早馬が到着するまでの間に国境を見回り、守備の状況を確認していく。

自分が敵だったらどこを狙うか。

狙われそうな箇所・死角になるところは人を多く配置し、敵が攻め込んできた場合を想定して守りの動きを徹底させる。

そして定期的に軍議を開き、 国境軍の将校と郡守を交えて駐屯の指揮および守備について意見を交わす。

それが終わればウンスの待つ宿屋へ戻る、という生活をヨンは送っていた。

 

ウンスの待つ宿屋へ戻る道すがら、このままこの地で暮らしていくのも悪くないと思う。

この地に家を用意し、あの方が待つ家に帰る。

そしてゆくゆくは家族も増え……

ーーあの方が幼子を抱きかかえ、笑顔でこちらに向かって手を振る

そんな光景が脳裏をよぎったがヨンは軽く頭を振った。

国の情勢も落ち着かぬというのにそんなこと許されるはずがない。

徳成府院君キ・チョルがいなくなったとは言え、いまだに親元派の人間は少なからずいる。宮中の動きは逐一叔母であるチェ尚宮が見張ってはいるが、いつ何が起きるとも限らぬ。

元に逃れている徳興君、キ・チョルの令妹、キ皇后。キ・チョルの死には少なからずあの方も関わっている。あの方が戻られたと知れば、いつ何を仕掛けてくるか。

何より注視すべきは他の外敵の動きだ。

紅巾や倭寇の動きが徐々に激しくなっているという報告も手裏房からあがってきている。

北方奪還という名分の元、その実あの方の帰りを待っていた。

そして北方奪還はほぼ完了し、あの方は戻ってこられた。

もはやここに留まる理由はない。

叔母上からは何度も戻って来いという書簡が届いている。

頭を悩ませる事柄は尽きないが、あの方を思い浮かべると不思議と心は軽くなる。

ヨンはふっと笑うと帰路への足を早めた。

 

 

ヨンが宿屋に戻った時、ウンスの出迎えはなかった。

部屋を覗くとウンス何やら作業をしていて、ヨンが帰ってきたことにも気づいていないようだ。

 

「戻りました」

「あ、お帰りなさい」

 

ヨンはウンスの手元に視線をやったのに気づいて、ウンスは作業を止めた。

 

「ごめんなさい、薬草くさいかしら?今日ね、村の近くで傷薬になる薬草を見つけたの。だから早速作ろうと思って。隊員たちが怪我した時に使えるでしょう。傷薬の作り方は前にチャン先生から教えてもらったのよ」

 

と、ウンスが嬉しそうにヨンに報告してくる。

日中のこの方の行動については予めテマンから報告を受けていた。

あの方は村の薬房に行ったり、薬草を探しに行ったり、具合が悪そうな人がいれば声をかけたりと、忙しくしているらしい。

あの方らしいと言えばあの方らしいが、あまり目だった行動をされては困る。

医術はもちろん、その容姿が、人柄が、人目を惹き付ける。

変な虫を寄せ付けかねない。

本人は無意識だから余計にタチが悪い。

 

お茶入れるわね、と卓の上をざっと片づけたウンスが立ち上がり、せっせと準備を始めた。

その様子を見ながらヨンは腰かけ、卓の上に無造作に置かれた紙の束を見つけた。

手に取って見るとそこにはお世辞にも上手とは言えぬ文字が書かれていた。

それは天界の文字ではなく漢字だ。

 

「イムジャ、これは?」

「ああ、薬草の効能を漢字で書いてるのよ。薬草の知識だって身に付くし、漢字だって覚えられる。一石二鳥でしょ。ただ1年間、ぼーっと過ごしてたわけじゃないのよ」

 

と、ウンスは得意げに笑った。

 

「100年前にいた時だって必死に薬草の勉強をしたのよ。私の持ってる医療技術はこの時代ではそれほど役に立たないもの。未来の高度な医療機器、道具があってこその技術だわ。けど知識は役に立つ。人の体内がどうなっているのか、どの病気にはどんな効能の薬が必要なのか、この時代の誰よりも詳しい自信がある。そこに漢方の知識が融合すれば最強だわ!!それを高麗に広めていけば、もっとたくさんの救えるべき命を救える。それに考えたくないけど、あなたに万が一何かった時だって……」

「イムジャ」

「それに漢字の勉強もたくさんしたわ。あなたと生きていくためには必要だもの。苦手だからとか覚えられないとか言ってられないでしょ?あ~この歳になってこんなに勉強するとは思わなかったわ。でもまだまだわからないこともあるから教えてくれる?」

 

ウンスの言葉にヨンの中には熱いものがこみ上げてくる。

自分が戦場で人の命を奪っているその間、この方は人の命を繋ぐために必死に学び。

そして自分との生活を思い描いていてくれた。

 

まったく貴女という人は……

本当に困っちまう。堪らぬ。

俺は貴女がくれる10分の1程でも想いを返せているだろうか?

報いることができるだろうか?

貴女がいた世界と比べたら遥かに不自由なこの世に留め置き、俺とは違いまだ存命しているご両親からも引き離し、それなのに俺が与えられるものは何一つない。

俺は俺というものしか持っていない。

俺がしてやれることは、ただそばにいることだけ。

それも王命が下ればいつどうなるかわからぬ。

だが、貴女はきっと嬉しそうに笑うのだろう。

それだけで良いのよ、と。

 

「イムジャ、薬草づくりはもうよろしいのですか?」

「ええ、今日はここまでにするわ」

「しからば」

 

ヨンはウンスの手を引いて立ち上がらせると、腰と膝裏に手を回してその体を抱き上げた。

ちょっと!と貴女は驚き、落ちぬように俺の首に腕を回す。

この世の何よりも大切で愛しい存在を胸に抱き、寝台へと向かう。

 

俺は口下手ゆえ、貴女のように上手く想いを伝えることはできぬ。

されど想いを伝える術は言葉だけではない。

 

 

 

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***

 

自分でいうのもアレなんですけど

なんかニヤニヤしちゃう(〃∇〃)

自分で書いた文章で泣きそうになったり

笑っちゃったり、突っ込んだり

ということが割とあって

本当パボだな、と自分で思います。

すみません。


あとアメンバー承認の件で。

基本的にメッセージをいただいた方で承認が完了した方には全て返信させていただいております。ですが、コメントにてアメンバー申請の内容を回答していただいている方については承認しても返信はしておりません。コメントは承認制のため承認しないと返信できず、承認すると年齢等の個人情報が公開されてしまいます。という理由から承認のご連絡ができず申し訳ありませんが、承認された際の通知は行くかと思いますのでそちらでご確認いただければと思います!