核燃料サイクルの中核となるのは、原発で使用済みとなった核燃料からウランとプルトニウムを抽出する再処理工場、そして前回の記事で書いた高速増殖炉になります。
日本の再処理工場は青森県の六ヶ所村にある六ケ所再処理工場で、現在は試運転中です。
この施設の問題点は最初からある程度の放射性物質を環境中に排出することを前提に運転されていることです。
当然、設置事業所である日本原燃は「健康には影響のない程度の放射性物質の排出」であることを強調していますが、1日に放出される放射性物質は平常運転中の原子力発電所の1年分にあたるとも言われています。
一度異常な事態に陥れば大事故につながる危険性の大きな高速増殖炉と、常時放射性物質を排出する再処理工場があって、はじめて核燃料サイクルが完成するのです。
しかし、高速増殖炉もんじゅの度重なる事故により、核燃料サイクルは実現しておらず、原発からは厄介者のプルトニウムが次々と生み出されて行きました。
そこで苦肉の策として登場したのが「プルサーマル」です。
これは通常の原子炉(軽水炉と呼ばれる真水を炉の中で満たすタイプです)の燃料として使われているウランにプルトニウムをブレンドし、一緒に燃料として使おうというものです。
福島第一原発3号機がこのプルサーマル発電を実施していました。
3号機はすでに爆発していますので、核燃料の中に含まれていた猛毒のプルトニウムが環境中に放出されています。
当初は「プルトニウムは環境中に放出されていない」と発表がありましたが、非政府組織による調査で、すでにプルトニウムは環境中に放出されたと公表され、その後、原子力安全保安院からも公式に検出されたことを認めています。
プルトニウムは肺に取り込まれることで肺がんを引き起こします。潜伏期間は10年とも20年とも言われています。肺がんを発症した人が原発事故との因果関係を説明しろと言われても、それは極めて難しいことになるでしょう。
原子力は理論上は夢のエネルギーでした。
しかし、実際に国際評価レベル7(最悪)の原発事故が日本で起こったことで、世界中で反原発の動きが一斉に活発になりました。
野田総理大臣は国連で「原発の安全性を世界最高水準に高め、原発を再稼働したい」と言いました。
ここには財界からの安価で安定した電力の供給をという圧力と、原発プラントを輸出したいという重電メーカーの圧力があったのではないかと推測しています。
国民には「すぐには再稼働しない」、世界には「再稼働します」では二枚舌もいいとこです。
[この項続く]