コマオと嫁はあてもなく西宮ガーデンズをぷらぷらしていた。
駅前にあるカフェで昼食を済ませていたので、本当にすることがなかった。
ガーデンズには四階に庭園があり、そこではさまざまな催し物がある。
コマオらが何気なくイベントの案内を見ていると、背の低い、少し痩せた初老の男性が話しかけてきた。
「今日は演歌や。自分らこの人知らんやろ?」
「知りませんわ。有名ですか?」
コマオが笑顔でもって返事をしたので初老の男性に火がついてしまった。
「今日は少ないけどな、ベッキーの時はもっと多かった。ベッキーすごかったわ」
「あぁ、ベッキー来てましたね」
「ベッキーの時、おった?」
「や、僕はベッキーの時は来てないんですけどね」
「そうか、でも、ベッキーすごかったで。自分らよう似てるけど兄妹か?」
「や、ちゃいますちゃいます。夫婦です」
「ホンマか。えぇ。えらいよう似てるわ。逆やったらあるけど、そうか、夫婦か」
「逆って何ですか?」
「いやいや、かわいいなー言うて聞いたら実は兄妹です言うた子らはおったけどな。兄妹かて聞いて夫婦はなかったわ」
「そうすか。ほなまた…」
「自分ら学生?」
「いえ、もうすぐ30ですよ」
「ホンマか。若いように見えるわ。男前やし、嫁さんは将来美人になる。」
「ありがとうございます。ほなまた…」
「和服が似合うやろなぁ。学生料金でもいけるんちゃうかなぁ」
「や、ありがとうございます。ほなまた…」
「うん、ありがとう。いろいろしゃべってもうて。ほなな。」
初老の男性は終始にこにこしていた。
コマオは悪い気はしなかったが、嫁は少し引いていた。
嫁が引き気味だったのでコマオは、あの人はもしかしたら暇をもてあました神様が人間の姿を借りて話しかけてきたのかもしれないと妄想を言う。
妄想を聞いた嫁は少し安心したのかにこにこしていた。