コマオは強制参加の慰安旅行のため、バスに揺られている。
車窓からはみかん畑がちらほら見え、雨がぱらついてきた。
イヤホンからはマイケルが適当なヴォリュームで「パオ!」とか「フォー!」とか歌っている。
バスは南紀白浜を目指す。
昨年同様、この強制参加の慰安旅行では宴会がコマオの前に立ちはだかる。
コマオは宴会が苦手だ。
試験など、諸々の事情により白浜しか選択の余地はなかった。
人生何度目かの白浜である。
サファリはもういい。
パンダよりもレッサーパンダの方が好きだ。
3日まで続く旅行期間、コマオはする事がない。
もう一冊文庫本を持ってくればよかったと、早くも後悔してきた。
コマオにはやるべき事がたくさんある。
式の前撮りにむけて髪を整える必要がある。
パスポートの申請もしなければならない。
映画『風が強く吹いている』の鑑賞は必須である。
「旅行などなければ全部片付くのに!」
それでもコマオはバスに揺られている。