愛すべきクラブの敗戦を引きずるコマオは心の隅っこがモヤモヤとしている。
このままではよろしくない。
悪いことは全て愛すべきクラブのせいにして、自ら責任を取る行為から逃れてしまいそうだ。
コマオは髪の毛が伸びすぎていることに気付いていた。
行きつけの美容院はご丁寧に次回の利用予定日を会員カードに示している。
それによると、予定日より1週間以上が経過していた。
昨日と合わせ、連休をいただいていたコマオは本日予定がない。
なぜなら、相方が職場の連中と大阪へ出かけるからだ。
休みの日に相方のいなくなったコマオはまるで迷子である。
することもないので掃除、洗濯をし、することもないので美容院を予約し、することもないのでクローゼットを片付けた。
それでも時間が余るあたり、コマオは少し寂しさを感じてしまう。
美容院には予約した13時よりも少し前に到着した。
店長に席へ案内され、コマオは久しぶりに古嶋と再会を果たす。
この古嶋と言うプチおデブさん、なかなか腕がいい。
コマオはこれまでの短い人生の中で、いろいろな美容院を訪ねていた。
しかし、一度として担当者を指名してまでカットを依頼したことはない。
「プロなんだから、誰が切っても同じにできるでしょ?」
時としてコマオは人々を挑発する。
が、コマオは今の寝床に住居を移し、今の美容院を行き着けにし、古嶋というプチおデブさんに調髪を委ねている。
古嶋は腕だけでなく、雰囲気もいいからだ。
古嶋 「暑くなってきましたねぇ」
コマオ「急に30℃とかねぇ」
古嶋 「またムシムシするでしょ」
コマオ「いやっスねぇ」
それ以外に、古嶋と交わした会話はカット前の調整の依頼とカット後の挨拶程度である。
あとは黙っていれば古嶋が髪を切ってくれるので、コマオは本当に楽チンである。
無理矢理に知りもしない、興味もない話題を振られても、コマオは対応に困って居心地が悪くなる。
古嶋はそんなコマオを知ってか知らずか、本業のカットにとても集中してくれる。
約40分の作業を終え、コマオは美容院を後にした。
頭が軽くなり、明日からの仕事にも、冬まで続くシーズンにも目をそらさない気分でいる。