皇宮に到着すると二人は王のいる宣仁殿へ向かった。

ヨンとウンスが通り過ぎると宮中の女官や歩哨に立つ禁軍の者たちは三々五々に集まり、ひそひそと話を始めた。

大護軍が医仙との婚姻を王に願い出て、それを王が認めた。

その後、揃って姿を現した二人は娯楽が少ない宮中で注目の的だった。


ここ数年、王の元を離れ北方の地で戦をしていた大護軍が、故地奪還という功績と共に大層美しい女人を伴い凱旋した。同時にその女人との婚姻を申し出たという話はたちどころに宮中に広まった。


降るような縁談に全く見向きもしなかった大護軍の婚姻、という知らせは宮中に衝撃を与えた。
名門の家柄で、王様の覚えもめでたい、そして誰もが認める美丈夫。
どこの家の者を娶るか、重臣や高官の中には娘や孫娘をチェ・ヨンに嫁がせようとあれこれ画策をめぐらしている者も少なくなかった。そこへ突然の婚姻宣言。

その時の会議の場は荒れに荒れた、というのはその場にいた者の証言だ。

さらにはその女人が4年前から行方が知れなくなった医仙だということも騒ぎを助長している一因だった。
医仙と言えば優れた医術を持っており、今の王が元から高麗に帰還する折、刺客に首を切られて致命傷を負った王妃をその神技で治療し、深く切られた首も元通りにしてしまった。
そして優れた医術だけでなく、天の知識として先見ができた医仙は徳成府院君や王の叔父である徳興君にも目を付けられていた。

特に徳興君とは一時婚約までしており、その当時、迂達赤隊長だったチェ・ヨンが二人の婚約を阻止するため重臣らが見ている前で医仙に接吻したという逸話は当時から仕えている者たちの間で有名である。

 

迂達赤隊長と医仙は恋仲だったが、美しい医仙に懸想をした徳興君が王族と言う肩書を笠に着て医仙を強引に婚約者にし二人の仲を引き裂いた。けれども強い想いで結ばれていた二人はお互いを諦めることができず、王族の婚約者に手を出せば極刑は免れぬという中、医仙と徳興君の婚姻を阻むため、迂達赤隊長は衆人の前で医仙に接吻した、と多少の脚色はあるが当時の女官たちは二人の恋物語に興じていた。


そんな話題に事欠かない二人が共に帰還し、大護軍自ら王に婚姻を願い出た。
女官たちの噂話でしかなかった話は真実となり、今まで縁談に見向きもしなかったのは一途に医仙様を想っていたからだ、と二人の恋物語は宮中だけではなく今度は市井をも賑わせていた。

長身で端正な顔立ちをした大護軍と、透き通るような白い肌に天女と言われても納得する麗しい容姿を持ち、女人にしては高い背丈の医仙はとてもお似合いで。
二人が同じ色の衣を纏って、仲睦まじげに寄り添って歩く姿に、すれ違った女官や禁軍の若者たちは思わず振り返り、そしてほぉっと息をついた。

 

 

 


「ゆっくり休めたか?」
「はい、王様」

「そのようだな。実に清々しい顔をしておるぞ、大護軍」

 

揶揄いを含んだ王の言葉にどう返していいのかわからず、ヨンは咳払いをした。

そしてこれ以上揶揄われては堪らないとばかりに、今回の本題を切り出した。

 

「王様、お願いがあります」

「何だ?申してみよ」

「はい、医仙を典医寺の医員にしていただきたく」

「医仙はチェ・ヨンの夫人になるのであろう。なのに医員として働きたいと申すのか?」

 

王はウンスに視線を向けた。

 

「はい。医員として天医寺で働かせていただけませんか?もしダメなら王妃様の診察だけでもいいんです。お願いします」

 

そう言ってウンスは王様に向かって頭を下げた。

 

「チェ・ヨンはそれで良いのか?」

「はい。典医寺に居ってくれた方が安心できますゆえ」

「なるほど、一時も離れていたくはないということか」

「王様……」

「そう怖い顔をするな。チェ・ヨンが反対しておらぬなら、余が反対することもない。こちらとしても医仙がそばに居てくれるのはありがたい。王妃も心強かろう」
「ありがとうございます!王妃様のことは全力でサポート……じゃなかった、お支えします。でも、医員としては前みたいに道具があるわけじゃないので、できることは限られてしまうと思います」
「道具というのはこれのことか?」


王は後ろに控えていた内官のアン・ドチに合図を送った。するとアン・ドチは布に包まれたものを机に置いた。布を開くと、そこにはメスやクランプ等の医療器具があった。
 

「えっ!これって……?」
「執務室の書架の奥から出てきたのだ。恐らく徳興君が隠し持っていたものと思われる」
「それならきっとキ・チョルの師匠って人が持っていたものだと思うわ。一度見せられたことがあるの。でもその時見たのは錆びついていて、こんなに綺麗じゃなかったわ……」

 

なぜ?という視線をウンスは王に向けた。


「医仙が戻ってくるのであれば必要になると思うてな。鍛冶屋に頼んで研がせたのだ。どうだ?使えそうか?」
「はい!」


ウンスは嬉しかった。

自分を待っていてくれたのは、この人ばかりじゃなかった。

高麗にも自分の居場所がある。

戻ってきたよかった、と改めて思った。
 

それにこの道具があれば、行える医療の幅はぐっと広がる。
縫合手術だってできるし、簡単な開腹手術だってできる。

そうなれば麻酔薬や消毒薬、抗生剤が必要になるわね。

抗生剤は研究が必要かもしれないけど。

あと縫合用の糸も必要になる。何か代用できるものはあるだろうか?
ウンスは瞬時に頭の中でやるべきことが浮かべた。


「王妃から話を聞いておったのだ。医仙が典医寺で働きたいと申していると。ゆえに典医寺の侍医には話をつけておる。今の侍医が誰か聞いたら驚くぞ」
 

そう言って笑う王様を見て、二人は顔を見合わせた。

 

 

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***

 

今回は宮中の様子に焦点を当ててみました(笑)

書いてて楽しかったです(*´Д`)

はてさて新たな侍医とは?

またお付き合いくださいませ。