私が読んだ原子力関係の本で、今回の原発災害に絡む内容の書籍を紹介します。
1.人は放射線になぜ弱いか…近藤宗平・著 講談社ブルーバックス
生物はなぜ放射線に弱いか、放射線がどのように生物に害を与えるのか、どれだけの放射線量が危険なのかが詳しく書かれています。
分子生物学からのアプローチで書かれていて専門的な用語も多いですが、Wikipediaで調べながら読み進めてもよいでしょう。もちろんこれらの知識が無い方でも「なぜ放射線で色々な障害が引きおこされるのか」は十分理解出来ると思います。
私が持っているのは初版(昭和60年刊行)のもので、放射線量の単位系が古いものですが、現在は第3版が出ており、こちらは現在の単位系に改訂されています。
2.世界の放射線被曝地調査…高田 純・著 講談社ブルーバックス
これまでに世界で起こった核災害についての詳細が書かれています。
核兵器実験、研究所での事故、原子力施設での事故、原発災害などの発生の経緯やその後の経過、被災者や周辺環境に与えた影響の調査レポートです。
原発災害が発生したときの個人でできる対応についても記述されています。
3.チェルノブイリ(上)(下)…R・Pゲイル、T・ハウザー著/吉本晋一郎・訳 岩波新書
旧ソ連で1986年に発生したチェルノブイリ原子力発電所の事故、過去最悪のレベル7という大事故の後、放射線に被曝した作業員や住民の治療にあたったアメリカ医師団の記録です。
チェルノブイリ事故の詳細、その後の住民の健康被害などが詳しく書かれています。また、長期間にわたり追跡調査を行っていますが、原発災害の影響は10年単位で後を引くものだということがよくわかります。
自然科学分野の書籍ですが、人間ドラマの側面も持ち合わせた書籍です。
4.プルトニウムの恐怖…高木仁三郎・著 岩波新書
福島原発事故で取りざたされる「プルトニウム」の扱いの厄介さ、毒性についての記述が主なもので、プルトニウムを燃料として稼働する高速増殖炉の事故が起こった場合のシミュレーションが詳細に書かれています。日本では高速増殖炉「もんじゅ」(現在稼働停止中)とプルサーマル(通常のウラン燃料にプルトニウムを5%混ぜた燃料を使う)試験中の福島第1原発3号炉がプルトニウムを使用しています。
社会科学としての側面を持ち合わせた書籍です。
5.最新核エネルギー論…学研最新科学論シリーズ9 学習研究社
原子力発電の原理や原子炉の構造、現在研究中の安全性の高い新型炉、未来のエネルギーの本命である核融合の原理や研究の進捗状況が書かれています。
福島原発事故では原子炉内の構造などが説明されていますが、理解を高めるのに役立ちます。
この本は技術解説書的な側面が強く、原発事故の記述などはありません。
今回の福島原発事故に関しては、
1.人はなぜ放射線に弱いか(Amazonでも販売中ですが現在品切れです)
2.世界の放射線被曝地調査(現在入手がしづらくなっています)
は役にたつと思います。
3.チェルノブイリ(上)(下)
4.プルトニウムの恐怖
これらの本は絶版かも知れません。図書館で読むことはできると思います。
5.最新核エネルギー論
こちらも絶版です。この本は原子力そのものについての理解を深めるために役立つもので、今回の原発災害とはあまり関係はありません。
現在は原子力関連の本が一気に売れているようで、Amazonでも品切れが目立ちます。
図書館などで閲覧するのもよいと思います。