ーーイムジャ……

 

ん……

 

ーーイムジャ……

 

あの人の声が聞こえる

低くて優しい声

ひどく安心して

ずっと聴いていたい

でもまだ眠いの……

もう少し寝かせて……

 

ウンスはそう心の中で呟いて、すぐ隣にある温もりにぎゅっと抱きついた。

 

温かくて、気持ちいい……

 

再び深い眠りの淵に誘われそうになるウンスだが、ヨンの声がウンスを現実へと引き戻す。

 

「イムジャ、そろそろ起きねば。今日は皇宮に出仕する日です」

 

その声にウンスの意識は覚醒し始めた。

 

皇宮……?

そうだったわね。

昨日は叔母様が来て、今日は皇宮に行く日。

現代でも高麗でもゆっくり朝寝坊なんて、なかなかできないものなのね。

重い身体をどうにか動かして仰向けになったウンスは、ゆっくりとまぶたを開いた。

 

「お目覚めですか?」

 

声がした方に視線を向けると、そこにはいつも以上に穏やかな顔をしたあの人。

きっと貴方の部下が見たら驚くわね。

 
「早う起きて支度せねば、朝飯が食えなくなりますよ」

 

そう言ってヨンは寝台を抜け出した。

いきなり現れた逞しい裸体に、ウンスはぎょっとして、それからきゃっ!と小さく悲鳴をあげた。

 

「ちょっと……隠してよ」

「今さらではないか?」

「そ、そうだけど」

 

暗い閨の中と明るい日差しの中で見るのはまた別。

しっかり見えちゃったじゃないの、バカ。

 

顔を背けてもごもご言っているウンスを見ると、その頬と髪の隙間から覗く耳は赤く染まっていて。

昨夜は妖艶な姿で俺を惑わし、今は純粋無垢な少女のように恥ずかしがる。

まことに可愛らしいお方だ。俺の女人は。目が離せぬ。

ヨンは笑みが頬に宿るのを抑え切れなかった。

 

ヨンは素早く下衣を身に纏うと、未だに起きる気配のないウンスに声をかけた。

 

「早う支度を」

 

ウンスは気怠い身体をゆっくりと起こしてヨンを見た。

全身に疲労感が残るウンスとは違い、実にすっきり爽やかな様子だ。
同じぐらいの時間しか眠っていないはずなのに、どうして目の前にいるこの人は、こんなにも溌剌としているのだろう?
私が眠いのも、身体が重いのも、それもこれも、全部この人が悪いのに。

なんだか不公平だわ。

 
そんな恨めし気なウンスの視線にヨンは気づいたようで。

 

「何か?」

「私が朝からこんなにも疲れてるのは、一体誰のせいなのかしらね?」
 

唇を尖らせる様子があまりにも可愛らしくて再び口元がゆるむ。

我慢がきかず昨夜も少しばかり無理させてしまったのは申し訳なく思うが。


「悪いのは俺だけではないであろう?イムジャだって俺を、離さなかった」
「そ、そんなことっ……」
「反論は聞かぬぞ。なんなら、今からでも再現してみるか?」

「何バカなこと言ってるのよ!今日は王様に謁見しに行くんでしょ?遅れるわけにはいかないじゃない。着替えるから貴方は出てって」

 

ウンスは身体にシーツを巻きつけて、寝台から起き上がるとヨンの背中を押して二人の閨から締め出した。

 

バタンと音を立てて閉められた戸を背にヨンは溢れる笑みを抑えきれない。

 

会いたくても会えず、ただ待つ日々だった4年を思うと、あの方がそばにいるだけで十分だと思っていた。

それが今では腕に抱き、温もりを感じ、情を交わすことができる。

共に眠り、共に目を覚まし、たわい無い言葉を交わすことができる。

これを幸せと呼ばずして何を呼べばいいというのか。

 

 

 

 

「じゃーん!見て、あなたとお揃いの色よ」

 

身支度を終えたウンスが纏っていたのは、数日前に市場で買った藍色の衣だった。

どう?似合ってる?と聞きながら、ヨンの前でくるりと一回転して見せるウンスに、ヨンは「はい」と満足げに頷いた。

そんなヨンの反応にウンスも嬉しそうに笑って、二人で食卓につく。

朝から食欲旺盛なウンスを眺めながら、ヨンも朝食に箸を伸ばした。

 

朝食を済ませた二人は、チュホンに乗って皇宮へと向かう予定だ。

 

「チュホン、おはよう~」

 

既に待機していたヨンの愛馬チュホンにウンスが挨拶をする。

チュホンは嬉しそうに鼻先をウンスに擦り付けた。

ヨンは鐙を掴み、ウンスが足を入れやすいようにしてやると、ウンスは慣れた手つきでチュホンの背に乗った。

ウンスが乗ったことを確認すると、ヨンも軽々とウンスの後ろに跨る。

後から左右の腕が伸びてきて、手綱を握った。逞しい腕がウンスをその中に囲む。

 

じゃあ、行ってくるわね、と見送りのために出てきた使用人たちにウンスが声をかけた後、チュホンはゆっくり動き出した。

 

「ねえ、これからもチュホンに乗って出仕するの?」

「今は国の情勢が落ち着いておるが、いつ何が起きるかわからぬ。それに忙しくなれば帰れぬこともあるであろう。ゆえに馬車を用意しようと思います。イムジャを一人で帰すのは不安ゆえ」

「相変わらず心配性ね。でもできる限り一緒に出仕して、一緒に帰りたいわ。チュホンに乗って」

「はい」

「でもチュホンが疲れちゃうかしら?」

 

チュホンはウンスの言葉がわかっているのか、ヒヒーンと首を大きく横に振った。

 

「あら、そう?じゃあこれからもよろしくね」

 

ウンスがチュホンの頭を撫でると、今度は満足げにスンと鼻を鳴らした。

そんなチュホンの様子に二人は顔を見合わせて笑みを交わした。
 

 

 

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***

 

全然進まない( ;∀;)

本当であれば王様と謁見するところまで進む予定だったのに…

ヨンがウンスといちゃいちゃしたいって言うから←