ウンスがヨンの元に戻り、北方の地で帰還準備を進めている頃。

皇宮では、大護軍より送られた二通の書簡がそれぞれの受取人の手に渡っていた。

 

 

 

 

王は執務室で受け取った書簡に目を通していた。

書簡に記されていた内容は二つ。

一つは帰還の許可を請う旨、もう一つは嫁娶の許しを請う旨が書かれていた。

一つ目の内容は何ら問題はない。

至急返答の書簡を送るように命じる。

問題はもう一つの方だ。

通常、臣下の婚姻に王は関与しない。

だが、此度妻となる者は遥か天の国より参りし華冑の女人。

そのため婚姻には王の許諾が必要になるだろうと書簡にはあった。
さらには婚姻が認められるにしろ認められぬにしろ、政に関わる縁談は国に新たな火種を生みだしかねず、国を憂慮し、彼の女人以外は一切娶るつもりはない、と。

力強く、それでいて流麗な文字で書かれていた。

 

王は笑った。

そんな王の様子に近くに立っていた、アン・ドチは怪訝そうに王の顔を窺った。

だが王は気に留めることなく彼の地にいる男に思いを馳せた。

 

チェ・ヨンの縁談は山のように来ていると聞いていた。

その量はあのチェ尚宮も呆れるほど。

中には王直々に取り持って欲しいという重臣までいた。

一臣下の婚姻に政を巻き込むとは何事だ、と叱咤したのは記憶に新しい。

 

チェ・ヨンの嫁取りの話はどこからか漏れたのか瞬く間に皇宮中に広まった。

 

大護軍が嫁取りされるとは真ですか?

どのようなご身分の女人なのですか?

と、年頃の娘や孫を持つ臣下たちは荒い鼻息を隠そうともせず王に尋ねてくる。

 

また一部の臣下の中には

医仙様がお戻りになったのでは?

と推測する者もいた。

4年以上前から皇宮で仕えていた者たちの中では大護軍と医仙、二人が恋仲だったことは周知の事実だ。

 

「余も先程の書簡で知ったのだ。相手の女人のことは詳しく書かれておらぬゆえわからぬ」

 

薄情な奴め、と王は笑った。

 

医仙であろうがなかろうが、あの男が決めたこと。

だがあの男が医仙以外の女人を娶ることなどあり得ぬ。

 

 

 

 

 

 

甥からの書簡を見て、チェ尚宮は目玉が飛び出しそうになった。

まさか。

真に?

あの方が甥の元へ?

自分の見間違いではないかと、目の錯覚でもないかと何度も書簡を見直す。

だが、その文字は確かにった。

 

医仙帰還

 

書簡を持つ手が震えた。

 

ようやく甥が報われる時がきたのか。

あの方がいなくなった後の甥の姿は、まこと見るに忍びなかった。

なぜこうも甥にばかり試練を与えるのか、と天を恨んだ。

 

父のように慕っていた師を亡くし、許嫁を亡くし、それ以来生きる屍のようだった甥。
その生をいつ放り出してしまうのかと案じていた。
誰でもいいから甥を救ってはくれぬかと。
だがそう願う反面、甥のことを救える者などこの世にはおらぬのではないかとも思っていた。

 

そんな折、甥が天界より連れて参ったという女人。
王妃様の傷のみならず、甥をこの世に繋ぎ止め、あまつさえ心の傷も癒したあの方。


あの方を守ろうとする甥の瞳には光が戻り、いつしかあの方を見つめる眼差しには情愛が溢れるようになった。

 

甥がどれ程あの方を想っていたのか。

そして甥に負けぬくらい、あの方も甥を想っていてくれたことも知っている。

 

いつの時も、どんな時でも、甥のことを心配しておった。

自分の命が危うい時でさえ、明るく振る舞い、甥を励まし

あの方の明るさに甥だけでなく誰もが救われていた。

 

そしてあの方の命を脅かす毒をようやく解毒でき、やっと一緒になれるかと思ったその矢先。

天は甥とあの方を引き離した。

再び天を恨んだ。

図体もでかくなり生意気で可愛げもなくなったが、それでも大事な甥であることには変わりない。

どうかあの方と幸せになってもらいたい。

幸せにしていただきたい、と柄にもなく天に祈った。

 

それから4年。

甥には申し訳ないが、諦めにも似た感情を抱きつつあった。

 

そこにこの知らせ。

いまだに信じられぬが

甥の元に戻ってきてくださったことに

感謝しても感謝してきれぬ。

 

 

 

おお、こうしてはおれぬ。

王妃様にもお知らせせねば。

それから屋敷もいるだろう。

これからは二人で住むであろうし。

そのうち子だってできよう。

だがその前にあ奴は婚儀の約定を取り付けたのか?

せっかく戻ってきていただいたのに、どこの馬の骨とも知れぬやつに掻っ攫われたらどうする?

医仙のあ奴はへの想いは承知だが、あ奴は口下手ゆえ。

如何せん不安だ。

それから最近は面倒で放置していたあ奴の山のように届く縁談の処理もしなくては。
それから…

やるべきことは山のようにあるではないか。

あの馬鹿者め。

 

 

 

 

 

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次からはついにヨンとウンスが開京に到着します。

その前にヨンからの書簡を受け取った二人のお話を挟ませていただきました(*'-'*)

ヨンとウンスのお話しを期待されていた方には申し訳ありませんヽ(;´Д`)ノ