入れ、という声にチュンソクは部屋に足を踏み入れた。
……どこか空気が、桃色?
いやいや、大護軍に限ってそのようなこと。
だが、いつも元気に挨拶してくださる医仙が大護軍の後ろに隠れたままなのが気になる。
そんなことを考えているとチェ・ヨンと目が合った。
その鋭い視線に今までの考えが一瞬にして吹き飛び、チュンソクは表情を引き締めた。
「此度はご婚儀の件、おめでとうございます」
するとチェ・ヨンの後ろにいた医仙がひょこっと顔を出して、ありがとう、チュンソクさんと、微笑んだ。
心なしか顔が赤い……?
気のせいか?
医仙の顔を窺っているとその前に立ちはだかるように大護軍が移動し、その姿は再び見えなくなった。
「王様に特に変わりはないか?」
「はい。健やかに過ごされているご様子」
「そうか。国境に残してきた兵たちの帰還時期はどれくらいになりそうだ?」
「報告によれば……」
ヨンがチュンソクと話しを始め、手持ち無沙汰になったウンスは改めて部屋の中を見渡した。
あの頃と何も変わっていない。
卓や椅子、寝台の位置も、衣装箱や文匣の場所も、壁に掛かっている弓を始めとした武器の類も。
それなのにこの世界では4年の月日が流れている。
ついこの間までここにいた気がするのに。
不思議な感じ。
ウンスは寝台へと歩み寄って、敷布の上に腰を下ろした。
そっと手のひらで敷布を撫でてみる。
あの人と一緒に眠った布団。
想いを確かめ合った後だし、ちょっとは覚悟したんだけどな。
結局、手を握って休んだだけだったわ。
毒のことがあったからと言っても、もうちょっとキスくらいあっても良かったんじゃない?
そう思ってヨンを見たら、どうやらチュンソクとの話しが終わったようだ。
チュンソクが部屋を出て行き、ヨンはウンスの方へ近づいてきた。
「どうしたのです?」
「この寝台で一緒に眠ったわよね?」
「…はい」
「手をつないで」
「ええ」
「それ以上のスキンシップはなかったわよね」
「すきん……」
「スキンシップ……触れ合いってこと。私たち恋い慕い合う仲だったのに、キス……接吻すらしてなかったわ」
いきなり何を言い出すのかと、ヨンは困惑した表情を見せた。
接吻とは少し違うが、毒で苦しむこの方に口移しで天界の薬を飲ませたことはある。
もちろんこの方は記憶にないだろうが。
「……以前にも申しましたが、イムジャは毒に苦しんでおられた。それに接吻などしたら……」
「したら?」
「止まらなくなる」
「え……」
「言ったはずです。俺も男だと。好いた女人と同衾して何の欲も抱かぬ男などおりません。どれほど俺が我慢していたのかイムジャにはわからぬのだ」
ふいっと顔を背け、少し不貞腐れたようにヨンは言った。
そんなヨンが猛烈に愛おしくてなってウンスはヨンの胸に飛び込んだ。
「そんな顔しないで。ちょっとあの頃を思い出しただけ。貴方がどれくらい我慢していたのか十分すぎるくらい身をもって実感しているわ」
毎晩激しすぎる愛に翻弄されて
求め求められ、愛し愛され
それが幸せで堪らないのよ
しばらくヨンに抱きついたままでいると、頭上からぽつりと呟きが落ちてきた。
「イムジャは」
「ん?」
「接吻やすきんしっぷとやらをして欲しかったのですか?」
「うーん、そうねえ。たまにはして欲しかったかな?」
「ならば」
「ちょっと待って!さっきも言ったけどね、今は十分……んっ」
唇を塞がれて、そこから先の言葉は紡げなかった。
ーー俺はまだまだ足りぬ
*
秋の穏やかな気候の中、心地よい風が二人を包む。
典医寺に向かって歩いていると思い出深い東屋が見えてきた。
ちょっと立ち寄っても良い?とヨンに確認してからウンスは東屋に方へと足を進めた。
「懐かしい~。覚えてる?ここ。私とあなたが初めてパートナーになった場所よ」
「はい」
お互いに隠し事をしない、そしてお互い守り合うと約束し握手を交わした。
その約束は二人の間で今でも有効だ。
「トルベさんとテマンさんに見られて、体面を気にして焦る貴方はおかしかったわ。別の方面からは叔母様が来て。ちょっと気まずかったわよね」
そうでしたね、とヨンはあの頃を思い出して口元に笑みを浮かべた。
「それから1日1回会う約束もしたわ。そして一人で戦いに行く貴方を見送った」
「はい」
イムジャの「いってらっしゃい」が何よりの力になりました。
簡単に命は懸けぬ。生きることが何よりも大事だとイムジャの言葉を胸に戦った。
「あっちの庭では短剣の使い方を教えてもらったわよね」
ウンスは東屋から見える中庭に目を向けた。
あの頃は、まだ帰りたい気持ちがあった。
だけどこの人のことも気になってて。
この人を、この場所を、目に焼き付けたら離れがたくなっちゃいそうで、無理やり見ない振りをしてた。
それでも心はこの人に惹かれていった。
だからあの時、すぐ後ろにこの人がいて、この人の体温や息遣いが伝わってきて。
握られた手や近すぎる距離にドキドキしちゃって剣の特訓どころじゃなかったわ。
「貴方に教わってからちょっとずつだけど練習したのよ」
「では今度腕試しをしましょう。イムジャのへっぴり腰が直っておるか楽しみです」
「何よそれ~!信じてないわね。いいわ、特訓の成果を見せてあげる!」
「期待してます」
もう、と今度はウンスが不貞腐れる番だった。
だがその表情はすぐに笑顔に変わる。
それから二人は思い出話に花を咲かせながら典医寺を目指した。
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また典医寺に辿り着けなかった(;´Д`)
もうちょっとペースをあげて進行したい・・・
ご心配をおかけしたPCですが、スクリーンキーボードというものを教えてもらい何とかログインできました~!
で、急いでデータのバックアップをとりました。いつ壊れるかわからないので。
これで一安心
でもタイピングに不便なのは未だに変わりなく。
外付けキーボードで頑張るか買い替えるか悩みどころです。
PC買い替えも視野に入れていろいろ調べてみたけど、今使ってるPCめっちゃ性能が良いことがわかりました(今さらw)
それなりのものを買おうとするとやっぱり高い(。-_-。)
