ヨンはチュンソクとトクマンと兵営に戻る道中、

早速開京への帰還について考えを巡らせた。

皇宮へ早馬を飛ばし、帰還許可を待つ。

その間に、この地の管理と守備の配置についても見直さねば。

と言ってもここの兵たちの力量にあまり不安はない。

この3年間で簡単に死なぬほどには鍛えてやった。

自分がいなくても問題ない状態ではあった。

自分がここにいたのは自分の欲だ。

あの方の帰りを待ちたかった。

あの方に一番近い場所で。

 

先ほど別れたばかりのウンスへと思いを馳せる。

あの後、チュンソクが共に過ごしては、という提案を断ったのはウンスだった。

 

「お役目の途中なんでしょ。買い物はテマンさんと一緒に行くから大丈夫よ。その代わり、早く帰ってきてね」

 

そう言われてしまっては何も言えず、むさくるしい男3人で兵営に戻ることになった。

 

兵営へ戻ると、ヨンは帰還に向けての準備に取り掛かった。

実質この地の管理はほぼチュンソクが行っていたので、引き継ぎはチュンソクに任せる。

 

「どれくらいでできそうだ?」

「は、10日もあれば」

 

それから中央から派遣されている兵たちの帰還の手筈も整えねば。

 

「国境警備の見直しも必要だ。こちらが抜ける分、再編成をせねばならぬ。トクマン、お前に任せる」

「はっ!」

「明日軍議を開く。国境軍の将校と各組の組頭、それから郡守も呼べ。」

「「はっ!」」

 

あとはあの方の護衛の人数と行程だ。

供は何人にするか。移動は陸路か海路か。陸路なら馬か馬車か。

船で移動するのが一番早いが、奇襲がないとも限らない。

万一のことを考えると陸路の方が良いだろう。たとえ奇襲にあっても対抗できる。

だが極力目立つ移動は避けたい。となると馬で駆けるべきか。

なるべく平野を避け、山道を行けば目立たずに移動できる。

馬の乗り方は教えたゆえ馬での移動も問題はないはずだ。

いつどこであの方の情報が元に洩れるかわからぬ。

あの方の情報が洩れれば、元だけではなく王様をよく思わない親元派にも恰好の餌になるだろう。

あの方を守るためにも一刻も早く帰還せねば。

そのために考えるべきこと、やるべきことが次から次へに浮かんできて、ヨンは大きく息を吐いた。

 

 

 

 

ヨンがウンスのいる宿屋に戻ったのは陽が沈み、あたりが暗くなってからだった。

ヨンの姿を見て、ぱぁっと満面の笑みを浮かべて出迎えるウンスに愛しさが募る。

 

「おかえりなさい」

 

4年前に共にウダルチ兵舎の部屋で過ごした時も思ったことだが、

誰かが待ってくれている場所に戻ることがどれほど幸せなことか

改めてヨンは実感した。

ウンスがおかえりなさいと言ってくれるだけで、今日の疲れが吹き飛ぶようだ。

 

「ただいま戻りました」

 

ウンスは自然な仕草で後ろに回り、鎧を脱ぐヨンを手伝う。

 

「10日もあれば帰還準備は整いそうです。王様に早馬で書簡を送っておりますので、帰還の許可が得られ次第、この地を発ちます」

 

一緒に食事を取りながら、ヨンは今後のことについて話した。

 

「馬での移動となりますが、馬の乗り方は覚えてますか?」

「もちろん覚えてるわ」

「途中は野営になります。船での移動も考えたのですが奇襲の可能性も捨てきれず。馬車での移動も考えましたが、あまり目立つ移動は避けたく」

「わかったわ。馬で移動するのが一番安全なんでしょ?」

「はい」

「早く皇宮にいるみんなとも会いたいし、多少の不便は我慢するわ。王様や王妃様、叔母様に会うのも楽しみだわ~!あ、マンボ姐さんのクッパも食べたいし!みんな元気かしら?」

「元気でおるでしょう」

 

 

 

 

ヨンが手ぬぐいで髪を拭きながら風呂から寝台の置いてある部屋に戻ってくると、

寝台で横になっていたウンスは起き上がった。

 

「ねぇ、明日も外に出ていい?」

「なりませぬ」

「薬房に行きたいの。薬草も欲しいし、それにせっかくお風呂があるんだから石鹸とかも作りたいし」

「なりませぬ」

「またそうやって頭ごなしに否定して」

「良いですか。ここは今でさえ高麗の土地ですが、少し前までは元の領土だったのですよ。一見穏やかな村に見えますが、少し前には戦場にすらなった村です。いまだに元の息がかかった者もおるやもしれぬ。それにどこに危険が潜んでおるか……」

「けど何もすることがなくて暇なんだもの。ただじっとしてるだけなんて耐えられないわ」

 

ヨンは大きくため息を吐いた。

一度言い出したら聞かない方だ。

そして黙って大人しくしているような方ではない。

むしろ勝手に抜け出して何か問題を起こされては堪ったもんじゃない。

ヨンは渋々と言った様子で言った。

 

「少しだけですよ」

「いいの?」

「ただし、くれぐれもお一人ではお歩きにならぬように」

「はい、テジャン」

「テマンをしっかり護衛について」

「はい、テジャン」

「絶対に問題は起こさぬように」

「了解しました、テジャン」

「……もう一度、テジャン、と」

「テ~ジャン?」

 

あの時できなかった口付けをもう一度……

 

 

 

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***

 

帰還に向けていろいろ動き出しましたので

サブタイトル変えてみました。

帰還準備と言ってもするのは主にヨンの方で、

ウンスが何か準備するということはあまりないかな…?

と思うけど細かいことは気にしない(笑)