一日の役目を終えたヨンはウンスを迎えに典医寺へ向っていた。
その時、ヨンの頭上を何かが横切った。
咄嗟にそれを避けて物体が飛んで行った方を見遣ると少ししてからコロンコロンと小石が転がる音が聞こえてくる。
誰だ、と振り返るとそこには叔母であるチェ尚宮の姿があった。
「叔母上」
「なんだ、その腑抜けた面は」
そんな顔をしているか?と内心思いつつ、早くウンスの元へ向かいたいヨンは「何用だ?」とそっけなく尋ねた。
「お前たちの婚儀の日取りが決まったゆえこうして参ったというのに、何だその態度は」
その言葉にヨンが目の色を変える。
「いつだ?」
「ひと月後だ。これが詳細な日時だ」
チェ尚宮は懐から文を取り出してヨンに渡した。
差出人は婚儀を行う寺の和尚からで、ヨンは文の内容にざっと目を通す。
「婚礼衣装やその他諸々準備することを考えるともう少し後の方が」
「わかった。ひと月後だな。これ以上は待てぬぞ」
ヨンはチェ尚宮の言葉を最後まで聞かず、食い気味に伝えた後、文を握り締め典医寺を目指した。
「まったく浮かれおって」
ヨンの後ろ姿に向かってチェ尚宮はぼやいた。
ウンスが待っていると思うと、ヨンの足取りは自然と早足になり、典医寺に着く頃には小走りになっていた。
典医寺に到着するとウンスは護衛の武閣氏たちと何やら話をしていた。
叔母に頼み、ウンスには以前のように武閣氏の護衛をつけてもらっていた。
テマンをつけたいところだが、別の用事を頼んだりすることもあり何時でも、というのは難しい。
迂達赤から護衛をつけることも考えたがトクマンはいまや副隊長の身、他の若い迂達赤をつけるのも心許ない、というのは建前で他の男を近づけたくないというのが本音だ。
妻となる女人の美しさと天真爛漫さに魅了され、懸想する男を増やすわけにはいかなぬ。そのような状況ではろくに任務もこなせまいし、何より自分の女人を他の男に任せるわけにはいかぬ。
ウンスに関しては狭量になることは自覚しているが、もはや性分ゆえ仕方がない。
手裏房という手もあったが毎回宮中に入れる訳にもいかず、結果的に武閣氏に護衛をしてもらうことになった。
ヨンに気づいたウンスは瞳を輝かせ、溢れんばかりの笑顔を見せた。
そんなウンスを見てヨンは頬が緩ませた。
滅多に見られない大護軍の穏やかな表情に、周囲にいた武閣氏や医員たちは驚きに目を瞠った。
だが、ウンスしか目に入っていない本人がそれに気づくことはなかった。
当の本人はというと。
己に笑顔を向け嬉しそうに駆け寄ってきたウンスを抱きしめたくなるのをぐっっっと堪えていた。
「もう帰れるの?」
「はい」
「じゃあチャン先生に挨拶してくるわね、ちょっと待ってて」
ウンスがチャン侍医に挨拶をしている間に、ヨンは武閣氏に任務の終了を告げ、二人は典医寺を後にした。
典医寺の外にはチュホンを引いたテマンが待機していた。
「テマンさん、お疲れさま」
「医仙様」
「テマン、今日はもう良い。ゆっくり休め」
「はい、大護軍」
ウンスをチュホンに乗せ、手綱をテマンから預かるとヨンもチュホンの背に跨る。
皇宮を出るとウンスは甘えるようにぽすんと背中をヨンに預けてきた。
そんなウンスに対しヨンは片手で手綱を操り、もう片方の腕をウンスのお腹に回してぎゅっと抱きしめ、うなじに顔を埋める。
大きく息を吸うとウンスの甘い香りが肺を満たす。
同時に気が満たされて心が安らいでいく。
「イムジャ」
「ん?」
「婚儀の日取りが決まりました」
「いつ?」
「ひと月後です」
「ひと月?もう少し時間がかかるのかと思ったわ」
「俺は一刻でも早く貴女を妻にしたいです」
「私だって同じ気持ちよ。でもひと月って意外とすぐよね。何を準備すれば良いのかしら。衣装は叔母様にお任せして大丈夫なのよね?」
「ええ」
「当日までの段取りとかも叔母様に確認しないといけないわよね。それから……披露宴!どんな形でやるのが良いかしら?招待客決めて、招待状も作らなきゃ」
「招待状、ですか?」
「そうよ。私たちの披露宴にぜひお越しくださいって。何枚必要かしら。叔母様は身内だから必要ないわよね。あとテマンさんも貴方の弟みたいなものだしいいわよね?となると迂赤達からはチュンソクさんにトクマンさんにチョモさん、テオさんにもお世話になったし、武閣氏のウォルさんやヨンシさんたち、あとトギとチャン先生も。それから裏手房の師叔さんにマンボ姐さん、シウルさんやチホさん……ざっとそれくらいかしら?」
やることがいっぱいだわ、と指を折りながら楽しそうに話をするウンスをヨンは優しい眼差しで見つめた。
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超久しぶりの本編の更新となりました(汗)
楽しみにしてくださっていた方は大変長らくお待たせしました。
自分でも話忘れちゃってて←
ざっと見返しましたがおかしなところがないか不安ですw
そして母がシンイ視聴3週目に入ったそうです(笑)
完全にシンイに落ちたな!
