ステルス(stealth)は隠密、
こっそり、バレないようにという
例のアレ、あの戦闘機も、ですね。
ステロイド(steroid)はホルモンの一種、
薬剤として使用する場合は、
副作用が多いので注意を要するようです。
ステント(stent)は僕の心臓内に埋め込んだ
小さな金属で僕の命綱ともなっています。
ステルスとステロイドとステント、
老齢でオンボロの僕はとうとう、
これらがゴチャ混ぜに
なってきてしまっているのです。
「専門的なスキルというものは、単一のスキルではなく、さまざまなスキルの集積である。」
(「ファスト&スロー」ダニエル・カーネマン)
僕は代理店としての広告企画という
専門的なスキルを身に付けてはいるけれど、
それはその単一のスキルだけではなく、
哲学・神話・医学・法学・格闘・武術・心理学・
宗教学等々さまざまなスキルの集積に裏付けられた
実績が証明されてはじめて企画部長という立場が
維持できていたのだとも思われるのかも知れません。
「プロフェッショナルといえども、自分の専門分野の一部には習熟しているが、その以外については初心者同然ということは大いにありうる。」
(「ファスト&スロー」ダニエル・カーネマン)
仕事は実績で証明されるし、
自分でも習熟度がある程度理解できるけど、
実生活・日常生活、日常の諸々(例えば隣近所の人の氏名・職業であるとか、ゴミ出しの仕分けルールであるとか)に関しては
ほとんど幼児または初心者同然であるということも
大いに頷けることかとも思われます。
「エキスパートは、必ずしも自分の専門知識やスキルの限界をわかっていない。この点は大方の人の主観的な自信と同じである。」
(「ファスト&スロー」ダニエル・カーネマン)
なので現代には、
真のエキスパートと称される者は存在しないようです。
なぜなら、現代人は己の限界も弁えず、ただひたすら前進々々、未来を、将来を、前を見据えることが
善であり美徳であると勘違いしてしまっているからなのでしょう。
人は、時に振り返り、時に踏みとどまり、
時に後戻りをして、時に哲学的思考に還り、
そうして人は人として成長していくものであると考えています。
それなのに、現代では文化よりも文明ばかりが先走り、
人は自ら生み出した機械やシステムに振り回され、
人は自ら所持する機械に所有され始めているようにも思われます。
「経験豊富なエキスパートは、相手がいま何を考えているかを理解できるだろうし、相手が次に何を言うかも直感的に察知できるだろう。
しかし、来年どの程度現状が変化すると予測できると主張しても、その主張に十分な根拠があるとは言えない。
短期的な予測と長期的な予想とは別物であり、エキスパートには前者を学習する機会はあっても、後者を学習する機会はなかったはずである。
このように、専門的スキルの限界を認識していないことが、エキスパートがしばしば自信過剰に陥る一因であると考えられる。」
(「ファスト&スロー」ダニエル・カーネマン)
それを理解していないエキスパートは、
真のエキスパートではないと考えます。
それを認識していない人間は、
真のオトナであるともいえない。
真ではない偽のエキスパートが、
真ではない偽者のオトナが増殖しすぎてしまっているようです。
「その“直感”が十分に規則性の備わった環境に関するものであって、判断をする人自身にその規則性を学習する機会があったのなら、連想マシンがすばやく状況を認識して正確な予想と意思決定を用意してくれるだろう。
この条件が満たされているときに限って、あなたはその人の“直感”を信用して良い。」
(「ファスト&スロー」ダニエル・カーネマン)
改めて申し上げるまでもなく、
この場合の“直感”とは、
“診断”に置き換えることもできるし、
判断とか分析に置き換えても問題のないような
秀逸な直感である場合に限られている、
ということなのだと思われます。