シャワーを浴びた後、耳の中の水分が気になったので、ティッシュを丸めて両耳に突っ込んでおいた。
これで耳の中の水分も気にならなくなって、気分よくビールをグイグイ飲み始めました。
アルコールの酔いもまわり、音楽が心地良く染み入るなか、今度は空腹感におそわれた。
耳が気にならなくなったら、今度はお腹が気になりだした。
「一難去って、また一難とは、このようなことか」と一人納得もできた。
お腹の贅肉は気にならないけど、空腹は気にし出すと余計に腹ペコになってくる。
出掛けるのも面倒なので出前を御願いしました。
時間よりも早く配達されたので、ちょっとムッとした感で応対していたはずなのに、
なぜか配達に来てくれた人の愛想が良い。
ニコニコと笑顔を絶やさず、気味悪くなるくらいの好意を感じてしまっていました。
時間より早く配達してしまったので、必要以上の愛想をふりまいているのか、それともそれ以外の理由があるのかはわからなかったけど、あまりの愛想の良さに、こちらもムゲに冷たくあしらうのも大人げないと思い、こちらも愛想よく振る舞いだした。
すると、あちらの愛想はニコニコから本格的な笑顔になり、しまいには声を出して笑い出した。
失礼にもほどがあると思った。
僕はもとのムッとした表情に戻り、「早く帰れ」と云わんばかりの態度に豹変した。
すると今度はあちらが笑顔は崩さぬままに申し訳なさそうな表情に変わった。
僕の意識が伝わったことに満足を覚えました。
彼は笑顔のまま「あの・・・すいません」と言った。
なんだ・・・礼儀正しい若者ではないかと僕は先ほどの失礼を恥じる気持ちになっていました。
若者は「あの・・・すいません」のあとで、「耳・・・どうかされました?」
僕の両耳にはティッシュを丸めたものが突っ込まれたままであった。
僕はスタートレックのバルカン人かスポックさんにでも思われたのかも知れない。
光栄であるけど、気も引けた。
が、なにより、若者は礼儀正しく爽やかであった。
それなのに、ジジィは若者にはなれぬ代わりにバカ者になっていたのでした。