見つめ合う二人を最初は微笑ましく見ていたチェ尚宮だったが、それは次第に呆れに変わり……。
おっほん。
と、チェ尚宮はわざとらしく咳払いをした。
「今日は二人の婚儀のことで参ったのだ」
「そうだったんですね!わざわざありがとうございます。私この時代のことは勉強不足で……。この時代の婚儀はどうやってやるんですか?」
「婚儀は先祖代々の墓がある菩提寺で親族のみで行います。御仏や先祖に夫婦になることを報告し、そして二人の縁が結ばれたこと感謝し、来世までの結びつきを誓うのです」
「来世まで……」
「婚儀の後は屋敷に互いの親族が集まり、酒や料理を振舞う親族同士の交流も兼ねて華やかな祝宴を行うのが通例……」
そこでチェ尚宮は一度言葉を切った。
ヨンの両親はすでにこの世を去っている。
ウンスの両親は健在だが、天界にいるためこの地に呼ぶことは不可能。
どちらも交流すべき親族はいない。
「医仙は天界のお方。この地の仕来りにとらわれずとも良いと思うておる」
「叔母様、天界の婚儀も似たような感じなんですよ。式は親族だけでやって、その後に祝宴をするって」
「左様でございますか」
「はい。それにこの人のことは両親に紹介できたんです」
「まことですか?」
チェ尚宮は驚いた表情をした。
甥は再び天門を通ったということだろうか?
「はい。国境の村を発つ前に私の両親に挨拶がしたいってこの人が言ってくれて、天門の前に行ったんです。そしたら天門が開いて」
ね、とウンスはヨンを見た。
「はい」
「して、ちゃんと許しはもらえたのか?」
「ああ」
「とってもカッコよかったんですよ。この人……」
「イムジャ、余計なことは言わずとも良い」
「ええー!つまんない」
「つまらなくありません」
そうか、ヨンは天女のご両親にも認めてもらえたのか。
ならばこれほど心強いものはないだろう。
甥の心残りも少しは減っただろうか。
そうであって欲しいとチェ尚宮は思った。
「あ、話が逸れちゃいましたね。この時代の婚儀は菩提寺でやるんですよね?」
そうチェ尚宮に確認してからウンスはヨンの方へ振り向いた。
「チェ家にも菩提寺はあるのよね?」
「あります」
「そこって開京から遠いの?」
「それほど遠くはないかと」
「なら、チェ家の菩提寺でやりたいわ!今度は貴方が私のことをご先祖様に紹介して、ね?」
「イムジャがそれで良いのなら」
「叔母様も良いですか?」
「もちろんです」
「それから祝宴よね。やっぱりチェ家の親戚の方をお呼びした方がいいのかしら?」
「親族は皆、本貫に籠っており滅多に都には参りませぬ。父上の葬儀以来あってもおらぬゆえ書簡にて知らせれば十分かと」
「だったら披露宴をやりたいわ」
「ひろうえん……ですか?」
「そうよ。私の世界では、家族や友人、お世話になった人たちを招いて、私たちは夫婦になりましたっていうお披露目の宴をするの。ウダルチの皆やスリバンの皆、私たちを知っている人たちを呼んで披露宴をしたいなって。これからも私たちを見守ってくださいっていう意味も込めて。ね、ダメ?」
そのような可愛らしい顔で首を傾げられては、何が何でもやってやらねば、という気持ちになる。生まれ育った地、そしてご健在のご両親の元を離れ、身一つで自分を選んでくれたこの方の願いならば、可能な限りどんな望みでも叶えてやりたい。
「わかりました」
「できるの?」
「できぬことはありません」
「本当?王様と王妃様にも参列していただきたいけど、それはさすがに無理よね……?」
「一家臣の婚儀に王が参加するというのは……」
「そうよね。私とあなたを結びつけたのは王様と王妃様じゃない?」
言われてみればそうだ。
今の王が即位した当時、元から高麗に帰郷する道中、王妃が刺客に襲われ重傷を負ったのが発端だった。同行していた侍医でも治療は不可能、治療ができるとすればそれは神医のみだと侍医は言った。
その時、たまたま近くにあった天界へつながる天門が開き、当時迂達赤隊長だった自分が神医を連れてくるよう王命を受けたのだ。
そこで見つけたこの方。
あの日、王妃が襲われたのは偶然なのか?
そして天門が近くにあったこと、天門が開いたこと、
他にも大勢いた医員の中からこの方を選んだこと
いや、この方しか目に入らなかったという方が正しいが。
すべて偶然なのだろうか?
この方が出会うために起きた気がしてならない、というのは考えすぎか?
そんなことを考え、思考の深みにはまりそうになったヨンをウンスの明るい声が現実に引き戻す。
「二人には参加してほしかったけど、仕方ないわよね。とりあえず、チェ家の菩提寺で婚儀を挙げてその後に披露宴で決まりね!」
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二人の婚儀に向けて少しずつ動き始めました。
婚儀の準備をしつつ、二人の日常を織り交ぜつつ、婚儀当日までお話を紡いていければと思います(*´▽`*)
