「他(前述以外)の者は、あまりに若い相手の傍にいると自分が相応しくないとか、滑稽であるとか感じて気づまりだろう。
自分の年齢の数を不快に自覚させるをえないのだろう、と考える。」
(「老い」シモーヌ・ド・ボーヴォワール)
僕は恥知らずであったせいか、
そのような感覚も自覚したことがありません。
僕の現役時代、
企画部という部署で、部下は十数名で全員女性。
企画部がいくつも存在する会社ではあったのですが、僕の部署は奇異に映っていたようです。
人事部の配慮なのか無配慮なのか、部下の平均年齢は常に33歳くらいに抑えられていました。
なので、この状況の中でいつ誰と飲みに行こうが食事に行こうが、たいていは「あまりに若い相手の傍にいる」ことになってしまうのでした。
退職後も最近までは平気で彼女たちと同年代の女性または同じメンツの女性たちと食事に行ったり飲みに行ったりはしていたけれど、さすがに65歳を自覚したせいか、心身ともに老いさらばえオンボロになったせいか、ここ数ヶ月はおとなしく人並みに、かどうかはわからないけど、自粛あるいは自省してもいるようです。
「要するに年取った男たちの選択は、彼らが性愛に期待するところのものと、自分自身についていだくイメージと、この両方によって決定されるのである。」
(「老い」シモーヌ・ド・ボーヴォワール)
性愛以外にも、知的会話を期待するところのもの
という選択も加えて欲しいようにも思われます。
「当人の社会的境遇もその性的活動に影響をあたえる。性的活動は肉体労働者のほうが知識人より長くつづき、生活水準の低い男性のほうが富裕階級の者より長くつづく。」
(「老い」シモーヌ・ド・ボーヴォワール)
僕は肉体労働者ではなかったけど知識人でもない。
富裕層ではないけれど生活水準が低いというほどのものでさえないようです。なのに僕は長くつづいているようなのです。
「労働者や農夫はブルジョワよりも単刀直入の欲望をもち、性愛に関する神話に支配されることが少ない。」
(「老い」シモーヌ・ド・ボーヴォワール)
たしかに・・・単刀直入な性愛は嫌いだし性愛に関する神話とまではいかないけど、ある程度のロマンスは未だに期待してしまっている傾向にもあるようです。
「この点で最後に言えることは、過去において幸福な性生活をもった者ほど、それは長く維持されるということである。」
(「老い」シモーヌ・ド・ボーヴォワール)
まさしく・・・幸福な性生活は充分に体現させていただいた
ような気もしないでもないのです。
「当人が自己愛的な満足感のために性生活に価値をおいていた場合、彼は相手の眼をとおして自分を満足感をもって眺めることができなくなるやいなや、性生活を放棄する。
当人がその男性としての能力、その達人芸、または誘惑者としての能力を確認したいがため、あるいは競争相手たちに打ち勝ちたいためであった場合は、彼は年齢を理由に、そうした疲労の多い課業から身を退くことを嬉しく思うこともあろう。
しかしその性生活が自発的で喜ばしいものであった場合は、彼は力の尽きるまでそれを追及することを欲するだろう。」
(「老い」シモーヌ・ド・ボーヴォワール)