ホラー洋画劇場Vol.24






昨年最後の記事が、2人芝居の映画という流れで、
それを受けまして、今年の1本目は、
敬愛するロバート・アルドリッチ監督の
とんでもないこの作品からスタートします。



●What Ever Happened to Baby Jane?
(1962・アメリカ)

監督:ロバート・アルドリッチ 
原作:ヘンリー・ファレル 脚本:ルーカス・へラー







はい、みなさんまたお会いしましたね




わたしのホラー洋画劇場も明けましたこの春、
久々の登場ですけれども、
今年も、けったいな怖いものを
いっしょに観てまいりましょうね



はい、今日の映画、
「何がジェーンに起こったか?」いうのね

妙なタイトルだな、
タイトル見ただけで、何か不安にさせますね

何が起こったか?何が起こったか?

ジェーン、女性の名前ですね、この女性に
さあ、何が起こるんでしょうね?



このお話は、年老いた姉妹の話ですね
妹は子役の人気者、
姉は成長してから大女優、
そんなふたりの姉妹が、引退してひっそりと
お屋敷で暮らしているんですね。



けれども、屋敷の中に入って行くと
何か怪しい、何か普通やないんですね



そこからだんだんだんだん恐ろしいことに
なっていきますな



これは、ホラーいうよりもスリラー、
ただのスリラーやなしにとんでもないスリラー、
びっくりするようなスリラーですね



幽霊やモンスターの見かけの怖さいうのも
ホラーの恐怖ですけれども

これは違うんですね、
本当の恐怖いうのが、どこから生まれるか?



人間の何とも知れん歪んだ心の中を
のぞくような怖さ、
人が人を見てゾッとする怖さ、

そんなこみあげてくるような恐怖、
心臓を鷲掴みにされたような恐怖、
これはそれを見せた映画です




はい監督は、
私の大好きな、大好きな
ロバート・アルドリッチ、



「攻撃」がありましたな、
「飛べ!フェニックス」がありましたな、
「カリフォルニア・ドールス」ありましたけれども



この監督は、反骨を見せる男臭い映画を
何本も作りましたな



主演は、
この後、恐怖映画も好んで出るようになった
ハリウッドを代表する演技派の名女優
ベティ・デービスと


Bette Davis

ハリウッドの大スターだったジョーン・クロフォード、


Joan Crawford

うるさ型で知られた往年の大物女優が、
年とってからこんなとんでもない役で
初めて共演して話題になりましたな

それから、
うっかりこの屋敷に出入りする、でっぷり太った、
ピアノ弾きの男にヴィクター・ブオノ



この滑稽な男が、事態をややこしくして
怖いことになりますな



屋敷の家政婦にメイディー・ノーマン
TVで活躍した有名な傍役ですね



ベティ・デービスの見せる子供と大人と老人の表情、
階段を上る時の歩き方ひとつで
心の中までわかるような肌理の細かい演技、



ジョーン・クロフォードの
動きの少ない車椅子のまま、
顔だけで見せる必死の芝居、
見事な、見事な、昔の女優が持ち合わせていた
本当の役者根性いうもんをご覧になれることでしょう

はい、これはいっせんきゅうひゃく62年度の
アメリカ映画です



ジェーンに何が起こるのか、
みなさん
どうかこの名女優の演技をじっくりご覧くださいね

$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★

それではあとで、またお会いいたしましょ












この映画のはじまりは、
泣き声から始まるんですね

あらまあ、子供の泣き声ですね
かわいい、かわいいお嬢ちゃんが、
怖がって泣いとるのね



もう怖がらなくてもいいよ…誰かが言うとる

そうしましたら、
ピエロの人形が涙流してるんですね

無気味な始まりですな




そうしましたら、今度は
ステージで子役のお嬢ちゃんが
歌って踊って拍手喝采をあびて、
えらい評判になっとる



けれども、この娘、
人気者になって、
ちょっと天狗になってるんですね

あんな薄汚いホテルはいやだ、
パパ、アイス買ってきてよ、
なあんてわがまま放題なんですね



そんな妹の姿を、うらやましがりながらも
何かしらん我慢しながら姉は黙って見てる…


けれども、
この姉妹が大人になりましたら
妹はプライドだけ高い大根役者になって
飲んだくれて、なんとおまわりさんを殴るような
落ちぶれた女優になってしまうんですね



ところが、
姉さんは、今やハリウッドの大会社の看板女優となって
誰からももてはやされるスターになっていた。

とうとう幼い頃の、姉妹の立場が逆転したんですね

はい、そしてこの映画、えらいことになる、
車が家の大きな門に突っ込んで大きな事故が起こった



何があったのか?

大きな悲鳴が聞こえて、
女性の泣き声が、
今度は大人の女性の泣き声が聞こえてきて
「What Ever Happened to Baby Jane?」いう
タイトルが出ますな。



こんな、半生があって、
いよいよ独身のまま年とった二人姉妹が、
一緒に住んでいるいうところから、
恐ろしい、恐ろしいドラマが始まるんですね…













はい、いかがでしたか?



年老いたけれども、
心が成長していない妹のベビー・ジェーンが
「才能はなくならないのよ、
すべてを失っても才能は残るのよ」
言いますね、



これは愛した父親のことば。

この言葉を信じて、信じて、信じまして
この老女はずっと生きてきたんですね。
どんな才能があっても、
けれども人間はだんだん年をとる、



お酒飲んで、すっかりいい気分になった
この老女が、昔の子役だった頃の自分を
思い出して、薄暗い部屋の中で歌を歌い始めますね

♪天国のパパを愛してる~♪

もうすっかりつやのなくなった
しわがれた太い声で、にこにこしながら歌い始める



そうして、ふと鏡を覗き込んだ、

どうなったか?
びっくりしましたなぁ。

はい、ここは本当に恐ろしいシーンでした。




どんなにイヤなことされても、
車椅子で生活する姉は、妹をかばうんですね

他人に、妹さんはひどい人間だとけなされると、
あのね、あの子はね、小さい時は可愛いだけじゃなくて
キラキラ輝いていたのよ、言いますね。

なんでかばうのか?



はい、そうですね、
ジェーンいう女性にいったい何があったか?
この謎がわかると皆さんゾッとされると思います

これはそんな、本当に怖い、
心の裏側をじっくり見せるスリラーでしたな



監督のロバート・アルドリッチは、
親戚が名門のあのロックフェラーだったんですね、

早くから自分のプロダクションを持ちまして
映画監督になった人ですから、
会社が口出しして完成したような
普通の映画は撮りませんでしたけれども、



この映画は、
ヒッチコックも真似しないくらい怖い怖い、
えぐるような見せ方で、
姉妹の嫉妬と憎悪を見せましたね



演技の巧い名だたる大女優ふたりが、
ぎらつくような、びっくりする二人芝居で
それに応えましたな



はい、もう時間きました。



それでは次の作品、ご紹介いたしましょ


次回は、あらまあ、笑うたらいかんけれども
久々のイギリスハマープロのクラシック、
けったいな珍品「蛇女の脅怖」ですな



ご面相は、夢に出てきそうな蛇女ですけれども
ちょっと妙なホラーですよ

どうぞ、たのしみにお待ち下さいね



それでは
次回もこの時間、お会いいたしましょう


$パイルD-3の『時速8キロの映画感』=★


それでは、
サイナラ、サイナラ、サイナラ







★★★★

採点基準:…5個が最高位でマーキングしています。…はの1/2です。