いない。



ジムに戻ろう。




不倫相手のストレッチサポートをする奥さんの顔は鬼のようだった。


元々小柄で浅黒い肌。引き締まった身体。

目鼻立ちもハッキリしている。



不倫相手は色白で背が高い。

カッチカチに固まっていた。

周りは息を呑んで見守ってる。


奥さんは覚悟の上来たのだ。

それに対して不倫相手はいつものようにラブラブストレッチのつもりで来たと思う。


公開処刑。





参ったなあ。


私、競輪選手にとても可愛がられていたのだ。


ロードバイク買いに行くにも練習にも付き合ってもらっていた。


どうすればいいのか全くわからなかった。


そういうのが嫌になって

他のジムに移籍した。