ソロー 34 | コラム・インテリジェンス

コラム・インテリジェンス

透き通るような…心が…ほしい

「ウォールデン池で過ごした最後の冬に、もうひとり、素晴らしい訪問者があったことを書き漏らすわけにはいきません。」
(「ウォールデン 森の生活」ヘンリー・D・ソロー)
 
ソローのいう「素晴らしい訪問者」とは、
ブロンソン・オルコット。
 
「若草物語」の著者、ルイザ・オルコットの父。
 
「私は彼と、冬の長い夜を幾晩か語り明かしました。」
(「ウォールデン 森の生活」ヘンリー・D・ソロー)
 
どのような賢者同士であろうと、
幾晩か共にマンツーマンで語り明かさなければ、
その共鳴も、その友愛も、生まれ難いのかも知れません。
 
我々は、それを怠り、むやみやたらに人を判断したり、
むやみやたらなうわべだけの友情や、
むやみやたらな切り捨てを、いともたやすく、
行ってしまっているような気もしないでもないのです。
 
「彼は──コネティカットが生んだ世界的な──最後の哲学者のひとりでした。
初めのうち彼は、州の産物を売り歩いていました。
ところが、彼の言葉を借りると、いつの間にか、自分の頭脳の産物を一軒一軒、足で届けるようになっていました。」
(「ウォールデン 森の生活」ヘンリー・D・ソロー)
 
ソローは、オルコットに強く惹かれたようです。
ソロー、オルコットとくればエマーソン。
 
彼ら三人に共通する無教会主義、
個人主義、超越主義哲学は、時に過激でありながらも、
今も我々に知的快楽を与え続けてくれているようです。
 
「恐怖はつねに無知から発生する。」
(「自然論」エマーソン)
 
「美知武習録80(バルタザール)」
 
「彼は広い心をもって、子どもでさえも学者でも、誰彼なく受け入れ、話をよく聞き、その人のいちばんいところを引き出し、考えに幅をくわえて、美しくして返します。」
(「ウォールデン 森の生活」ヘンリー・D・ソロー)
 
話しを聞き、長所を引き出し、さらにはそれを増幅させ、美的価値までもあたえてしまうというところは、まさに天才のなさるワザ。
良き指導者であり、良き友人でもあるかのようですネ。
 
「私は、世界の人々が行き交う街道に、彼が一軒の大きな宿屋を構え、あらゆる国の哲学者の世話をしたらいいと、つい考えます。」
(「ウォールデン 森の生活」ヘンリー・D・ソロー)
 
僕も近々、自宅を開放し、
‟ 憧れを知るひとだけが “ 集えるような居場所を提供したいとも願っております。
が、如何にせよ、人が集まらない。僕の不徳のいたすところでもあるようです。
 
あこがれを知る人だけが
 あたしの悲しみを知ってくれます」
(「ウィルヘルム・マイスターの修業時代」ゲーテ)
 
「あこがれを知る人だけが」
 
「宿屋の看板にはこう書きます。
  ‟人さま、大歓迎、
  ただし人になりたくない方は御遠慮ください。
  ゆっくり過ごし、静かな心を持って真の道を求める方、
  お入りください
 彼は私が知る限りの人の中で、最も筋の通った人です。」
(「ウォールデン 森の生活」ヘンリー・D・ソロー)
 
僕もそっくりそのまま、同じような看板を作りたい。
目立たぬように、小さな看板で、ひっそりと、
ただ、そこにありたいと願ってもいるのです。
 
「私たちはしばしば散歩にでたものですが、歩きながら話をするうちに、いつも決まって、現実のつまらぬ心配事から抜け出して自由になっていました。
 彼が社会のどんな組織にも宗教にも与しておらず、純真で、生まれながらの自由人だからでしょう。
 彼は真の楽天家です。」
(「ウォールデン 森の生活」ヘンリー・D・ソロー)