文学作品の一つ一つは、その時代の世情というものを結晶化するものである。時代の流行というものを封印するものである。


 テレビも、音楽も、小説も、文化の様々なものが時代を創っている。その一つ一つの作品の中で、我々の魂が活かされているのである。


 確かに、「時代精神」となるような本はごくわずかであるが、文化的流行となる本は多くある。その一つ一つを読んで、様々な文化を味わうことも、人生の糧となり、人生の味わいの幅を広げてゆくことになるのである。


 一人の作家が一冊の本を書くのには、一年ぐらいかけて、およそ百冊以上の本を読んでいると思うが、読者は、読書というものを通じて、その作家の一生の労作を、そんなに時間をかけずに味わって、追体験出来るのである。


 このように、文化の価値とは、一見、無駄に見える文化をも様々に味わってゆく所にもあるものなのである。


 決して、実用の学問だけが尊い訳ではない。法学や経済学だけでなくて、また、歴史に遺るような文学作品だけではなく、流行の小説やエッセイにも様々に接して、これを味わう中にも、人生の糧があるのである。


 古今東西の古典や哲学書を読むだけではなくて、様々な小説やエッセイを味わう中にも、人生の楽しみがあるのである。

 

 

 

 

 

 

 

    天川貴之

(JDR総合研究所・代表)