ETV特集~原発事故への道程~[後編]が昨日放送されました。
原子力発電は国策として推進されてきましたが、建設予定地での原発の建設反対運動を封じ込めるために産官学一体となって、それこそ手段を選ばずに圧力をかけることに腐心してきたかがよくわかりました。
そこには科学は何も介在していません。科学は原発建設予定地の真下に活断層が走っていることを予見し、原子炉事故の時にECCS(緊急炉心冷却装置)が故障した際のメルトダウンそして炉心破壊による収拾不能な大規模な放射能汚染も予測していましたが、原発建設に不利な情報はすべて見なかったことにして建設を推進していきました。
原子力産業というのは結局科学技術ではなく、利潤追求の商売のひとつでしかなかったということです。
司法も結局は原子力産業の後押しをし、次々と原発建設が進み、今はこの狭い日本の国土に54基の発電用原子炉があります。そのうちの4基は福島第一原発の1号機から4号機になります。
原発運転の際に発生するプルトニウムの扱いも厄介なものでした。生物への毒性が極めて高く、原子爆弾の材料としては扱いやすいという、どちらにしても面倒な人工元素です。
原発を運転し続ければ次々と出来てくるプルトニウム、これを再処理にて抽出し、高速増殖炉の燃料として再利用するという核燃料サイクルという手法が考案されました。
これによりプルトニウムの平和への有効利用という大義名分ができあがりました。
高速増殖炉は負の安全性(何かあったら最悪の事態に勝手に転がっていく)を持つ極めて危険な原子炉です。60年以上前に理論的には完成しているタイプの原子炉ですが、工学的な難しさが多く、いまだに商用炉は運転されていません。
日本でも高速増殖炉「もんじゅ」がたびたび深刻な事故を起こしています。
原子力は実は理想的なエネルギー源の一つです。
酸素を消費せず二酸化炭素を排出しない。核燃料サイクルがきちんと動き出せば有限資源の天然ウランから人工元素のプルトニウムを産出しながら発電し、それを再び燃料として発電を行うことができます。完璧であれば懸念されるのは発電プラントから排出される熱による熱汚染だけになります。
しかし、それは絵に描いたモチでしかありませんでした。
[長くなりそうなのでこの項続く]