天候にも恵まれ一行は開京までの道のりを順調に進んでいた。
敵襲にも不足の事態にも遭うことなく、このままいけば明日には開京の入るというところに差し掛かり休息を挟む。

 

ヨンがウンスの方へ視線をやると、ウンスは隊員たちと楽しそうに話をしていた。

あの方の周囲はいつでも明るい。

あの方自身が明るい気を放っているからだ。

あの方がいれば周りにいる者は皆、自然と笑顔になる。

王の客人ということで最初は遠慮がちにウンスに接していた隊員たちも、トクマンやテマンと親し気に話すウンスを見て段々と打ち解けていった。

特に迂達赤のテオとは早くに打ち解け、今でも親し気にウンスと話している。

 

……気にくわぬ。

「へ~、じゃあテオは3年前から迂達赤に入ったのね」

「はい。ずっと迂達赤に憧れていてようやく」

 

と、その時強烈な突風が吹き荒れた。

被っていた風除けの外陰と笠が強い風に煽られて外れて、ウンスの顔が露になる。

強風が吹き止んだ次の瞬間、初めてウンスの顔を見た隊員たちは息を呑んだ。

そのあまりの美しさに。

今まで笠を目深に被っており、はっきりとウンスの顔を見たことがなかった。

ヨンが徹底して、ウンスに笠を外させなかったためだ。

それが今白昼のもとに晒された。

現れた大きな瞳、すっと通った鼻筋、赤く色づいた唇、白い肌、艶やかな長い髪に一同は目を奪われた。

 

一番近くにいたテオもウンスの顔を見てポカンとしている。

ぼーっとウンスに見惚れていると、大きな手がウンスの頭に笠を被せた。

は、とテオが我に返った時には、ウンスはヨンに手を引かれて連れて行かれた後だった。



ヨンはウンスの手を引いて大股で歩き、一行の群れから離れた。

笠を被せ、顎紐を結んでやりながら


「イムジャ、どういうことですか」

「だっていきなり風が吹いたんだもの、仕方ないじゃない」

「そうではありませぬ」
「じゃあ何よ?」
「テオのことです」
「テオがどうかした?」
「それです」
「え?」
「なにゆえ……」
「?」
「なにゆえ、奴のことは呼び捨てなのですか?」
「だって、本人がそう呼べって言うから」
「俺は?」
「え?」
「イムジャは俺の名は呼んでくださらぬ」
「呼んでくださらぬって……呼んでほしいの?」
「はい」
「……チェ・ヨンさん」


ヨンは首を振った。

 

「……」

 

ヨンはウンスの瞳をじっと見つめた。
そしてウンスは小さな声で囁くように言った。

 

「……ヨン?」
「もう一度」

「……ヨン」

「はい」

「なんだか、少し恥ずかしいわ」

「すぐに慣れます」

「けどみんなの前では大護軍って呼ぶわよ。あなただって体面があるでしょう?」

 

渋々というようにヨンは頷いた。

 

「されど、これだけは覚えておいてください。イムジャが呼んで良いのは俺の名だけです。他の男の名を気安く呼ばぬように。わかりましたか」
「……はい」

 

それから、とヨンは続けた。

 

「今宵は宿に泊まれそうです」

「本当!?」

 

ウンスの声が明るくなる。

 

「はい。少し先の村に宿屋がありますので手配させます」

「やった~!お風呂があればいいんだけどそんな贅沢は言ってられないわね。とりあえず体と髪を洗いたいわ」

 

風呂上りのウンスの姿を想像して、ヨンはしばし黙った。

 

 

 

 

そんな二人を遠目に、隊員たちはあのような美しい女性が王様の客人とは、どのような客なのだろうかと想像力を働かせた。

それと同時に大護軍との関係についても気になっていた。

 

普段は厳しい顔をしている大護軍が、王の客人である女人を見る時の表情は柔らかく穏やかだ。

その顔を見た隊員たちは目を疑った。

目の錯覚かと思うくらいに珍しい顔だったからだ。
あの堅物の大護軍が穏やかな顔をしていること、そして女人が大護軍と接する時の親密さにも驚いていた。
ただならぬ関係なのでは、と隊員たちの間で憶測が飛び交った。


 

 

それからテオはずっと頭を悩ませていた。

馬を進めている最中も、そのことが気になって気になってしょうがなかった。

 

「謎だよな~」
「何が謎なんだ?」

「副隊長」

「大護軍の女関係ですよ」

 

テオの口から出てきた言葉に、トクマンはぎょっとしてそれから呆れた。

 

「お前、怖いもの知らずだな」

「副隊長だって気になるんじゃないですか?」

「俺は別に」

「なになに何の話?」

 

とウンスが話に入ってきた。

 

「大護軍の女関係についてですよ。高麗でも10本の指に入る名家出身の上、若くして大護軍という役職につき、あの容姿。なのに浮ついた話が一切ない。縁談が山のように来てるのに一切見向きもしないそうです」


おい、とトクマンが焦ったようにテオを止めようとするが、ウンスは話の先を促した。

 

「あの人に縁談があるの?」

「かなり力のある重臣たちも娘や孫を嫁がせようと画策してると聞きました。ですが、大護軍は縁談には一切首を振らない上、どんなに美女に迫られても興味も示さないらしいです。何でも医仙という女人に操を立てているとか。そんなにいい女だったんですか?その医仙という女人は」

 

最後の部分はトクマンに向けてだ。

なにしろテオ自身はウンスがいなくなった後に宮中に入ったので、医仙という女人を噂でしかしらない。


「そりゃあ大層美しかった。あ、今も美しいですが」
「今も、ですか……?」
「あ、いや何でもない」
「だけどそれは表向きの名目で本当は男が好きなんじゃないかっつう噂もあるらしいです」

「え゛?」
「何だそれ?」
「だって、4年も一人の女人を想っていられますか?仮に想っていたとしても大護軍だって男です。性欲だってあるはずだろうし。それなのに妓楼にも行かないし、女を抱いている気配すらない。となると……なぁ?」

「なにが、なぁ?だ。だいたい、なんでお前がそんなことまで知ってるんだよ」
「俺を甘くみないでください。武閣氏や女官、妓生たちから情報元はたくさんあるんですよ」
「全部女関係かよ」
 

やっぱりいつの時代でも女の人は噂話が大好きよね~。
この子、顔はものすごく良いものね。昔から女子はこの手の顔に弱いのかしら?
この顔で口説かれたらほいほい何でも話しちゃいそうだわ。


でもそんな噂が嘘であることはウンスが身をもって証明済みだ。
だってあんなに情熱的に求めてくれるんだもの。

それにヨンのことを疑っているわけではないが、それでもあの人が一切他の女性に見向きもしなかったという事実を他人の口から聞くと安心するし、やっぱり嬉しい。
 

けど縁談のことなんて一言も聞いてないわ!

 


 

 

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チェ・ヨン氏、悋気するの巻

ヨンの悋気は可愛いものから、独占欲むき出しのものまでいろいろな形があると思いますが、今回は可愛い系悋気でした(笑)

そのうちもっとすごいのもありそう(´∀`*)ウフフ