(sideウンス)
思い出の丘へと続く道を上っていく。
逸る気持ちを抑えきれず、その歩みは無意識のうちに早まっていく。
途中、足がもつれ転びそうになりながらもウンスは懸命に足を動かした。
少し遠くにあの大きな木が見えてきた。
テマンさんの言葉によるとあの木のところにあの人がいる。
本当に?
あの人がいるの?
もしいなかったら…?
不安と、そこにいて欲しいという切実な気持ちが交錯する。
徐々に大きな木に近づいていく。
もしかして…
そう思って木の下を見る。
けれどそこには人の姿はない。
また今回もダメだったの…?
あなたはどこにいるの?
チェ・ヨン
思わず涙が溢れそうになってウンスは俯いた。
そこでふと目に入ってくる、鮮やかな黄色。
かつてアスピリンの瓶に小菊を入れて埋めた場所。
そこには地面一面に見事に小菊が咲き誇っていた。
ウンスはぼんやりとした足取りで、小菊の方へと足を進めた。
そこでウンスの足は止まった。
何かに呼ばれたような気がして、ウンスは顔を上げて首を巡らせた。
少し離れた先、そこに佇む一人の男が疑わしい目でこちらを見ている。
被っている笠が邪魔でその人の顔がよく見えない。
ウンスはゆっくりと笠を取って目を凝らして見た。
どくん、と心臓が大きく音を立てて鼓動が早くなる。
目の前に、会いたいと思っていた人がいる。
会いたくて、会いたくて仕方なかったのに、目の前にいることが信じられない。
もし幻だったら?
白昼夢だったら?
そう思うと、怖くて。
会ったら話したいことがたくさんあったはずなのに、
言葉を口に出すことはおろかウンスはその場に立ち尽くすことしかできなかった。
それでも視線はあの人を捉えたまま。
自分でも気づかないうちに溢れた涙が頬を伝う。
涙で滲む視界の中、あの人が「イムジャ」と囁いたように見えた。
それが合図だったかのように、地面に縫い付けられたように動かなかった足が
一歩、また一歩、前へ動き始める。
あの人が両腕を広げてくれたのが見えて、
ウンスはその広い胸の中に思いっきり飛び込んだ。
(sideヨン)
目を瞑れば昨日のことのように思い出す。
あの方の瞳、あの方の声、あの方の温もり。
あの方と過ごした日々が色鮮やかに蘇る。
あの方がいなくなってもう4年。
イムジャ…俺はここにおります。
心地よい風が頬を撫でる。
その中に微かに混じる懐かしい花の匂い。
あの方を求めるあまり幻聴や幻覚だけでなく鼻までおかしくなったのか。
目を閉じたまま自嘲しているヨンの耳にカサカサと小さな音が届いた。
風が草木を揺らしているのだろうか。
そんなことを考えていると、懐かしい花の香りが強くなった気がした。
チェ・ヨン
誰かに呼ばれた気がして、
閉じていた目を開け、木の根元にかけていた腰を持ち上げ、ゆっくりと振り返る。
そこには笠を被ったままの女人が一人ぽつりと立っていた。
まさか…
女人がゆっくりと笠を取る。
現れたのは、大きな瞳、すっと通った鼻筋、赤い唇、亜麻色の長い髪。
待ち焦がれた愛しい女人の姿がそこにあった。
幾度も幾度も夢に見たその人。
何度手を伸ばしてもこの腕をすり抜け、目を開ければ姿を消してしまうあの方。
真に?
夢ではないのか?
この手を伸ばしたらまたこの腕をすり抜けて行くのだろうか?
涙を浮かべたまま、こちらを見つめる人に、イムジャ?と呼びかけるが、
その声は掠れ、囁くような音にしかならなかった。
だがそれが聞こえたのか、信号を受けたようにその場からあの方が動き出す。
こちらへ向かってくるその足が徐々に駆け足になったのを見て、
あの方を迎えるように両腕を広げた。
勢いよく飛びこんできた華奢な体をしっかりと受け止める。
確かにここにいる。
自分の腕の中に。
いまだに信じられない奇跡に胸がいっぱいになる。
今しがた自分の胸に飛び込んできた愛しい存在をきつく抱きしめた。
***
シナリオの最終回後のチェ・ヨンとウンスの物語を紡いでいく予定です。
再会から婚儀までは書きたいと思っていますが、どうなることやら…(^^;)
二人の幸せが一番!をモットーにお話を紡いでいきたいと思いますので
広い心で見守ってくださるとうれしいです(*´▽`*)
これを機にフォントやフォントサイズを変えてみましたので
見づらい等ありましたら教えていただけるとありがたいです!