明け方、腕の中の温もりをやっとの思いで離し、名残惜しく思いながら共寝していた寝台から抜け出る。
その気配にウンスが薄く目を開けた。
だが昨夜からつい先ほどまで行われていた営みの疲れからか覚醒しきらぬまま、ウンスは掠れた声で「行ってらっしゃい」とだけ告げた。
役目などそっちのけにして寝台に戻りたい、そんな衝動に駆られるが、
ヨンは腹に力を入れ、誘惑に負けそうになる己を律し、「行って参ります」とウンスの髪をひと撫でした後、宿屋を後にした。
兵営に戻ってからも、いまだにウンスの匂いが自分の体に残っているような気がして。ウンスの存在が身近に感じられ、ヨンは頬を緩めた。
だが、そのヨンの纏う匂いは一部の兵たちの間で噂になっていた。
中には夜中に兵営を抜ける大護軍を見かけたという者もいて。
夜中兵営を抜け出し、翌朝には良い匂いを纏って戻ってくる大護軍。
まさかあの大護軍に女が???
と、私生活が謎に包まれている大護軍の振舞いは兵たちの間で瞬く間に広がり、様々な憶測を呼んでいた。
だがそれを確かめようとする猛者はいなかった。
そんな噂が流れているとは露知らず、ヨンは着々とやるべきことを片づけていった。
国境守備の見直しは完了し、引き継ぎは順調。
帰還準備が整いつつある中、王都からの報せが到着した。
「大護軍、早馬が戻りました」
チュンソクが2通の書簡を持って部屋に入ってくる。
受け取った書簡の1つには開京へ帰還を許す旨がしたためられていた。
ヨンはチュンソクを見た。
「王様のお許しが出た。3日後に出立する。兵たちに伝えろ」
「は!」
チュンソクが出て行ったのを見届けてから、もう1通の書簡を広げ目を通す。
内容を確認してヨンは笑みを浮かべた。
*
宿に戻ったヨンは早速、帰還の許可が下りたことをウンスに伝えた。
「王様から帰還の許しが出ました。3日後、早朝の出立となりますゆえ明後日までに荷物を纏めてください。出立前日にはこちらの宿ではなく兵営の方に移っていただきます」
「わかったわ」
「何か足りぬものがあれば明日買いに参りましょう」
「明日?あなたお役目は?」
「優秀な部下を持ちましたゆえ、明日と明後日はイムジャの側に」
「またチュンソクさんやトクマンさんにお役目を押し付けたんじゃないの?」
「心外です」
「でもあなたと一緒にいられるのは嬉しいわ!あ~あ。あなたと出かけるならちゃんとお洒落したかったけど、男物の服しかないわ」
「今はあまり目立たぬように。おしゃれとやらは開京に戻ってからにしてください」
「仕方ないわね。けど楽しみだわ~」
ウンスは胸を弾ませた。
それから今日の日中にあった出来事を話し始めた。
「あ、そうそう。確認しておきたいんだけど、私とあなたって今どういう関係なのかしら?」
「関係、というと?」
「今日ね、村の市場で旦那はいるのかって聞かれて」
「聞いてきたのは男ですか?女ですか?」
「え?女の人よ」
「それで、貴女はなんと?」
「まだ婚儀をあげたわけじゃないから立場的には許嫁なのかな……って思ったんだけど……」
「けど?」
「……旦那様がいます、って言っちゃった」
「……」
「ダメだった?」
「いえ、これからは誰に聞かれてもそう答えてください。遅かれ早かれそうなるのです。俺は貴女を手放す気はない。それにあの時、貴女が戻られた夜に申しました。俺の妻に、と」
「そ、そうよね……」
その時のことを思い出したのか、ウンスはほんのりと頬を染めた。
よろしければポチっとお願いします(*´▽`*)
***
今日はちょっと短めですみません(>_<)![]()
良いところで区切れませんでした![]()
