※このお話は現在更新中の「比翼の鳥」とは別系列のお話です。

ヨンとウンスが夫婦になっている未来設定です。

 

 

 

「それでは脈を測らせていただきますね」

ウンスは王妃の細い腕を取って手首に指を当てると目を閉じてその脈を測る。
王妃の少し後ろにはチェ尚宮が立ち、それを見守っている。
しばしの沈黙の後に脈診が終わり、ウンスが目を開ける。

「今日もお変わりなく、とっても健康な脈ですよ」

ウンスの言葉に王妃は安心したように笑みを浮かべたが、その顔はすぐに気遣わしげな表情に変わる。

「医仙はどこかお体の具合でも……? 少し目が赤いようですし、それに声も……」
「え?あ、えっと……」

ちょっと寝不足で、とウンスは曖昧な笑みを浮かべた。
それを見ていたチェ尚宮は一瞬顔をしかめたが、すぐに表情を戻した。

 

少しの雑談を経て、ウンスは王妃の部屋を退室する。

そこで後を追ってきたチェ尚宮から声がかけられた。

「叔母様、どうかされました?」
「うむ。あのな……」

いつもはっきりきっぱりと物申すチェ尚宮には珍しい歯切れの悪さにウンスは?マークを浮かべる。

「叔母様?」
「少しは自重しろ」
「え?」
「寝不足の原因だ」
「え……えっ!!?」
「馬鹿者!声が大きい」
「す、すみません。でもどうして」
「首筋の……見えておる」
「やだっ……」

ウンスは慌てて首筋を抑えて、ほんのりと頬を染めた。
 
先ほどの王妃の診察中に身動きするウンスの襟元からたまたま見えた赤い痕。
恐らく王妃は気付いていないだろうが、チェ尚宮の位置からはばっちり見えていた。
まったく、とチェ尚宮は呆れた。

「あ奴には何度も言うておるのだ」
「え?」
「大護軍という役職を賜っておるというのに、嫁をもらってからというもの締まらぬ顔ばかりしておって。いいか、ウンスや。あの阿呆が無理をさせるようなら、お主からきっぱりと断るのだぞ」
「……はい」

チェ尚宮はそう言って、王妃の部屋へ戻っていった。

もうっ!
恥ずかしいじゃないっ!!
ヨンのバカ!

とウンスは赤くした顔のまま、心の中で首筋に痕をつけた男に悪態をついた。




その日の夜。
ウンスは寝台の上で横になり、チェ尚宮から言われたことを考えていた。

断れって言われてもねぇ。
嫌じゃないんだもの。
あの人と……そういうことするのは。

愛されていると実感できるから。
もちろん、肌を重ねなくても日頃からすっごく大事にしてもらっているし、十分愛されていると感じているけれど。
でも抱かれてる時はもっとこう……態度に出るの。
全身から伝わってくる。
あの人が私を求めてくれてるって。
それが幸せでたまらない。

でも、叔母様の言いたいこともわかる。
毎回意識を失くすまでっていうのは流石に、ねぇ?

あの人の体力に付き合ってたら身が持たないのはわかってはいるんだけど。

あの人に応えてあげたいと思っちゃうのよね。

それに一度触れられると止まらなくて、最後には自分から求めてるような気がする。


そこでふと前に友人たちが話していたことを思い出した。
彼氏や夫の前で気持ちいいふりをしたり、感じてるふりをすることがあるって。
その時は聞き流してたけど、そんなことある?って疑問に思うくらい私ったら毎回毎回……
ヨンの眼差し息遣いや指先、熱を思い出して、ウンスは一人顔を赤らめた。
けど、私が毎回そうなっちゃうのはそれだけあの人が上手ってことよね。
比較対象がないからわからないけど。
そうよ。私は初めてだったけどあの人はそこそこ経験があるはず。
あんなにカッコいいんだもの、そういうことに困ったことはなさそうよね。
黙っていても女の方から寄ってきそうだもの。
それに許嫁もいたんだし。
許嫁……か。
どんな人だったのかな?
その人のことも私と同じように……。

そんなことを考えて、胸の奥がずきんと痛んだ。

 

そこへ湯浴みを終えたヨンがやってきた。
寝台に入り、横になっていたウンスを優しく抱きしめてくれる。
それから唇を重ね合わせて。

「ん……」

この人はキスも上手よね。
ずっとしていたいって思うくらいすごく気持ち良い。

いつもだったら、そこから夜が始まっていくのだが……

「何かあったのか?」

心ここにあらずなウンスの気配を感じ取ったヨンは身を離してウンスに尋ねた。

 

「……」

 

ウンスは上体を起こしてヨンの顔をじっと見つめた。
心のモヤモヤの原因はわかってる。

が、それを面と向かって聞くのはなんとなく憚られてウンスは本心とは別の言葉を口にした。

「今日ね、叔母様から自重しろって言われたわ」
「……それで?」

何を?と聞かないあたり、心当たりはあるようだ。

「それで?って、そのせいで今日はすっごく恥ずかしい思いをしたのよ」
「我ら夫婦のことだ。叔母上にとやかく言われる筋合いはない」
「それは、そうかもしれないけど。叔母様が、貴方が無理をさせるようなら私から断れって」
「だから嫌だと?」

ウンスは首を横に振る。

「あなたに抱かれるのは嫌じゃないわ」
「ならば」
「でも毎回気を失うくらいって流石にどうなのかしら?」

「……」

「それに、ふと思ったの。私がそうやっておかしくなっちゃうのはあなたが上手いからなんじゃないかって。そしたらね、気になっちゃって」
「何が?」
「あなたが、その……どれくらい経験があるのかな?って」
「……」
「そりゃあ男の人だし、そういう欲があることはわかってるわ。男の人は心と体は別だっていうし。生理現象だってことは理解してる。それにその容姿でしょ?女の人からすごくモテたと思うの。だからそういう経験は豊富なのかな?って。その人たちも私みたいに抱いたのかな?って。そう思ったら私……」

ヨンの顔をまともに見ることができなくなったウンスは俯き、そのまま押し黙った。

 

 

後編へ続く

 

 

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***

 

ひねりのないタイトルですみません(^^;)

カッコいいタイトルをつけようかとも思ったのですが、後から見返した時にこの話何の話?ってなるよりかは良いかなと思いまして(←言い訳)

 

本編の方で行き詰ったので、先走って夫婦設定の二人のお話しを更新(笑)

タイトルからわかるように、ウンスさんがヨンの過去(の女性経験)を気にするお話し。

何番煎じかわからぬ上、後半にいけばいくほどありきありだなぁと自分でも思いますが

少しでも楽しんでいただければ幸いです(*'ω'*)

王道ものは書いてて楽しいというか筆が進みましたw